軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

特別話1 宣伝

「レインっ、大変だよ!?」

穏やかな昼下がり。

家でのんびりと本を読んでいると、血相を変えたカナデが飛び込んできた。

「大変で大変で大変にゃんだよ!? うにゃー!!!」

よくわからないけど、慌てすぎだろう。

本をパタンと閉じる。

「カナデ、落ち着いてくれ。なにを言いたいのか、さっぱりわからない」

「え? わからないの?」

「むしろ、今のでどうしてわかると?」

「むぅ、残念。私とレインなら、なにも言わなくてもわかってくれると思っていたのに」

そう思ってもらえることはうれしいのだけど……

さすがに、なにも言わずに、というのは無理がある。

「それで、どうしたんだ?」

「なんと、聞いて驚かないで驚いてね!?」

どっちなんだ?

「私達の漫画の最新刊が発売されるんだよ!!!」

「……」

「あ、あれ? 思っていたのと違う反応? すごい淡白?」

「いや、驚いてはいるが……」

わりと今更の話ではないだろうか?

漫画が発売されていることは知っていた。

それが最初の一冊目ではなくて、今回で五冊目……五巻になることも知っていた。

だから、今更になって、そこまで驚くことが不思議だ。

「それはね、今までは、こうして宣伝する、っていうことを思いつかなかったからだよ! だから、特にここで触れることはなかったの」

「なんの話をしているんだ?」

「にゃんだろうね?」

こういう話は嫌われることが多いからな。

ここまでにしておこう。

「でも、俺が言うのもなんだけど、五巻なんてすごいんじゃないか?」

「うんうん、そうだよね♪ 漫画のことは詳しくないけど、でも、そこまで行くのは、なかなか難しいんじゃないかな?」

「だよなあ……ヘタをしたら、一巻で終わっていた可能性もあるんだよな」

「い、嫌なことを言わないでよ……」

「すまない。ただ、そういう嫌な可能性を乗り越えてここまでこれた、っていうことはとても嬉しいことだよな」

「うん! たくさんの応援のおかげだね♪」

「なら、これからも応援してもらえるようにがんばらないとな」

「そうだね」

「そんなわけで……これからも、よろしくお願いします」

「よろしくおにゃがいします!」

頭を下げて、

「……あれ、レイン? これで終わり?」

「うん?」

「宣伝にしては、ちょっと短くない?」

「そう言われてもな……」

あまりふざけたことを書くと、いらない誤解を受けてしまいそうだ。

かといって、そういう話に深く踏み込まないで書くっていうのは、ちょっと大変だ。

「じゃあ、おまけとして私の日常……ちょっとした小話をどうぞ!」

「いつの間に、そんな資料が……?」

「ふふーん、備えあれば憂いなし、っていうヤツだね!」

「そういうものか……?」

――――――――――

「にゃんにゃかにゃーん♪」

とある日。

買い物を終えて家に戻ると、カナデがとてもうれしそうにしていた。

猫耳がぴょこぴょこ、尻尾がふりふりと揺れている。

満面の笑みの先には、魚が。

すでに調理された後らしく、こんがりとほどよい具合に焼けている。

なるほど。

ご機嫌の理由はコレか。

「その魚はどうしたんだ?」

「えへへー、商店のおじさんにもらったんだ。偶然、手に入れたらしくて」

「へえ」

しかし……変わった魚だな?

普通の魚はまっすぐと細いのだけど、コイツは丸い。

目も大きい。

「この魚は、なんていう名前なんだ?」

「レインも知らないの?」

「も?」

「見たことない魚なんだよねー。見た目から魚っていうことはわかるんだけど、種類まではちょっと」

「そんな魚、食べて大丈夫なのか?」

「問題ないよ! だって、魚は正義だもん!」

よくわからない名言が生まれた。

「いただきまーす♪」

カナデは、にこにこ笑顔で魚にかぶりついた。

そして、さらに笑顔を加速させる。

「お、おおお……おいしいっ!!!」

カナデの尻尾がピーンと立つ。

「ほっくりとした身! あふれる脂! 口の中に広がる旨味! こんな魚、食べたことないよぉ」

よほどおいしかったらしく、カナデはあっという間に魚を食べてしまった。

「ごちそうさまでした……はぁ、幸せ」

「おいしかったのなら、良かった。でも、なんていう魚なんだろうな?」

「さあ? でも、おいしかったからそれで……にゃにゃ!?」

突然、カナデが倒れる。

「カナデ!?」

「な、なんだろう……し、ししし、しびれるぅ……」

「だ、大丈夫か!? カナデ!?」

「うーにゃー……」

……後日。

カナデが食べた魚は、『ふぐ』という猛毒を持つ種類だったことが判明する。

普通の人なら、そのまま死んでしまうような強力な毒だ。

最強種なので、痺れて、体調不良を起こすだけで済んだものの……

「うにゃー……魚、怖い……」

一週間、寝込むことになってしまったカナデは、しばらくの間、魚を恐怖してしまうのだった。