軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

481話 やあやあ、久しぶりかな?

楔からあふれる人形を使役して、周囲の探索をさせる。

その間に、俺とティナ、交代で楔を撤去。

そんなサイクルを繰り返すことで、三時間で二十の楔を撤去することができた。

かなりのハイペースだ。

このままなら、問題なく全ての楔を撤去できるだろう。

「……ただ」

一つ、気になることがある。

自分で試しておいてなんなのだけど……

どうして、人形をテイムすることができたのか?

接してみた感じ、人形は魔物……あるいは、魔族に近い存在に思えた。

なぜ、そんな存在をテイムすることができたのか?

俺の力が増しているのか?

それとも……他の理由があるのだろうか?

思えば、リーンと戦った時……

最後に彼女の動きを止めることができたのだけど、あの時のリーンは、完全に魔族化していた。

そんな相手を、一時的とはいえ支配下に置いたということは、もしかしたら魔族は他の生き物と変わらない?

「……レインの旦那?」

「えっ」

気がつけば、ティナが目の前に。

って、顔が近い。

慌てて後ろに下がる。

「ど、どうしたんだ?」

「それはウチの台詞やで。なんか、ぼーっとしてるけど、疲れたん? 次の楔の撤去も、ウチがやろか?」

「いや、大丈夫。そういうわけじゃなくて、ちょっと考え事をしていたんだ」

「そうなんだ? んー」

ティナがじっとこちらを見つめてきた。

「ウソは言ってないみたいやな」

「疑われていたのか……」

「だって、レインの旦那、すぐ無理をするからなー。見てる方としては、けっこうハラハラするんやで?」

「それは、なんというか……すまない」

北大陸へ赴いて、エルフィンさんに焼かれたことを知られた時、カナデ達にものすごい勢いで説教をされた。

あれほど怒ったところは、なかなか見たことがない。

つまり、それだけ心配をかけてしまったということ。

申しわけないと反省をして、できる限り無茶はしないと約束したのだ。

「大丈夫。本当に無茶はしていないから」

「うん、せやね。まだ平気そうやから、がんばっていこかー!」

「ああ!」

力強く頷いてみせた後、二十ニ本目の楔を撤去した。

最低数であれば、あと八つ。

最大数でも、十八。

残り時間は八時間ほど。

十分間に合う。

「よし、次へ……」

みんなの方を振り返り……そして、俺は首を傾げる。

ニーナが二人いた。

「ニーナ?」

「「ふぇ?」」

二人のニーナが同時に小首を傾げた。

それから互いを見て、ビクンッ、と全身を震わせる。

「「え……え?」」

自分が増えていることに、二人のニーナは戸惑い、怯える。

ありえない光景に戸惑っているのは、ニーナだけじゃない。

俺達も同じだ。

どうして、いきなりニーナが二人に?

心の世界だから、こんな現象もアリ……なのか?

いや、まさかそんな。

そこまでなんでもありだとしたら、夢の世界と表現した方が的確な気がする。

だとしたら、もう一人のニーナは……

「敵かっ!?」

姿はそっくりだけど、偽物に気づけないほど、俺達の絆は弱くない。

偽物のニーナに向けて、ナルカミのワイヤーを……って、今は修理中だった!?

「物質……」

慌てて岩を生成して偽物を取り囲もうとしたが、それよりも先に動かれてしまう。

「あはははっ、残念!」

「ひぁ!?」

偽物のニーナが本物のニーナを抱えて、大きく跳んだ。

岩の上に跳び、ニーナらしくない悪い笑みで俺達を見下ろす。

「ニーナ!」

「ニーナを離すんや、このニーナ! って、ああもう、ややこしいねんっ」

「確かにややこしいから、本当の姿を見せておこうかな?」

パチンと指を鳴らすと、偽物のニーナが姿を変えていく。

その姿、一度しか顔を合わせていないが、忘れることはない。

「モナか!」

「はい、その通り! だいせいかーい!」

かつて、ショコラに化けていた魔族のスパイ……モナはにっこりと笑う。

ただ、友好的な感情は一切見えず、悪意と敵意しか感じられない。

「やあやあ、久しぶりかな? 元気にしていたかい」

「おかげさまでな。モナも、元気そうにしているな」

「私も、おかげさまで、って言うところかな? ま、どっちでもいいや。元気だよー、こうして、キミ達の邪魔をするくらいには元気かな」

鋭く睨みつけるものの、モナは飄々とした態度を崩すことはない。

敵意や殺気をぶつけられるのなんて慣れた。

その程度でどうにかなると思わないでね? と態度で示していた。

「ノキア、って言ったっけ? あの神族の呪いを解かれると、ちょっと困るんだよねー。だから、邪魔しにきちゃった。てへっ」

「ふざけたことを」

「というか、どうしてわたくし達の行動を読むことができたのですか? 間者は、全て排除したはずなのですが」

間者がモナ一人とは限らない。

彗星の剣を作成した後、周囲を徹底的に洗い出して、全ての間者を排除した。

新しい間者が送られてきた可能性はあるが……

それにしては、情報が漏れるのが早い。

「んー? それは簡単なこと。呪いをかけたのは私だからねー」

「なんだと?」

「自分でかけた呪いだから、干渉されたりすれば気づくのは当たり前だよね。そういうこと」

「なら話が早い!」

俺とイリスが踏み込む。

ティナは後方でサポートをしてくれている。

「ニーナ!」

まずはニーナを助ける。

手を伸ばして……

ニーナもこちらに手を伸ばして……

「だーめ、お触り厳禁だよー♪」

小馬鹿にしたような声を残して、モナとニーナが消えた。