作品タイトル不明
461話 新しい武器を作ろう
とんでもないトラブルが起きたものの、幸いにも、無事に魔物の討伐は完了した。
俺、カナデ、ニーナは怪我をしていないし、他の冒険者達も重傷者はいない。
結果としては、大成功だ。
その代償というべきなのか、カムイが砕けてしまう。
ひとまず家に戻り、討伐で疲労した体を休めて……
翌日、俺はガンツの武具店を訪ねた。
「うーむ……」
砕けたカムイをガンツに見せると、ものすごく苦い顔をされた。
そんな彼を、定期メンテナンスを受けたティナが覗き込む。
「なあなあ、おっちゃん。レインの旦那の武器、修復できんの?」
「ここまで見事に砕け散っていると、さすがにどうしようもないわい。修復というよりは、一から作り直した方が早いレベルじゃな。いったい、どのような使い方をしたんじゃ?」
「えっと……俺としては、普通に扱っていたつもりなんだけど」
「本当か?」
「レインの旦那の普通は、あまりアテにならんからなー」
ガンツだけではなくて、なぜかティナからも疑われてしまう。
「いや、本当に普通に扱っていたから。いつも通りに魔物と戦っただけで、特別に硬い部分を攻撃したわけでもないし……」
「うーむ。ならば不可解じゃのう……長期間メンテナンスをしていなかったとはいえ、そうそう簡単に壊れるような作りにはなっていないのじゃが」
「……もしかして、アレが悪かったんやない?」
二人で頭を悩ませていると、思い出したという様子でティナが口を開く。
「アレって?」
「リーンとの戦いで、カナデの力を使っていたやろ?」
「ああ。でも、カナデやみんなの力を借りることは、今までに何度も……」
「せやけど、覚醒状態のみんなの力を借りたのは初めてやろ?」
「あ」
「もしかして、それに耐えられなくて、致命的なダメージが入っていて、この前の魔物の討伐で限界が来た……っていうことはないん?」
言われてみると、そんな気がしてきた。
というか、それ以外の可能性が思い浮かばない。
「なんじゃ、その覚醒というのは?」
「えっと、実は……」
不思議そうな顔をするガンツに、覚醒のことを教えた。
その上で、覚醒状態のカナデの力を借りたことを伝えた。
苦い顔から一転して、ガンツが納得顔になる。
「なるほどのう……だとしたら、納得じゃ。そこまでの力は、さすがに想定しておらんからのう。耐えきれず、砕けたとしても不思議ではないわい」
「なんていうか……ごめん」
ガンツが魂を込めて作った武器を壊してしまった。
彼からしたら、業腹物かもしれない。
いたたまれなくなり謝罪するのだけど、気にするなとガンツは笑う。
「なーに、謝るとしたら儂の方じゃ。壊れるなんて、まるで想定していなかったからのう。儂の作った武器ならば壊れるなんてことはありえない……という、慢心があったということじゃ。そのことに気づかせてくれたことは、ありがたいことじゃよ」
「そう言ってもらえると助かるよ」
「しかし……これは、どうしたものかのう」
ガンツが再び苦い顔に。
「直せないん?」
「さっきも言った通り、一から作り直した方が早いくらいじゃからな。まあ、時間はかかるが、それについては問題ない。材料もあるし、今は時間もある」
「なら……」
「じゃが、また壊れるようなものを作っても仕方ないじゃろう?」
「そう言われると……」
困るかもしれない。
今までのことを考えると、今後、魔族と戦う機会は増えるだろう。
その時、覚醒状態のみんなの力を借りることもあるだろうし……
それでまた壊していたら、さすがに申しわけない。
「新しいものは作れないん? 覚醒状態のみんなの力にも耐えられるような、レインの旦那の新しい武器」
「ティナ、そんな無茶を言っても、ガンツを困らせるだけで……」
「作れるぞ」
「作れるのか!?」
さらりと言われて驚いてしまう。
ただ、ガンツの顔は苦いままだ。
なにかしら問題があるのかもしれない。
「儂は一流の武具職人を自負しておる。どのようなものであれ、客が求めるのならば応えてみせよう」
「おぉ、頼もしいな、おっちゃん」
「ただ……以前も似たようなことを言ったが、材料がなければどうしようもない」
「またミスリルが枯渇を?」
「いや、ミスリルは変わらずに採取できておる。問題は、ミスリルではダメということじゃ」
「ああ、そっか」
「どういうことなん?」
「つまり……」
カムイはミスリルを素材に作られたものだけど……
それでは、覚醒状態のみんなの力に耐えることができなかった。
同じような武器を作るとしたら、ミスリル以上に強度な素材を使用しなければ、また同じ結果になってしまうだろう。
……ということを説明する。
「なるほどなー。じゃあ、おっちゃん。ミスリル以上の素材で、レインの旦那の新しい武器を作ってくれへん?」
「簡単に言わんでくれ。ミスリル以上となると、相当に数が限られている。ううむ……ハイミスリルか? しかし、耐久値はそれほど大きくは変わらぬ……となると、エレメントクリスタルか、あるいは陽光鉄……いやいや、やはりそれ以上の」
考える仕草を取り、ガンツがぶつぶつとつぶやいた。
ややあって、困った様子で頭を振る。
「むう……ダメじゃ、どれもこれもしっくりこないのう。覚醒とやらの力に耐えられる素材となると、なかなか」
「これぞ! っていう、とっておきの一品はないん?」
「そうじゃな……伝説の鉱石、オリハルコンならば問題はないじゃろう」
「じゃあ、おっちゃん。それで頼むで!」
「無茶言うでない。伝説と呼ばれているから伝説なのじゃ。オリハルコンがほいほいと手に入るわけなかろう」
「なはは、せやなー」
その後……
あれこれと考えてみるものの良いアイディアは思い浮かばなず、その日は解散となった。
これからのことを考えると、カムイ以上に強力な武器は必須だ。
どうにかしたいと思うものの、しかし、具体的な方針を立てることができず……
俺とティナは頭を悩ませつつ、家に帰った。
――――――――――
「と、いうわけなんだ」
夕食の席で、ガンツと交わした話をした。
すると、カナデが申しわけなさそうな顔に。
「にゃー……ごめんね、レイン。私のせいで武器を壊しちゃって……」
「いやいや、カナデのせいじゃないさ。あれは仕方のないことだと思うし、そもそもカナデの力を借りなかったら、リーンに勝てていなかっただろうな」
「せやで。あんま気にしない方がええで」
「うん……えへへ、ありがと、ティナ」
カナデに元気が戻ったみたいで安心するのだけど、肝心の問題は解決していない。
ホント、どうしたものか?
……なんて頭を悩ませていると、思わぬところから思わぬ言葉が飛び出す。
「ふむ。つまり、オリハルコンがあればよいのであろう?」
「そうだけど……もしかしてルナは、オリハルコンの在り処を知っているのか?」
「知っているもなにも、レインはオリハルコンを持っているではないか」
「……」
少しの沈黙。
そして、
「えっ!?」
驚きの声が響くのだった。