軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

511話 魔族の街

魔族領の動物は、中央大陸などにいるものと大して変わらない。

強いていうのならば、魔物などが多いせいか、警戒心が強い程度だ。

それくらいなら大した問題じゃない。

多少、ヤンチャな子を相手にするようなもので……

エサと引き換えに、簡単に協力してもらうことができた。

そして、一時間ほどで魔族の街を見つけることに成功。

ソラとルナに魔法をかけてもらい、さっそく潜入したのだけど……

「そこのお嬢さん、ちょっとこの商品を見てくださいよ。ほら、とても良いものでしょう?」

「それでね、ウチの主人ときたら、いつもいつもウソばかりついて……」

「あはははっ、今度は私が逃げる番だからねー!」

商人らしき魔族が元気よく客に声をかけて、おばさん達が世間話に興じて、子供達が笑顔で駆け回っている。

平和、という以外の言葉が見当たらない光景だ。

というか、これは……

「……なあ、ソラ」

「……なんでしょうか」

「……ここは、本当に魔族の街か? 西大陸には、実は人の街があるとか?」

「……魔族の街のはず、ですが」

答えるソラは歯切れが悪い。

俺と同じように戸惑っているのだろう。

それはルナとユウキも同じ。

二人も困惑しているらしく、なんとも微妙な顔をしていた。

「おや?」

門兵が俺達に気がついた。

いきなり襲いかかってくる……なんていうことはない。

ただ、多少の警戒はしているらしく、武器から手を離すことはない。

「あんた達、見ない顔だな? どこから来たんだい?」

「あ、えっと……」

まずい。

魔族領の地理なんてわからないから、答えようがない。

ええい。

こうなれば、一か八か。

「西の方から……」

「西?」

具体的な地理名は出さず、方角で答えてみたのだけど……

失敗か?

門兵の顔が険しくなる。

「……そうか、あんた達も城から逃げてきた感じか」

「え?」

「最近、城はピリピリしてるからな……俺らみたいな普通の下級魔族の居場所なんてないし、上級魔族にいびられたりするし、キツイよな」

「あ、ああ……そうなんだ」

「この街は、噂を聞いて?」

「ああ、ちらっと耳に挟んで……それで、ここまで」

「そっか、大変だっただろ? 色々あったと思うが、ここなら安心して過ごすことができるぜ。なにしろ、ジルオールさまが統治している街だからな。上級魔族とはいえ、簡単に手を出すことはできないさ」

ジルオール? 誰だ?

不思議に思いつつも、怪しまれたらいけないと適当に相槌を打つ。

「あ、ああ……それは頼もしいな」

「ほら、コイツを」

手の平サイズのカードを渡された。

俺だけじゃなくて、みんなの分が配られる。

「これは?」

「街の滞在許可証だよ。こいつがあれば、街に入ることができるし、そのまま住んでも問題はない」

「それはありがたいが……そんなものを、こんなに簡単に発行していいのか?」

「構わないさ。困ってる仲間を見捨てることはできないし、それと、打算的な話をするなら、できて間もない街だから人手が足りなくてな。人が増えるのは大歓迎さ」

「なるほど」

「なにか聞いておきたいことはあるか?」

「……噂で聞いたんだけど、この近くで人間を見かけた、っていう話があるだけど、それについてはなにか知らないか?」

「人間が?」

人間という単語を聞いて、門兵の様子が変わる。

わずかな敵意。

それと、面倒事に巻き込まれたくないというような、困惑したもの。

「知らないなあ……ここは魔族領だから、人間なんて滅多に見かけないが。なにかの間違いじゃないか? そういう根も葉もない噂っていうものは、たまに、脈絡なく出てくるものだからな」

「そっか……そうだよな。わかった、ありがとう」

「人間は、俺達魔族を皆殺しにするっていう、野蛮な種族だからな。まあ、いないとは思うが……もしも見かけたら、すぐに教えてくれ。それと、気をつけてくれ」

「わかった、そうするよ」

門番に見送られながら、俺達は街の中へ。

そのまま街中を歩いて……

誰もいない公園に到着したところで、大きな吐息をこぼす。

「ふう……さすがに緊張したな」

「でも、ソラさんとルナさんの魔法はすごいね。僕達のことを、ちゃんと魔族と認識していたみたいだ」

「ふふんっ、我の魔法に不可能はないのだ!」

「あまり大きく出ると、後で痛い目に遭いますよ? それよりも、レイン」

「ああ……なんていうか、色々な意味で予想を裏切られたな」

生きとし生けるものの天敵。

破壊と殺戮を好む悪魔。

それが魔族……のはずなのだけど。

この街にいる魔族は、とてもじゃないけれど、そんな風には見えない。

俺達人間となにも変わらないように見えた。

それと、いくらか気になる単語が出てきた。

上級魔族、下級魔族。

城がピリピリとしている。

この街を統治しているのは、四天王のアルテラではなくて、ジルオールという名前の魔族。

「なんていうか……街に潜入しただけなのに、色々な情報が出すぎじゃないか?」

「そうだね。これだけ気になる情報を、すぐに得られるなんて……」

ユウキと揃って、頭を悩ませる。

俺の中にある魔族のイメージといえば、ホライズンに現れたヤツだ。

破壊を好み、遊戯のように人を殺す。

あるいは、ヴァイスやリース。

裏でこそこそと策略を張り巡らせて、そして、やはり同じく人を殺す。

そんな残虐非道な存在という認識があったのだけど……

この街の魔族達は、残虐非道だろうか?

血も涙もないのだろうか?

とてもじゃないけれど、そういう風には見えない。

「いったい、どうなっているんだ……?」