軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

512話 変わらない?

俺達四人は、魔族の街を見て回る。

幸いというか、ソラとルナの魔法は正常に起動していた。

誰も俺達が人間であることに気づくことはない。

「商店に家、それと公共施設らしきもの……」

「僕らの街と大して変わらないね」

「というか、ほぼほぼ同じではないか? 人間の街と魔族の街、それほど大きな差異はないように見えるのだ」

「魔族は、もっと暴力的で退廃的な街で生活をしていると思っていたのですが……なんていうか、これは意外ですね」

みんな驚いていた。

俺も驚いていた。

ソラが言うように、とんでもない状況になることを覚悟していたのだけど……

でも、蓋を開けてみればそんなことはない。

俺達、人間の街と変わらない光景があり、平穏そのものだ。

さすがに戸惑わざるをえない。

「……もしかしたら、魔族は、俺達とあまり変わらない?」

本当は、穏やかな心を持っているのだろうか?

親しい人が亡くなれば悲しみ、涙を流すことができるのだろうか?

でも、そうだとしたら、どうして人間を目の敵にする?

過去に、イリスと似たような事件が起きた?

それとも、魔王などの上層部のせい?

……ダメだ。

あれこれと考えてみるものの、さっぱりわからない。

とにかく、情報が少ないというか……いや、そういう話じゃないか。

前提となっている情報があまりにも違いすぎていて、まともに物事を考えて、組み立てることができない状態だ。

「さっき、上級とか下級とか聞いたが……ソラとルナは、なにか知らないか? 魔族の中で階級はあるのか?」

「うむぅ……ぶっちゃけ、よくわからないのだ。四天王とか、そういう上層部がいるのは間違いないと思うが……」

「上級、下級という話は聞いたことがありませんね」

「元々、魔族の情報はほとんど出回っていないのだ」

「よくよく考えてみれば、魔族も生き物である以上……そして、魔王を頂点とした『国』としての形を成している以上、民がいるのは当たり前だよね」

「ただ、みんながみんな、人間などを敵視しているのは、どういうことなのか……?」

街を見て回るついでに、いくらかの魔族から話を聞いた。

結果、いずれも他の生物を敵視していることが判明した。

中でも人間に対するヘイトはすごい。

必ず滅ぼさないといけないという、強い意思を感じる。

ただ、憎しみ故の感情というわけではないような気がした。

過去にひどい仕打ちを受けたから、という復讐心ではなくて……

それこそ、使命感に似たものを感じる。

ホント、どういうことなのか……

予想外すぎる現実に理解が追いつかず、ひたすらに混乱してしまう。

「レイン、どうする?」

「そう……だな」

ユウキの問いかけを受けて、頭の中を整理する。

正直、まだ混乱しているのだけど……

いつまでも潜入を続けられるわけじゃない。

時間を無駄にせず、次の行動へ移らないと。

「……この街のこと、ここで暮らす魔族のこと。気になることは多いが、今は後回しにしよう。当初の目的通り、誘拐された人の救出を第一に。それと、余裕があればアルテラの目的を調べる」

「了解。確かに、そうすることが一番だね」

「うむ。ちょっと衝撃的なことがあったせいで、当初の目的を見失いそうになっていたのだ」

「そんなことにはならず、冷静に物事を考えることができるレインは頼りになりますね」

「俺も混乱していたから、頼りになるとか、そんなことはないんだけどな」

みんなが一緒だから、なんとか落ち着いて考えることができた。

もしも一人だったら、どうなっていたことか。

考えるだけで恐ろしい。

「誘拐された人達を探すとなると、どこがいいんだろうな?」

「定番だと、酒場とか冒険者ギルドだけど……」

「魔族の街にそんなものあるのか?」

「酒場ならありそうですが、冒険者ギルドはさすがにないと思いますが」

「もしかしたら、俺達が知らないだけで、ギルドと似たような施設があるかもしれない。もう少し街を見て回ろう」

「ラジャったのだ!」

再び街の探索を開始した。

あちらこちらを見て回り、時に、怪しまれない程度に聞き込みをする。

ここは本当に魔族の街なのか?

