作品タイトル不明
490話 魔族化
「最強種を魔族に? それは……」
ふと、アルファさんのことを思い返した。
カグネで激突して……
しかし、最終的には分かり合うことができた。
ただ、その際、モニカやリーンの策略により、魔族化してしまった。
幸いにも助けることはできたのだけど……
魔族化したアルファさんの戦闘力はすさまじく、イリスの手助けがなければ、もしかしたら逆転されていたかもしれない。
「アルファさんみたいな例が、昔から起きている……ということですか」
「断言はできませんが、おそらくは」
「むう……その目的はなんなのだ? 我ら最強種にケンカを売りたいのか?」
「やれやれ、ルナは頭が足りませんね。だから馬妹と呼ばれるのですよ」
「それはどのような略語なのか、しっかりじっくりとことん話し合おうではないか」
「単純に考えて、敵は戦力増強を図っているのでしょうね」
おそらく、ソラの言うことが正解だろう。
最強種を魔族にして、味方にすることができれば、その恩恵は計り知れない。
現に、その計画はあちらこちらで進んでいる。
カグネではアルファさんを魔族にして……
最強種とは違うが、北大陸ではリーンを魔族化した。
それだけじゃない。
モナという、元精霊族が魔族になったという例もある。
「ニーナのおかんの言うこと、正しいかもしれんなー」
「そうね。魔族のことだから、適当に魔族化させて暴れさせて、人間に打撃を与える、って可能性もあるかもしれないけど……」
「それにしては、適当すぎますわ。一連の事件の背後に、わたくしの知る魔族……リースがいるとしたら、彼女らしくありません。なにかしら目的があると見て間違いないですわ」
「目的は、戦力の確保? でも、どうして?」
「そう、そこなんだよな」
最後に、リファが一番の疑問を投げかけてくれた。
一連の敵の行動を見ると、戦力の増強を図っていることは間違いないと思う。
しかし、なぜそんなことをしているのか、その目的が謎だ。
例えば……
魔族が中央大陸に攻め込んでくるなどの、大規模な計画を考えているとか。
ただ、魔族は魔王の忠実な部下だ。
多少のことは問題ないけれど、大規模な行動に出ると、魔王の意に反してしまうかもしれない。
故に、魔王が休眠状態にある今は勝手なことはできない。
「妥当なところを考えると、今後に備えている、っていうところなのかな?」
「ほうほう、スズの娘がまともなことを言うなんて……妾は驚いているぞ」
「失礼じゃないかにゃ!?」
アルさんの左右で、ソラとルナが同意という感じで頷いていたが……
それは見なかったことにして、話を先に進める。
「……ちょっとまずい状況だな」
魔族は、今すぐになにか行動を起こすつもりはないだろう。
しかし、これから先……
どこかでなにかしら、大規模な事件を起こす可能性が高い。
そうなると、今のうちに手を打っておきたいのだけど……
さて、どうしたものか?
アルファさんやイリスからの情報で、リースという魔族が背後にいることが判明した。
アリオス達が彼女に組みしていて……
モニカも関わっていることも知った。
しかし、判明しているのはそれくらいだ。
敵の規模やアジト。
その目的や行動理念など、わからないことはまだまだ多い。
「手遅れになる前になんとかしたいけど、どうしたものかな……」
勇者のように、魔王を倒して世界を救う、なんて大それたことは言えないのだけど……
でも、危険が迫っていると知り、それを放置しておくことはできない。
俺にできることがあるのなら、全力でがんばりたいと思う。
コンコン。
今後の行動方針に迷っていると、扉をノックする音が響いた。
「はい? って……ナタリーさん?」
息を切らしていて、焦った様子のナタリーさんの姿が。
まさか、なにか事件が?
「どうしたんですか?」
「そ、その……王都から、シュラウドさん宛の手紙がギルドに届きまして……」
「俺宛の?」
「はい。その……シュラウドさんは、Aランク冒険者ですが……Aランクの義務は覚えていますか? 大規模な事件などが起きた場合、その解決に、率先して力を差し出さなければいけない、という」
「ああ、覚えているよ。なにか事件が?」
「あ、いえ。まだそれはわかりません。ただ……」
ナタリーさんは緊張した顔で、そっと手紙を差し出してきた。
「こちら、王都からの手紙になります」
「ふむ?」
ひとまず手紙を受け取る。
差出人を確認すると……
「……サーリャさま?」
王家の紋章と共に、サーリャ・ヴァン・ロールリーズという名が記載されていた。
なんで、突然、サーリャさまからの手紙が?
もしかして、ドッキリ?
そんなことを思うものの、どのような理由であれ、王家の名を騙ることは重罪とされている。
ドッキリでこんなことをするわけがない。
ということは、本物のサーリャさまからの手紙なのだろうけど……
なんだろう?
手紙をもらう理由が思い浮かばない。
「ナタリーさん。これ、中身は見た?」
「まさか。王族からの手紙を勝手に見たら、どのようなことになるか……とにかく、一刻も早くシュラウドさんに渡さなければと思い、こうしてやってきた次第です」
「なるほど……ありがとうございます」
「いえいえ。では、私はこれで」
ナタリーさんは一礼して、立ち去る。
「レイン、どうしたの?」
「その手紙は?」
「えっと……」
サーリャさまからの手紙ということを説明した。
すると、なぜかみんなの顔が険しくなる。
主に、カナデとタニアとソラとルナだ。
「あの王女さまか……うーん、なんか、イヤな予感がするんだよね」
「同感ね。穏やかそうに見えて、したたかな印象があるわ」
「優しく微笑みつつ、横からひょいっとレインをさらっていきそうな雰囲気なのだ」
「決して気を許してはいけませんね」
そういう意味で警戒していたのか……?
混乱させるだけかと思い、サーリャさまからの告白は秘密にしておいたのだけど……
このまま秘密にした方がいいかもしれないな。
いや、それだとバレた時に大騒ぎに?
やはり、今、話しておいた方が……?
「レイン、どうしたの?」
「あ、いや……なんでもない。とりあえず、魔族に関しての話は一時中断させてくれ。今は、手紙を確認しておきたい」
手紙を開くと……
「今度、そちらに私の代わりとなる人が向かうので、よろしくしてほしい……か」
要約するとそんなことが書かれていて、また一つ、事件が舞い込んできたな、と思うのだった。