作品タイトル不明
489話 狙われた最強種
本当の意味でニーナとの再会を果たすことができたノキアさんは、しかし、張り詰めていた緊張が解けてしまったのか、そのままダウン。
深い眠りについてしまった。
片時も離れたくないらしく、ニーナもノキアさんと同じベッドで就寝。
その日は、それでお開きに。
そして、翌日。
「おはようございます」
「おはよう……ございます?」
ノキアさんと挨拶を交わすのだけど、俺は首を傾げてしまう。
というのも、ノキアさんがニーナを抱っこしていたからだ。
ニーナの方からせがんでいるらしく、セミのような感じで、ひしりとノキアさんに抱きついている。
「えっと……それは、どうしたんですか?」
「あぁ……」
ノキアさんがニーナを見て、苦笑した。
「昨日から、ぜんぜん離れてくれなくて……」
「……ママと一緒、が……いいの」
「このような感じでして」
困ったような顔をしているものの、ノキアさんは、どこかうれしそうだ。
ずっと離れ離れになっていた娘とようやく再会することができて……
おまけに、おもいきり甘えられているんだ。
母親としては、うれしいことこの上ないだろう。
ニーナも、ようやく母親と再会することができて……
今までの寂しさを埋めるように、とことん甘えていた。
まだまだ幼いから仕方ない。
というか、微笑ましい光景だ。
いつまでも二人を見ていたい、なんてことを思う。
「おはにゃー」
「おはよ。あら? ニーナは、今日は甘えん坊さんなのね」
「オンッ!」
みんなも起きてきた。
俺と同じようにニーナに気がついて、微笑ましい顔に。
その後、みんなで朝食をとる。
かなりの大人数なので、さすがに狭い。
配置を工夫することで、なんとか収まったものの……
このペースで仲間が増えていくと、そろそろ手狭になるかもしれない。
来客のことも考えると、なかなかに厳しい。
リフォームでも考えてみるかな?
まあ、ひとまずはそれは後回し。
今は、ノキアさんから事情を聞かなくてはならない。
「記憶の方はどうですか?」
「はい、問題ありません。これも、レインさん達のおかげです。ありがとうございます」
「私からもお礼を言わせてください。一時的なパートナーとはいえ、彼女の記憶が戻ったことはとてもうれしく……ありがとうございます」
ノキアさんだけではなくて、フォンさんからも頭を下げられる。
一時的な、と言っているものの……
それ以上の感情を抱いているように見えた。
まあ、そこは俺達が気にするところじゃないし、口を出す部分でもない。
気づかないことにしておこう。
「無理をしない範囲でいいんですけど……ノキアさんは、今までどうしていたのか。それと、どのようにして呪いをかけられたのか。教えてくれませんか?」
「はい」
昔のことを思い返しているらしく、ノキアさんは険しい表情に。
しかし心を大きく乱すことはなく、静かに語り始める。
「昔……といっても、何十年、何百年も前の話ではなくて、八年前くらいのことですが。私は、とある小さな村で、この子と一緒に過ごしていました」
「わたし……知ら、ない」
「ニーナは小さかったから、覚えていないんですよ」
「うぅ……?」
「神さまの遣いとして村人達に崇められて、私も、村人達のために力を使い……穏やかな時間が続いていました」
「それは、ちょっと……覚えている、かも。ママと、一緒……ふかふかの、思い出」
今も昔も、神族は人々から崇められ、祀られる存在だったらしい。
しかし、その関係が崩れる時が来た。
「……ある日、村がスタンピードに巻き込まれました。私は必死で戦いましたが、いくら最強種といえど、一人でスタンピードをどうにかできるわけがなく……村は壊滅しました。ただ、不幸中の幸いというべきか、大半の村人を逃がすことに成功しました」
スタンピードと聞いて、とある魔族……ヴァイスを思い出した。
魔物を操ることができて、人為的にスタンピードを発生させることができる。
もしかしたら、ヤツの仕業かもしれない。
「私は、ニーナを村人に預けて……夫と一緒に、できる限りの時間を稼ぐべく、魔物の群れと戦いました」
「ニーナを預けた村人、っていうのは……」
「わたし、が……レイン達と出会う、前に……いたところ、だと思う」
なるほど。
以前、ニーナが一人で祀られていたと聞いた時は、なぜ? と思ったけれど……
そういう経緯があったのか。
納得だ。
「時間を稼いだ後、私はその場から逃げました。ニーナと合流するために、村人達の後を追いましたが……その途中で魔族の襲撃を受けてしまい、遠くへ飛ばされてしまいました」
そう言うノキアさんは、とても悔しそうだ。
ニーナを一人にしてしまったこと。
仕方のないこととはいえ、そのことをとても悔いているのだろう。
「それから、ニーナを探して各地を旅してきたのですが……今から三年ほど前でしょうか? モナと呼ばれる魔族の襲撃に遭い……そこが最後の記憶です。おそらく、その時に呪いを受けたのでしょう」
「……ニーナの父親は?」
「わかりません……ただ、あの人はとても強いですから。怪我を負ってはいましたが、しかし、元気であると確信しています」
「なるほど……ありがとうございました」
どうして、ニーナは一人だったのか?
どのようにして、ノキアさんは過ごしてきたのか?
これで、ひとまずの経緯が判明した。
ただ……
「にゃー……時系列的なことはわかったけど、肝心の動機とか、そういうところはさっぱりだね」
「そうなんだよな」
なぜ、モナはノキアさんに呪いをかけたのか?
なにかしらまずいことを知られ、口封じをしたいのならば、殺した方が早い。
それをしないということは……
「たぶん、ですが……心当たりがあります」
ノキアさんは険しい顔をして、心当たりを口にする。
「おそらく、敵は……最強種を魔族にしようとしているのかと」