作品タイトル不明
493話 リフォームをしよう・その1
「……部屋がいっぱいになってしまった」
俺は一人、リビングで我が家の見取り図を見ていた。
ティナがいたことで、破格の値段で購入することができた我が家。
広く、部屋もたくさんあり、頑丈でしっかりとしている。
設備も充実していて、とても良い家なのだけど……
ここに来て、部屋がいっぱいになるという問題が起きた。
東大陸に向かった時から考えると……
リファ、フィーニア、サクラ、イリス、ノキアさんと、一気に五人も増えた。
運が良く、ちょうど部屋は五つ空いていたため、誰かが入れないという事態は避けられた。
ただ、これ以上のメンバーが加わるとなると、部屋がないという事態に。
「それと、けっこう手狭になってきたよな」
リビングで食事をするのは、まだ問題ない。
ただ、お風呂は数回に分けて入らないといけなくて、みんな一度にということは難しい。
トイレも一つだけだから、たまにソラとかルナがとても必死な顔をしているし……
洗面所も狭く、待ち時間が発生している。
他にも色々なところで問題が発生していた。
「家を買った当初は、さすがに、ここまでパーティーメンバーが増えるなんて予想していなかったからな。このまま、っていうわけにはいかないし、なんとかしないと」
そうと決めれば、さっそく行動に移ろう。
出かけてくる、とみんなに声をかけた後、冒険者ギルドへ。
それから、家を買った時と同じように、ナタリーさんに事情を話して協力を求めた。
冒険者のサポートもギルドの仕事なので、ナタリーさんは快く相談に乗ってくれて、
「そういうことなら、リフォームをしてみてはいかがでしょうか?」
そんな案を提示してくれた。
「リフォームか……そっか、そういう手があるか」
「シュラウドさんの家は敷地面積が広いので、増改築はわりと簡単にできると思いますよ」
「建物の補強とかは?」
「そうですね……私は専門家ではないので断定はできませんが、おそらく必要ないかと。あの家はしっかりしていますからね。ただ、三階建てにするなどの選択をする場合は、それに応じた補強工事は必要になると思いますが」
「なるほど」
「細かい話になると、私ではわからないことも多く……なので、専門家を紹介したいと思います」
「わかった、よろしく頼むよ」
そんなわけで、ナタリーさんに紹介された専門家のところへ。
その専門家というのが……
「こんにちは、レインさん」
フォンさんだった。
彼は建築関係にも手を伸ばしているらしく、ナタリーさん曰く、ホライズンでの活動歴は短いけれど、かなり頼りになるとのこと。
フォンさん事務所を訪ねた後、客間に案内された。
そこでお茶を飲みつつ、まずは談笑する。
「あれから、どうですか? ノキアは元気にやっているでしょうか?」
「はい、問題ありませんよ。記憶も取り戻して、いつもニーナと一緒にいる……というか、ニーナの方が離れたがらないくらいで、ちょっと迷惑をかけてしまっているかも」
「はは、それなら問題ありませんよ。親というものは、子供に甘えられればうれしいものですからね。まあ、子供のいない私が言っても説得力はないかもしれませんが」
「いえ、なんとなくわかります」
親の経験はないが、子供の経験はある。
小さい頃、親に甘えて……
父さんと母さんは仕方ないなと言いつつも、うれしそうにしていた。
たぶん、そういうことなのだろう。
「でも、ノキアが幸せそうでよかったです」
「そのことなんですけど……ノキアさんと離れて、本当によかったんですか?」
おそらく、フォンさんはノキアさんのことを……
余計なお世話なのかもしれないが尋ねてみると、まったく気にしていない様子で、フォンさんは朗らかに笑う。
「ええ、もちろんですよ。寂しくないといえばウソになりますが……しかし、子供が親と一緒にいたいと願うように、母親も娘と一緒にいたいと思うはずですからね。ノキアが記憶を取り戻した今、娘さんと一緒にいるのが一番です」
自分の幸せよりも好きな人の幸せを優先して、願う。
とても格好いいと思えた。
できるのなら、将来、俺もフォンさんみたいな人になれればと思う。
「さて……いつまでも楽しく話をしていたいですが、そうすると本当に陽が暮れてしまいそうですね。今日は、どうされたのですか?」
「あ、はい。実は、家のリフォームを考えていて……」
現状の問題点などを説明した。