という疑問がどんどん膨れ上がるのだけど……

今は、その疑問は無視。

連れ去られた人達の情報を求めて、街全体を歩き回る。

ただ、この街はそれほど広くない。

というか、小さいくらいだ。

村くらいの大きさしかなくて、民家がほとんど。

情報を仕入れるような場所は食堂や酒場くらいしかなくて、そのどちらもまだ開いていない。

有力な手がかりを得ることはできず、公園に戻る。

「まいったな……」

「思うように情報を集めることができませんね」

ソラを始め、みんなが微妙な表情に。

真偽はさっぱりわからないが……

魔族も、人間と同じように独自の文化を築いて穏やかに暮らしていることが判明した。

言葉によるコミュニケーションが通じるのは助かるのだけど、でも相手は魔族。

俺達と変わらないように見えて、しかし、どこかしらに禁忌ワードが潜んでいるかもしれない。

俺達にとってなんてことないのない言葉が、魔族にとってはNGになるかもしれない。

そう考えると、なかなか踏み込んだ話をすることができず……

結果、誘拐された人達の情報を得ることもできなかった。

「誘拐された人達を第一に、って考えていたけど、これじゃあ思うように情報を集めることができないな。薄氷の上で鬼ごっこをしているような気分だ」

「まずは、この街について……この街の魔族について調べてみる?」

「時間があれば、そうするのが一番なんだろうけど……うーん」

こうしている間にも、四天王がなにかしら企んでいるかもしれない。

クリーグラントに攻め込み、その裏でたくさんの人を誘拐する計画を進めているかもしれない。

「敵の行動は迅速だ。早ければ数日以内……遅くても、一週間以内に四天王は活動を開始すると思う」

「む? その根拠はなんなのだ?」

「一つは、俺達にある程度の情報が漏れていること。大規模な作戦となると、どうしても情報統制は難しくなる。計画を進めて、煮詰めていけば尚更だ。ここまでの情報を俺達が掴んでいるということは、逆に言うと、敵の準備は相当なところまで進んでいると見ていいだろう」

「なるほど」

「もう一つの理由は、この街の雰囲気だ。魔族の街なんて初めてで、しかも予想外すぎたから断言はできないけど……でも、少しピリピリしたところがある。四天王の計画が進んでいて、街にいる魔族達にも伝わっていると考えるのが自然だと思う」

「そんな細かいところまで観察していたんですね。ソラは、そこまで思い至りませんでした」

「俺もたまたまだけどな」

ビーストテイマーという職業柄、あちらこちらを観察する癖がついている。

そのため、偶然気づくことができただけだ。

「レインの言う通りなら、確かに時間がないね。急いだ方がいいかもしれない」

「ですが、どのように進めばいいものか……」

「危険を覚悟で、さらに踏み込んだ質問をしてみるしかないのではないか? この辺りで人間を見なかったか? という曖昧な質問ではなくて、人間をさらってきたという話を聞いたが知らないか? とかそんな感じなのだ」

「ルナの言う通り、踏み込んでみるしかないかもな……リスクなしにリターンを得ることは難しいし、覚悟は決めた方がよさそうだ」

そんな感じで話がまとまりかけた時、

「ようっ」

やたらと元気のいい、第三者の声が響いた。

振り返ると、俺と同じくらいの年の男が。

髪は長く、顔は綺麗に整っている。

どことなく野性味を感じられて、それ良い感じに男の魅力を引き立てていた。

雰囲気から察するに、この男も魔族だ。

もちろん、知り合いじゃない。

「えっと……?」

もしかして、俺達の正体がバレたか?

困惑するフリをしつつ、いつでも動けるように構える。

この男……何者だ?