作品タイトル不明
518話 防衛成功。そして……
「おいおいおい、どういうことだ!?」
戦いが終わり……
なにやら慌てた様子でカシオンが駆けてきた。
驚きの表情。
それと、信じられないものを見たような顔。
もしかして、俺達が人間だとバレた……?
「お前ら……」
「えっと……」
「なんなんだよ、めっちゃつええじゃねーか!」
「え?」
途端に笑顔になるカシオン。
それから、よくやったというかのように、バシバシと背中を叩く。
「いた!?」
「腕に覚えがあるとか言ってたが、そんなレベルじゃねーだろ。見てたぜ、二人の戦い。あのレベルの魔物を、一対一で圧倒するなんて思ってもなかったぜ。俺でもできるかどうか」
「えっと……ありがとうございます?」
褒められているん……だよな?
相手が魔族というせいか、まだ警戒してしまう。
もしかしたら裏があるのでは? とか、こちらを油断させるための言動なのでは? とか。
ただ、カシオンにそんな様子はない。
純粋にこちらのことを褒めていて、そして、勝利を喜んでいるようだ。
本当に……調子が狂う。
彼は、本当に魔族なのだろうか?
それとも……
俺が知らなかっただけで、魔族とは、本来はこういう表情をするものなのか?
「襲撃はどうなったんですか?」
「おう、安心しとけ。しっかりと迎撃したぜ。いくらか取り逃がしそうになったが……それも、レイとユウがやってくれた。ホント、感謝しかねえよ。ありがとな!」
「そうですか……街に被害が出なかったのなら、よかったです」
「この借りは必ず返すからな。っと……すまねえな、色々とやることがまだ残ってるんだ。二人はゆっくり休んでてくれ」
忙しない様子で、カシオンはどこかへ走り去っていった。
たぶん、戦いの事後処理をするのだろう。
残された俺とユウキは、互いの顔を見る。
「とりあえず……ソラとルナのところへ戻るか」
「うん、そうだね」
――――――――――
「……なるほど、そのようなことが」
ソラとルナと合流した後、カシオンについての話をした。
四天王の親衛隊。
そして、この街の魔族達を束ねる者。
魔族ではあるが……
しかし、とてもまっすぐで、好感が持てる男というのが俺とユウキが出した結論だ。
「むう、どういうことなのだ? 我は、魔族は破壊と混沌の使者とばかり思っていたぞ」
「ソラも似たようなものです。長と母さんからも、このような話は聞いたことがありませんし……」
「アルさんですら知らないこと、っていうことか」
とはいえ、それは仕方のないことなのかもしれない。
魔族は、他の種族全てと敵対している。
まったく交易を持たないため、魔族側の情報が入ってくることは一切ない。
故に、今まで詳細な情報は謎に包まれていた。
その行動から、血も涙もない悪魔のような存在と思っていたのだけど……
ここにきて、その前提が一気に崩れた。
カシオンやその他の魔族が人間をどう思っているか、それはまだわからないけど……
少なくとも、血も涙もない存在じゃない。
俺達と同じように笑い、悲しみ……そして、死に恐怖する。
なにも変わらない。
「レイン、どうするのだ?」
「……」
「ソラとしては、魔族のことは気になりますが、それよりもまずは、本来の目的を果たすべきではないかと、そう提言します」
「四天王の計画を阻止、なのだ」
「そう、だな」
少し考える。
色々な新事実が浮上して、それをきちんと整理することができず、知恵熱が出てしまいそうだ。
それでも、じっくりと考えることで、なんとか答えをまとめた。
「……基本方針は変わらない。さらわれた人達の救出及び、続けての襲撃をなんとしても防ぐ。これは絶対だ」
「うん、そうだね。僕らは、そのために西大陸にやってきたんだから」
「ただ、魔族のことも気になる。放っておいたらいけないというか、みなかったことにしたらいけないというか……知らないとダメだ。そんな気がする」
魔族はただの敵。
そんな風に考えていたら、なにか、とんでもないミスをしてしまいそうな……そんな予感がした。
「僕もレインに賛成かな」
「ユウキも?」
「うん。魔族は生きとし生けるものの天敵……って、思っていたんだけどね。でも、この街の様子を見たら、そんな風には思えない。僕らと変わらないように見えた」
「そうですね……ソラ達は、何度か魔族と戦いましたが、この街にいる人達はまるで違います。破壊や殺戮とは無縁そうに見えますし、人間と変わらないようです」
「うむ。敵だから、という理由で戦うのは、ちとまずい気がするのだ。最終的に対立することになったとしても、魔族のことを知っておくのはマイナスではないと思うのだ」
ユウキ達の賛同を得ることができた。
ただ、タニア達のことを忘れたらいけない。
「今後の方針について、改めて話し合いたいな。一度、タニア達と合流しよう」
「そうだね。軽く休んで……そうしたら、いい時間だと思う」
「決まりだな」
「なら、まずは少し休みましょう。レインとユウキは、疲れているでしょう?」
「我がおいしい料理を作っておくのだ」
「料理なら、ソラも……」
「「やめて」」
「レインまで!?」
ユウキは、なんのことがわからない、というような顔をしていたが、それでいい。
ソラの料理については、ずっとわからないままでいいと思う。
「じゃあ、まずは休憩をしよう」
疲労が溜まっていたら、いざという時に失敗をしてしまうかもしれない。
そんなわけで、タニア達との合流時間までは休憩をすることになった。
――――――――――
あれから、ほどなくして日が暮れた。
ルナが作ってくれた料理を食べた後、早くにベッドへ入る。
そして、戦いで疲れた体を休めて……
「……しまった、早くに起きてしまった」
まだ日が登りきらない早朝よりも早い時間に目が覚めてしまう。
一度目が覚めると、なかなか眠ることができず……
みんなを起こさないように注意しつつ、俺は外に散歩に出た。
「これが魔族の街……か」
こんな時間なので誰もいない。
ただ、とても平和そうな街であることは見ればわかる。
「俺達は、なにを敵と定めるべきなんだろうな?」
「おはようございます」
俺の独り言に反応するかのように、そんな声が聞こえてきた。