「ナタリーさん……冒険者ギルドに相談したところ、フォンさんに依頼をするのが一番だと紹介されたんです」
「なるほど、それは光栄ですね。その期待を裏切らないように、がんばらないといけませんね」
「それじゃあ、引き受けてもらえるんですか?」
「ええ、もちろん。英雄殿の家のリフォームを担当できるなんて、とても光栄なことですからね」
「英雄はやめてください……」
苦笑しつつも、契約成立というように握手を交わした。
――――――――――
「……というわけで、家のリフォームをしようと思う」
その夜。
みんなを集めて、リフォームをすることを告げた。
「部屋を増やす。トイレを増やす。お風呂と洗面所を広くする。玄関を広くする。これらは必須なんだけど、他になにか要望はないか? みんなの意見を聞かせてほしい」
「はい!」
真っ先にカナデが挙手した。
「池が欲しい!」
「池? それなら問題ないと思うけど、どうして?」
「そこでお魚を養殖して……にゃふふ、じゅるり」
「えっと……他には?」
「はい」
「なのだ!」
続けて、ソラとルナが手を挙げた。
「ソラ達は、キッチン設備を充実させてほしいです」
「我が姉にはいらぬと思うが……まあ、ちと物足りぬところがあるのだ。もっと高火力の窯とか、保存庫などが欲しいのだ」
「なるほど、それは重要だな」
「ウチは、んー……強いて挙げるなら、お掃除グッズが欲しいかな―。って、リフォーム関係ないか」
「いや、それも大事なことだと思う。今度、買い揃えておくよ」
ティナのおかげで、我が家はいつも綺麗に保たれている。
そのための道具が必要というのなら、いくらでも用意しよう。
「ボクは地下室が欲しい。ひんやりして、暗いところが好き」
「わ、ワタシなんかが意見を口にするのは恐れ多いですが、その、あの、屋上とかど、どうでしょうか!? そこでお花とか育てられたら最高です!」
「わたし、は……ママがいれば、なんでも」
「ふふっ、ありがとう。ニーナ」
母娘がとても微笑ましくて、みんなでほっこりした。
「わたくしは、それほど大きくなくてもいいので、読書部屋が欲しいですわ。色々な本があると、なおうれしいです」
「ふむふむ、なるほど。サクラはどうだ?」
「オフゥ……? ウウウ……オンッ、オンッ!」
なんて?
「体を動かすことができるアスレチック場とか、水浴びできるところとか、訓練場なんかが欲しい……って、そ、そんな感じみたいです」
「なるほど。庭は広いから、まだまだそういうのは設置できると思うし……うん。これからに備えて、訓練場も作っておいた方がいいな」
サクラらしい意見だけど、でも、とても参考になる。
「じゃあ、みんなの意見をまとめて……」
「あ、待って。レインの意見がまだだよ?」
「俺の意見?」
「そうよ。あたしらの意見だけじゃなくて、レインの意見も反映させないと」
「俺は別に、とか我慢するのはダメだぞ?」
「んー……」
そんなつもりはなかったのだけど、でも、俺の意見か。
今の家になくて、俺が欲しいと思う設備。
あるいは機能。
なにかあるだろうか?
「……遊技場とか欲しいな」
「にゃん? 遊技場?」
「色々なおもちゃやゲームがあって、それなりに広くて、みんなで一緒に遊ぶことができるスペース。そんな部屋があれば楽しいかな、って」
「それは、リビングではダメなのですか?」
「リビングはすでに色々なものがあるからな。あと、なんていうか……そういう秘密基地的なものが欲しいかなー、なんて」
秘密基地。
男なら誰もが一度は憧れると思う。
「レインってば、妙なところで子供っぽいところがあるのね」
「ボクは理解できるかも」
「にゃー、秘密基地いいよねー」
「我のコレクションも設置したいのだ!」
「そこを趣味部屋にして、みんなでゆっくりするのもええなー」
みんな、わりと乗り気だった。
秘密基地は男だけではなくて、女の子であるみんなの心にも刺さるものがあるのかもしれない。
「よし、それじゃあ決まりだな」
「異議にゃーし!」
「他になにか意見のある人は?」
「「「……」」」
みんなに問いかけるけれど、特に返事はない。
現段階で思いつくことは、これくらいということか。
「なら、ひとまずこれで話をまとめてこようと思う。ただ、即決するわけじゃないと思うから、またなにか思いついたら、その時は言ってほしい」
「ん、了解」
「リフォームとなると、色々と慌ただしくなるかもしれないけど……新しい家のため、みんなでがんばっていこう!」
「「「おーっ!!!」」」