作品タイトル不明
508話 ソラとルナの尋問教室
気絶した魔族を見て、グレイが呆れたような感心したような、そんな複雑な顔を見せる。
「しかし、とんでもねえな……俺も仕事柄、魔族と戦ったことはあるが、こんな簡単に制圧できるようなヤツじゃないだろ? あいつら、基本的に全部、とんでもねえ化け物じゃねえか」
「それについては同意だよ。コイツも、決して弱いわけじゃない。むしろ、まともに戦えば苦戦したさ」
「だから俺らを侮っているうちに一気に叩いた、ってところか?」
「そういうこと。それに今回は、情報収集がメインだからな。ソラ、ルナ」
「はい」
「あいあいさー」
この魔族がどんな能力を持っているかわからない。
なので、まずは力を完全に削ぎ落とさないと。
「ストレングスシール」
「アストラルシール」
ソラとルナが、見たことのない魔法を唱える。
ずいぶん長いこと一緒にいるのだけど、まだ見たことのない魔法があるというのは、なかなかにすごいことだと思う。
まあ、精霊族は万に近い魔法を扱えると聞くし……
彼女達からしたら、当たり前のことなのかもしれない。
「レイン、封印完了しました」
「コイツの力、ガチガチに固めておいたのだ。まあ、絶対に破られないとは言えぬが……それでも、即座に反撃、なんていうことにはならないはずなのだ」
「ありがとう。それじゃあ、なにを企んでいたのか、尋問といきたいけど……」
今は気絶しているからおとなしいけど、目を覚ましたら、絶対に暴れるよな。
力は封印しているから、抑え込むことは可能だろうけど……
おとなしく目的を話すとは思えない。
「ソラ、ルナ。魔法でコイツの心を覗くことは?」
「……少し難しいですね。魔族は魔法に対する抵抗力が高いため、スムーズにはいかないかと。同意をすれば問題はないのですが、さすがにそんなことはないでしょうし」
「無理矢理に覗いても、欲しい情報をピンポイントで得られるかどうか、それも怪しいのだ。情報収集には、ちょっと向いていない魔法なのだ」
「そっか……」
なら、どうするべきか?
尋問……あるいは、拷問?
とはいえ、拷問なんてしたことないんだよな。
正直、必要時以外の荒事は苦手だ。
好きで血を見るなんてことはしない。
ただ、他に方法がないのなら……うーん。
「迷ってんなら、俺がやろうか?」
「いや、グレイだけに任せるなんてことはしないさ。それなら、俺も……」
「待つのだ、レインよ。我に良い考えがあるぞ」
ルナが不敵に笑う。
なにか考えがあるみたいだけど、どんなことを考えているのだろう?
「我が姉よ。ちゃちゃっと料理を作ってくれ」
あ……そういう。
その一言で、全部、察してしまった。
「作れと言われれば作りますが、今はごはんを食べている場合ではないのでは?」
「とにかく作ってほしいのだ。そうすることで、スッキリ簡単、情報を引き出すことができるのだ、ふっふっふ」
とても悪い笑みを浮かべるルナだった。
――――――――――
その後、目を覚ました魔族に対する尋問が行われた。
いや……あれは拷問なのかもしれない。
なにしろ、ソラの料理を……これ以上は、とても残酷で思い返すことはできない。
なにはともあれ、魔族は口を割った。
後の対処はグレイに任せて……
得た情報を整理するため、俺達はクリーグラントへ戻った。
――――――――――
「街の人をさらう計画……か」
それが魔族から得た情報だ。
近々、四天王の一人……豪炎のアルテラ率いる魔族の部隊が、クリーグラントへ大規模な攻撃をしかける予定だという。
しかし、それはフェイク。
魔族の本当の狙いは、その混乱に乗じて街の人を一定数、誘拐すること。
なぜ誘拐するのか?
それについての情報は魔族も与えられていなかったらしく、得ることはできなかったのだけど……
絶対に見逃すことのできない話だ。
「魔族の攻撃……街の人の誘拐……どちらも大きな問題だね」
ユウキが苦い顔に。
たぶん、俺も似たような顔をしていると思う。
魔族の攻撃だけでも大事件なのに、そこに、街の人の誘拐計画まで加わるなんて……
この難局、どう乗り切ればいいか?
「難しい問題だけど、でも、あたしらがすることは決まってるんじゃない?」
「ふむ、どういうことなのだ?」
「魔族の攻撃は、この街の人に任せておけばいいの。それだけの備えはしてるし、あと、国からも増援が出てるんでしょ?」
「うん、そうだね。王も警戒をしているから、それなりの規模の部隊が派遣されるはず」
「なら、街は任せるべきよ。まあ、どうしてもやばいっていうなら、あたしらも動いた方がいいかもしれないけど……でも基本は、敵の本命を潰すべきよ。それが、あたしらの最初からの目的なんだから」
「敵の目的……人間を誘拐する、というところですね」
「そうだな、ソラの言う通りだ」
魔族がなにを目的として人を誘拐しようとするのか、それはわからない。
ただ、イリスから労働力とか苗床とか、不穏な言葉が流れてきたことを教えられている。
放っておくことはできないし……
こちらが本命と決めて、対処を考えていった方がいいだろう。
「……ふと思ったんだけど」
ユウキが苦い顔をして言う。
予想が当たってほしくない、という感じだ。
「今日捕まえた魔族は、いわば先行だよね? 本作戦に必要なデータを集めるために、まずは、少人数でこの街の人々を誘拐しよう……っていう」
「ああ、そんな感じだろうな」
「なら……すでに誘拐されている人が少なからずいる、っていうことになるのかな?」
「それは……」
失踪者というのは、魔族に誘拐された人を指すのだろう。
誘拐された人がどんな扱いを受けているのか、それはわからないけど……
でも、この街にいないことは確実だろう。
魔族領である西大陸に連れて行かれたに違いない。
だとしたら……
「「助けないと」」
俺とユウキの声が重なる。
キョトンとした顔で互いを見る。
ややあって、くすりと小さく笑う。
「はは……考えていることは同じか」
「みたいだね」
みんなの顔を見る。
反対意見はないみたいで、任せる、というような感じでこちらを見ていた。
「じゃあ……引き続き、敵の目的を探りつつ、誘拐された人の救出を含めて動いていこう」
「「「おーっ!!!」」」