作品タイトル不明
495話 リフォームをしよう・その3
リフォームの工事を始めること、五日。
作業が終了して、新しい我が家が完成した。
「「「おぉおおおおおーーー!!」」」
くたびれていた外壁は全て修復して、綺麗で頑丈なものに取り替えられた。
新しい部屋が増築されて、地下室と屋上も設置された。
家の裏手には訓練場。
横側には池と、のんびりとくつろぐことができる、自然豊かなスペース。
その他、みんなのアイディアが色々と詰め込まれた新しい家を見て、みんなは目をキラキラと輝かせていた。
「すごい、すごいのだ! 我が家が、とんでもなく豪華になったぞ!?」
「綺麗になっただけではなくて、以前よりも緑が多くなって、とても素敵ですね」
「ママ、と……一緒の、部屋」
「レイン、入ってもいい?」
年少組がわくわくした様子でこちらを見る。
もう少しも我慢できないという感じだ。
「もちろん」
「皆、いくのだ!」
「「「おー!」」」
ソラを先頭に、みんな、家の中に駆け込む。
カナデやフィーニアも加わっていて、とても楽しそうだ。
「みんな、はしゃぎすぎじゃない?」
「ええんやない? 我が家が豪華になるって、なかなか体験できへんし、わくわくすることやと思うでー」
タニアとティナは落ち着いていた。
ただ、尻尾がふらふらと揺れているところを見ると、タニアも、なんだかんだで気になっているらしい。
「わたくしは、屋上を見てまいりますわ」
「あ、屋上はあたしも興味あるかも」
「一緒にいきますか?」
「そうね、一緒してあげる」
タニアとイリスは、それぞれの翼で空へ舞い上がり、屋上へ直行した。
そんなショートカットを使うなんて……
翼を持つ者だけの特権だな。
「サクラは……」
「オンッ、オンオンオン!」
「よし、いくでー!」
問いかけるよりも先に、サクラは駆け出していた。
その背中に、人形バージョンのティナが乗っている。
ライドオン。
二人は人馬一体というような感じで、広く、綺麗になった庭を駆け回る。
「みんな、元気だなあ」
とはいえ、気持ちはわからないでもない。
新しくなった我が家を前にして、俺もわくわく、ドキドキしている。
ただ、みんなが全力ではしゃいでいるせいか、少しタイミングを逃したというか……
ここで、のんびりとみんなの楽しそうな姿を見るのも悪くないというか……
穏やかな風を感じつつ、ゆったりとする。
「レインさん」
振り返ると、柔らかい笑みを携えたノキアさんの姿が。
「レインさんは、新しい家を見て回らないんですか?」
「もう少し後でいいかな、と。今は、こうしてのんびりとみんなの楽しそうなところを眺めていたいな、って思うんです」
「ふふっ」
「どうしたんですか?」
「いえ、すみません。なんだか、レインさんが孫を見守るおじいちゃんのように見えまして」
「むぅ……」
それは、ちょっと微妙だ。
気持ち的に否定することはできないのだけど……
でも、この歳でおじいちゃんと言われてしまうのは、さすがに複雑すぎる。
「ところで……私も一緒に暮らすことになって、よかったのでしょうか? わざわざ、私のために、ニーナの部屋を広くしてもらったみたいですし……」
「もちろん、いいに決まっているじゃないですか」
ノキアさんは、俺達と一緒に暮らすことになった。
フォンさんのことも気になっているみたいだけど……
ただ、今はニーナの傍にいたいらしい。
できれば一緒にいさせてほしい、と頼まれて、即了承した。
「最近のニーナは、とても明るくなって、元気になって……ノキアさんが一緒にいるからだと思います。ニーナはまだまだ小さいから、ノキアさんが一緒にいてくれないと」
「そうですね。私も、あの子とずっとずっと一緒にいたいです。ありがとうございます、レインさん。私に、娘と一緒の時間を与えてくれて」
「そんな、頭なんて下げないでください」
俺がしたいことをしただけなので、そこまで感謝されてしまうと困る。
「それと……せっかくなので、もう一つ、聞いてもいいでしょうか?」
「はい、どうぞ」
「どうして、家のリフォームを? 確かに手狭になっていたみたいですが、それでもまだ、なんとかなるレベルだったと思いますが……」
「そう、ですね……」
今回、リフォームをしたのは、利便性を考えた以外の理由がある。
それは……
「この家は、とても大事なところなので」
「家が?」
「なんていうか……ここを、みんなの帰るところにしたいんです。この先、想像もできないような大変なことが起きるかもしれない。あるいは、みんながバラバラになる時が来るかもしれない」
「それは……」
「もちろん、そういうことが起きた場合、黙っているつもりはないです。全力で抗うつもりです。それでも、どうしようもない時があると思うんです」
自分の手を見る。
この手に掴むことができるものは、とても少ない。
助けたい人を助けられない場合があると思うし、命の取捨選択をする時が来るかもしれない。
俺の力は小さい。
ちっぽけだ。
巨大な波に抗うことができず、流されてしまう時があるかもしれない。
「でも、だからこそ、こうして帰る場所をしっかりと作っておきたかったんです」
「帰る場所……ですか」
「なにか大変なことが起きたとしても、バラバラになったとしても。帰る場所があれば、また、元通りの日常が戻ってくるかもしれない。そんな希望と願いを込めて、改めて、しっかりと家を作ろうと……そんな感じでしょうか」
「……素敵な考えですね」
同意するように、ノキアさんがふんわりと微笑む。
とても優しい笑みだ。
「帰る場所があると思うと、いつも以上にがんばることができると思います。私は記憶をなくしていましたが、それでも、娘のことは魂が覚えていました。私にとって、ニーナが帰るべき場所……だから今、こうしてニーナと一緒にいられるのかもしれません」
「そうですね。その想いこそが、ノキアさんの力なんだと思います」
「あ、もちろん、レインさんに助けられたという事実は変わらず、今もずっと感謝しています」
再び頭を下げられてしまい、反応に困ってしまう。
「ママ」
ふと気がつけば、ニーナが戻ってきた。
ノキアさんの手をくいくいと引っ張る。
「一緒、に……おうち、見よ?」
「はい、わかりました。一緒に見ましょうね」
「ん」
ニーナの笑顔は、本当に柔らかくなった。
とても優しくなった。
ノキアさんも、とても素敵な顔で笑うようになった。
これからも、この光景を守っていきたいと思う。
そのために……
「……そろそろ、こちらから打って出たいな」