作品タイトル不明
484話 変幻自在
「悪いけど、ここで終わってもらうよ?」
モナが手を前に突き出すと、その動きに合わせてニーナが突撃してくる。
今までの単純な突撃と違い、転移を織り交ぜて、予測不可能な行動を見せてきた。
目の前に転移したかと思うと、すぐに消えて、横に出現する。
真横からの不意打ちをなんとか避けるのだけど、今度は、ニーナは真上に転移して直上からの襲撃を。
あちらこちらに出現、転移しているため、次の行動を読むことが難しい。
しかも、操られているせいか、敵意というものが感じられない。
人形を相手にしているかのようだ。
それでも、ニーナが動くことで空気が乱れる。
そこから動きを読み、カウンターを合わせることは可能なのだけど……
「くっ、ニーナに手をあげるなんてできるか!」
うまい具合に、怪我をさせることなく気絶させることができれば、それがベスト。
しかし、言葉にするのは簡単だけど、いざ実行するとなると困難を極める。
見た目に騙されがちだけど、ニーナは最強種だ。
まだまだ幼いのだけど、それでも、力はそこらにいる人よりも圧倒的に上。
おまけに、数々の戦いを経験して、戦闘能力はかなり向上している。
そんなニーナを相手にして、怪我させないように手加減して捕縛するのは、かなり難しい。
時間をかけて、隙を見つければなんとかなるかもしれないが……
「あはははっ、困ってる? ねえ、困ってる? くぅー、その表情いいねえ、そそられる♪」
コイツが邪魔だ。
モナはとても楽しそうにしつつ、自らも戦闘に参加する。
右手が溶けるように形が崩れて……
再び結合。
鋭い刃となり、斬りかかってくる。
自分の体の一部を変形させることができるのか?
モナはショコラにも化けていた。
この自由な変身能力が、モナの能力なのだろう。
「ほらほらほら、いくよー!」
「このっ」
さらに、モナはもう片方の手も剣に変えて、両手で刃を振るう。
刃の嵐が吹き荒れて、俺を飲み込もうとする。
ただ、それほどの脅威は感じられなかった。
スズさんっぽく言うのならば、力はあるけれど技術はない、という感じだろうか。
力も強く速度もあるのだけど、適当に振り回しているだけなので、当たることはない。
まずは、モナとニーナの攻撃を避けることに専念。
ニーナは操られているせいか、二人の連携は拙い。
すぐに隙を見つけることができた。
適正なタイミングで攻撃範囲外に逃れて、モナの背後に回り込む。
その背中を短剣で……
「っ!?」
瞬間、ゾクリと悪寒がした。
頭の中で警報が鳴る。
直感に従い、後ろに跳んだ。
直後……
モナの髪が槍のように伸びて、さきほどまで俺がいた場所を貫く。
「髪まで!?」
「ちぇ、外れたか。勘がいいね?」
「ちっ……なんて厄介な」
両手だけじゃなくて、髪まで変身することができるなんて。
これはもう、全身が凶器と思った方がいいな。
「おっと、私の能力はこれだけじゃないよ?」
「なに?」
「せっかくだから、全部、見せてあげようかな? ふふっ……私の全部、たっぷりとご覧あれ」
突然、モナは自分で自分の左腕を切り落とした。
肩から先が地面に落ちる。
しかし、血が流れることはない。
地面に落ちた左腕がボコボコと不気味にうごめいて、膨らみ、形作る。
やがて……それは、獣の形をとる。
「グルルルゥ!」
「ウソだろ……?」
「マジ♪ 私は、こういうこともできるんだよねー」
モナの能力は、変身能力であることは間違いないと思うが……
しかし、それだけじゃない。
変身能力の枠を超えた、なにかが隠されている。
「さてさて、それじゃあ、もっかいいってみようか」
「くっ」
モナ、ニーナ、獣、三体による同時攻撃。
ここまで数の差があると、技術があるとかないとか、あまり関係ない。
数の暴力に押されてしまう。
「ふふっ、苦しそうだね? さっきと比べると、明らかに余裕がなくなっているよ?」
「コイツ……!」
「でも、こんな状況なのに、神族の女の子には手を出さないんだねー。うんうん、立派だよ。ここまでくると偽善とかじゃないね。あの子のことをしっかりと考えている証拠かな? 偉い偉い」
「お前に褒められても、ぜんぜんうれしくないな!」
「残念。傷つくなあ。んー……でも、まだまだ余裕がありそうだね? 普通、これだけの攻撃を受けたらすぐにやられちゃうものなんだけど、すごいなあ」
「だから、お前に褒められてもぜんぜんうれしくない!」
「つれないなー。でも……そんなことを言われたら、意地悪したくなっちゃうね」
一度、攻撃が止む。
何事かと訝しんでいると……
モナはニーナの隣に移動して、その首に刃を当てる。
「ニーナ!?」
「はい、動かなーい」
「くっ……」
「見ての通りの、この子の命は私の気分次第。私がちょっと力を入れれば、この子の首はスパッと切れちゃうし、私が命令しても、この子は自分で首スパッとやっちゃうからねー」
「……」
怒りで頭が沸騰しそうになるが……
ダメだ、落ち着け。
単純に戦うだけならともかく、ニーナを救出しなければいけない。
その場合、冷静にものを考えることができなくなる怒りは邪魔だ。
冷静になって、隙をうかがうんだ。
いつ、なにが起きてもいいように周囲の状況を極限まで観察する。
そして……それに気がついた。
「さーて、キミのことは嫌いじゃないんだけど、命令だからねー。ん? 命令? それはそれで、私が下にいるみたいでやだなー。ま、なんでもいいか。とにかく、邪魔者は全部殺せって言われているから、死んでもらうよ」
「……」
「はい、変なことは考えないように。なにもしないで、なにも考えない。キミは、そこで、そのままじっとしているように。そして、私に食い殺されてね?」
獣が低い唸り声を響かせつつ、ゆっくりと近づいてきた。
一歩、ニ歩、三歩。
俺の喉を食いちぎることができる距離まで接近した。
「じゃあ、バイバイ」
モナが命令を下そうとした、まさにその瞬間。
「おんどりゃあああああぁっ!!! この腐れ外道、死にさらせぇえええええっ!!!」
ティナの怒声が響き渡る。