作品タイトル不明
450話 二人と契約
さらに数日が経過して……
エルフィンさんは里へ。
アルファさんはクリオスへ。
シフォン達は王都へ。
それぞれに旅立つ日が訪れた。
俺達はカグネの出入り口に移動して、彼女達を見送る。
「他の人間と馴れ合うつもりはありませんが……まあ、レインなら別です。なにかあれば、その時は力を貸しましょう。気軽に、というのは無理かもしれませんが、また訪ねて来てください。歓迎します」
エルフィンさんは、最初は見せてくれなかった笑顔を浮かべつつ、そう言う。
「私は、しばらく同族と暮らすことにします。その中で、本当にするべきことを探して、自分の役割を見つけたいと思います」
アルファさんは、どこまでもらしい台詞を残した。
「レインくん、さよならは言わないからね。っていうか、たぶん、また会うことになると思うし……なにかあった時は、レインくんの力を頼りにしてもいいかな? 私も、次に会う時までに、もっともっと勇者らしくなっておくから」
「色々とお世話になりましたー。あと、ご迷惑をおかけしましたー。今度はそうならないように、精進しますねぇ」
「たくさん、ありがとうだぞ。レイン達に出会っていなかったら、私達はダメなままだったと思うから、とても感謝なのだ」
シフォン達と笑顔で握手を交わして、それをまた今度の挨拶とした。
そして……
みんなは、それぞれの道を歩いていく。
また、道が交わる日がやってくるだろうか?
その時は、笑顔で色々なことを話せるだろうか?
そんな期待をしつつ、みんなの背中を見送るのだった。
――――――――――
「ねえねえ、レイン」
みんなを見送った後、カナデが声をかけてきた。
「私達は、これからどうするの?」
「そうだな……色々とやらないといけないことはある」
ここ最近、活発になっている魔族のこと。
神出鬼没で、謎の行動を見せるモニカのこと。
そして……アリオスのこと。
今後も連中と関わることになるだろう。
こちらは願い下げなのだけど、向こうから近づいてくるに違いない。
その時に備えて、情報収集や鍛錬などをしておきたいところだけど……
「ひとまず、我が家に帰ろうか。今回の件で、だいぶ空けているし……それに、色々とありすぎたから、少し休息しないと」
「うむ。我は賛成だぞ。色々とがんばりすぎたので、一ヶ月くらい引きこもって過ごしたいのだ」
「ルナ。多少の休息はソラも賛成しますが、引きこもりは許しません。適度な運動と適度な勉強は必須です」
「あたしは、たっぷり昼寝したいわ。今回は、さすがに疲れたし」
「お昼寝……気持ち、よさそう」
「ニーナも一緒にお昼寝する?」
「んっ」
「ウチは掃除やなー。たぶん、めっちゃ埃溜まってるやろうし」
「ボクも手伝うよ?」
「んー、リファはいい子やなあ。アメちゃん食べる?」
みんな、笑顔で家に着いた時のことを話していた。
その後ろで、フィーニアが落ち着きなさそうにしている。
声をかけようとして、でも止めて、もう一度声をかけようとして……
「あうあう」
引っ込み思案な性格だから、なかなか声をかけられないみたいだ。
フィーニアがみんなの輪の中にうまく溶け込めるように、俺はその背中を……
「ふふっ」
押そうとしたところで、先にイリスが動いた。
フィーニアの背後に回り込み、俺がやろうとしていたように、小さな背中を押す。
「ひゃ!? い、イリスさん?」
「そのようなところにいないで、わたくし達も混ざりましょう。ほら、いきますわよ」
「は、はひっ」
二人が輪に加わり、さらに笑顔があふれた。
フィーニアは人見知りなところがあるし、イリスは一度戦ったことがあるから、どうなるかと心配していたのだけど……
それは杞憂だったみたいだ。
最初から一緒の時間を過ごしていたかのように、心からの笑顔を浮かべて、とても楽しそうにしている。
この光景を掴み取ることができて、本当によかった。
――――――――――
「と、いうわけで」
シフォン達の見送りを済ませて、宿に戻った後。
イリスとフィーニアが俺が使用している部屋を訪ねてきた。
「わたくし達とも契約していただけませんか?」
「ま、ましぇんかっ!?」
イリスはいたずらっ子のように笑いつつ、フィーニアはガチガチに緊張しつつ、それぞれに言う。
「え?」
「なぜそこで、驚くのですか? わたくし達もレインさまの仲間になったわけですし、なればこそ、契約をするのが当たり前ではありません?」
「そういうものなのか?」
イリスを助けられたことがうれしくて、その後のことはまるで考えていなくて……
だからなのか、ある意味で、イリスの話は予想外だった。
「フィーニアも、イリスと同意見なのか?」
「は、はひゅっ!」
肯定しているのか否定しているのか、判断に迷う返事をされてしまう。
ただ、首をぶんぶんと縦に振っているところを見ると、肯定なのだろう。
「えっと……わかった。ただ、成功するかどうか……」
「成功するかどうかわからないから、失敗したとしても怒らないでほしい」
台詞を先に言われてしまう。
「……と、カナデさんがおっしゃっていましたが、ふふっ、レインさまの行動は読みやすいのですね」
「むう」
「レインさまは、相変わらず謙虚というか、強気になることがないのですね。俺なら問題なく契約できるから安心してほしい、くらい言ってほしいものですわ」
「そう言われてもな……」
「女の子は、時にリードしてほしいものなのですよ? ね、フィーニアさん」
「り、リード……どきどき」
「わかったよ。とにかく、がんばってみる」
話が変な方向に流れているような気がしたため、慌てて修正した。
二人同時の契約は、ソラとルナの時以来だけど……なんとかなるように、がんばろう。
親指を噛み、流れた血で魔法陣を描く。
「我が名は、レイン・シュラウド。新たな契約を結び、ここに縁を作る。誓いを胸に、希望を心に、力をこの手に。答えよ。汝の名前は?」
「……イリス……」
「……フィーニア……」
二人がそれぞれ応えて、契約が成立した。
手に浮かんだ魔法陣を眺めた後、
「「これからよろしくお願いします」」
二人はにっこりと笑いながら、そう言うのだった。