軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

469話 母、発見?

「え? ニーナ、どうしてこんなところに……それに、なんで覚醒状態に?」

混乱する俺は、失礼だということを忘れて、ついつい話しかけてしまう。

男と店主がこちらを見て、怪訝そうな顔に。

「えっと……すみません、どちらさまでしょうか? 私のパートナーに、なにか用でも?」

「え? パートナー?」

「おや。冒険者さんですか? もしかして、旅の共にウチのパンを? いやー、ありがたい。旅の共に選んでくれるなんて、うれしいですね」

「あ、いや……俺は」

「ふむ」

男は考えるような仕草を取り、それから、こちらの顔を見て話しかけてきた。

「……もしかして、あなたは私のパートナーのことを知っているのですか?」

「知っているというか、仲間にそっくりというか……」

「なるほど……この後、時間はありませんか? できることならば、色々とお話がしたいのですが」

「はい、それは構いませんけど……」

いったい、なにがどうなっているのか?

わけがわからなくて、頭が混乱してしまう。

「にゃ!? ニーナがいる!?」

パンの吟味を終えたカナデが戻ってきて、やはり、俺と同じように驚いていた。

「あの……」

女性が静かに声をかけてきた。

どこかおずおずとした感じで、人見知りをしているのだろうか?

「あなたは、私のことを知っているのですか?」

「あ、いえ。すみません、たぶん、人違いです」

声を聞けば、ニーナと違うことがよくわかった。

顔も、よくよく見てみれば細部が違う。

覚醒したニーナに似ているが、それでもなお、彼女の方が年上に見えた。

「そうですか……残念です。もしかしたら、私のことを知っているのかと」

「それは、どういう意味ですか?」

「私……以前の記憶がないのです」

――――――――――

パン屋で知り合った男は、商人だった。

配送サービスを考えたのが彼らしい。

名前は、フォン・アルミラ。

最近、ホライズンで活動を始めて、瞬く間に急成長している、やり手の商人だとか。

彼の家に場所を変えて……カナデはしっかりとパンを買っていた……話を聞く。

「彼女の名前は、ノキア。見ての通り、最強種の神族です。実は、彼女についての話があるのですが……」

フォンさんは、重い顔をして言う。

「実は、彼女は記憶喪失なのです」

「記憶を……?」

「私はホライズンに来る前、各地を旅して、商売をしてきました。その途中で、彼女を見つけたのです」

「その時の状況を聞いても?」

「ええ、もちろん。あれは、南大陸を旅している時のことでした。当時の私は、珍しい品が僻地にあると聞いて、そちらへ赴いたのです」

「にゃー、なんかトレジャーハンターみたいだね」

「ははっ、そのイメージで間違いないかと。当時の私は、商売を拡大するために、色々なことに手を伸ばしていましたからね。トレジャーハンターのようなことはしょっちゅうしていましたし、美術品の鑑定なども行って……っと、話が逸れてしまいましたね」

恥ずかしい過去を話した、というような感じで、フォンさんは顔を赤くした。

しかし、すぐに真面目な顔をして、話を続ける。

「宝があるという僻地を探索していたのですが、その時、ノキアと出会いました。彼女はなにをするわけでもなく、荒野にぼーっと立っていて……なにかあったのではないかと思い、声をかけました。しかし、その結果は……」

「私は、自分の名前以外、なにも覚えていませんでした。自分が何者なのか、なにをしていたのか、なぜあんなところにいたのか。なにも……覚えていませんでした」

「なるほど、そんなことが」

「放っておくことはできず、私はノキアの身元保証人になり、仕事を与えることにしました。幸いというべきか、私は各地を旅する商人。いつか、彼女のことを知る人に出会えるかもしれないと」

そして、最近になってホライズンにやってきて、新しい商売を始めた。

その過程で俺と知り合い……

ようやく、小さな手がかりを手に入れた、というわけか。

フォンさんはとてもうれしそうな顔をしていた。

ノキアの記憶の手がかりになりそうな人物と接触することができて、自分のことのように喜んでいるのだろう。

彼は悪い人ではなさそうだ。

ニーナのことを教えても大丈夫だろう。

万が一、彼がなにかしら悪いことを企んでいたとしても……

その時は、俺がニーナやみんなを守ればいい。

「実は……」

こちらの事情を説明する。

俺は冒険者で、ビーストテイマー。

最強種の仲間がいて、その中に神族の女の子がいる。

名前はニーナで、まだ幼い。

両親の安否は不明で、どこにいるかなにもわかっていない。

……そんなことを説明した。

「なんと……あなたが、レイン・シュラウドさんでしたか。噂はかねがね」

「えっ、俺のことを知っているんですか?」

「もちろん。ホライズンの英雄と呼ばれていて、それだけではなくて、色々な偉業を成し遂げているみたいですね。最近では、東大陸のクリオスを救ったとか」

「どこでそんなことを……?」

「商人は情報が命ですからね。常に神経を張り巡らせて、新鮮な情報を仕入れています。あと、クリオスの件に関しては、鬼族が大々的に宣伝していましたから。この街を救ったのは、レイン・シュラウドという人間の英雄だ……と」

レゾナさん……あなたは、いったいなにをしているんですか?

思わず頭を抱えたくなるものの、ひとまず、話を先に進める。

「えっと……話を戻しますが、今話した通り、仲間に神族の女の子がいるんです。名前は、ニーナ。聞き覚えはありませんか?」

「……ニーナ……」

ノキアさんが不思議そうな顔になる。

なにかを考えているような、思い出しているような……

しかし、うまくいかないらしく、眉をしかめてしまう。

「その女の子の名前は……」

ノキアさんは、そっと己の胸元に手を当てる。

うれしそうな泣き出しそうな……矛盾しているかもしれないが、そんな顔をしていた。

「ニーナ、というんですね」

「はい。あなたと同じ、神族です。それと……すごくノキアさんに似ています。そっくりというか、面影があるというか……もしかしたら、母娘なのではないかな、と」

「……すみません、思い出すことはできません」

「そうですか……」

「ですが」

ノキアさんが必死な顔で言う。

「ニーナという名前を聞くと、胸がざわつくというか、温かくなるというか……忘れてしまっているのですけど、思い出せないのですけど……でも、とても大事な名前であることは、間違いないと思うのです。ニーナ……その名前は、私にとって……」

これは、もしかしたらもしかするかもしれない。

期待がこみ上げてくる。

「ひとまず……ニーナに会ってみましょう」

――――――――――

ノキアさん達と一緒に家に戻る。

すると、ちょうどいいタイミングで扉が開いた。

「ニーナ、悪いけどおつかい頼むで。調味料がなくなってたこと、レインの旦那とカナデに伝え忘れてしもうてなー」

「ん……大丈夫。わたし、がんばる……よ?」

ニーナが姿を見せた。

すぐにこちらに気がついて……

それから、ノキアさんを見て、目を大きくする。

「……ママ?」

ぽろりと、ニーナの瞳から涙がこぼれ落ちた。