作品タイトル不明
460話 砕けた……
ナタリーさんの話によると、街の近くにBランクの魔物が一匹。
それと、Cランクの魔物が複数現れたらしい。
調査をしたところ、蜘蛛型の魔物は洞窟の奥に身を潜めて、繁殖。
時間をかけて仲間を増やしていたという。
その数は、百を超えるらしい。
猟師が偶然発見しなければ、もっともっと増えていたという話だから恐ろしい。
そして今回、掃討作戦が行われることになった。
敵はBランクとCランクが複数。
かなりの高難易度依頼となる。
そこで、たくさんの人が集められて……
俺達が帰っていることに気がついたナタリーさんが、声をかけてきた、というわけだ。
「にゃふー、BランクとCランクくらい、今の私達なら楽勝だよね!」
やる気たっぷりというかのように、カナデはぐるぐると腕を回している。
「カナデ、気持ちはわからないでもないが……」
「油断、は……ダメ、だよ?」
もう一人、一緒についてきたニーナが、めっ、と叱る。
「え? いや、その……」
「怪我、するかもしれないから……油断、ダメ。しっかり、がんばろう?」
「……はい」
言いたいことを先に言われてしまった。
ニーナのような年下に言われては、さすがに反省するしかない。
カナデは肩を落として、尻尾をへにゃっとさせるのだった。
「シュラウドさん、準備はいいですか?」
街の入り口に複数の冒険者が集まっている。
彼らと一緒に、これから討伐に向かう。
ちなみに、同行者はカナデとニーナだけ。
街の戦力を大きく動かすため、予想外のトラブルが起きた時に備えて、他のメンバーは待機することに。
「ああ、俺達は大丈夫だ」
「他のみなさんは?」
ナタリーさんの問いかけに、集まった冒険者達が力強い声で応えた。
「では、みなさん……Bランクの魔物ダークスパイダーと、その子供のクラウドスパイダーの討伐、よろしくお願いします!」
「「「おうっ!!!」」」
再び力強い声が響いて、冒険者達は街を出た。
目指すは、魔物の繁殖地となっている洞窟。
あふれだして人を襲い出すのは目前らしいから、急がなければならない。
まずは、冒険者集団は前衛と後衛に分かれた。
討伐をする本隊と、取り逃がさないように包囲網を敷く補助班の二つに。
俺達は、本隊に配属された。
まあ、カナデやニーナもいるから、当然の配置と言える。
特に異論はないが、ニーナが言うように油断禁物なので、しっかりとやりたいと思う。
「レイン」
「どうした、カナデ?」
「今更なんだけど……私、蜘蛛が苦手なんだけど、どうしよう……?」
「なんで志願したんだ……?」
「だってだって、レインと一緒にいたいというか、私の活躍するところを見て欲しいというか……」
「そ、そっか」
そんなことを言われてしまうと、なにも反応を返せない。
「どう、したの?」
「い、いや。なんでもないよ」
「うんうん、ニーナには関係ないことだから、気にしないで」
「?」
純粋な瞳が、今は心苦しい。
「苦手なら、後方に回るか?」
「ううん、だ、大丈夫。そこら辺の木とか引っこ抜いて、それで殴ることにするから」
「気軽に森林破壊をされても困るんだが……せめて、石とか岩にしてくれ」
「らにゃー!」
その後、他の冒険者達と作戦の詳細を詰めた。
そして……討伐戦が開始される。
――――――――――
「必殺! 大回転にゃん球!」
ティナの影響でも受けたのか、そう叫びつつ、カナデは拳大の石を投げた。
ゴォッ! と凶悪な音を立てて石が飛んで、クラウドスパイダーを数匹、まとめてなぎ倒していく。
ただの石でも、カナデが使えば立派な武器になる。
「えい」
ニーナは亜空間に繋がる穴を開いて、敵を吸い込もうとしていた。
ただ、どこかで引っかかっているらしく、うまく吸い込むことができていない。
失敗か?
そんなことを思い、フォローに回ろうとするのだけど、ほどなくしてニーナの真意に気がついた。
「狐の嬢ちゃん、そのまま動きを止めておいてくれ!」
「後は俺達がやる!」
敵が動けない間に、冒険者達が攻撃をしかけていた。
なるほど、敵の足止めをしていたのか。
ニーナの能力は、色々と応用が効くな。
最近は、本人も扱い慣れているようだし……パーティーメンバーの中で、成長の幅が一番かもしれない。
「俺も負けていられないな! ファイヤーボール・マルチショット!」
群がってくるクラウドスパイダーを魔法で蹴散らしつつ、奥に潜むダークスパイダーを狙う。
その大きさは十メートルほどで、小人になったような気分だ。
さらに、鎌のような鋭い牙を生やしている。
ダークスパイダーは鋭い脚を槍のように使い、さらに鎌のような牙で大きく薙いできた。
速い。
しかも狙いが正確で、瞬きをすれば、その間に攻撃をくらってしまいそうだ。
「……とはいえ」
ヴァイスや魔族化させられたアルファさん、リーンに比べれば、その力は遥かに劣る。
こんなところで、こんな相手に手間取っている場合じゃないな。
これから先、さらに大きな困難がやってくるだろうし、今まで以上に気合を入れなければ。
俺はカムイを構えて、さらにダークスパイダーに接近した。
雨のように降り注ぐ攻撃をミリ単位で避けて、さらに距離を詰める。
ダークスパイダーは目と鼻の先。
俺は体を捻り最後の攻撃を避けた後、ヤツの赤い目にカムイを突き立てて……
「えっ」
ギィンッ! という甲高い音を立てて、カムイの刃が砕けた。