作品タイトル不明
442話 帰還
イリスの治療のために、フィーニアとエルフィンさんが同行してくれることに。
当初はエルフィンさんだけの予定だったが、フィーニアもぜひ、と言い出して、一緒することになった。
そして、さらにその護衛として、サクラもついてくることに。
俺達がいるから、本当は一緒の予定はなかったのだけど、本人はとてもついてきたそうにしていて……
さようならしようとしたら、とても悲しそうな声でクゥンと鳴かれてしまい、断ることはできなかった。
フィーニア、エルフィンさん、サクラの三人を連れて、精霊族の里に繋がる門へ。
ここに来れば、アルさんが自動的に迎えに来てくれるという話だったのだけど……
でも、合図はどうすればいいのだろう?
迷っていると、突然、ぐにゃりと空間が歪む。
そこから現れたのは……アルさんだ。
「おいっす!」
「……」
アルさんらしからぬ挨拶が飛び出して、思わず言葉を失ってしまう。
そんな俺を見て、アルさんが小首を傾げる。
「ふむ? おかしいのう。最近の若者の間では、これがなうい挨拶と聞いたが」
「いや、えっと……」
困った。
どう反応していいかわからない。
というか、どこでそんな情報を仕入れてくるんだ?
実は、人の情報に詳しいのだろうか?
「まあよい。その顔、きちんと成果はあったようじゃな。そちらの……三人が?」
「はい。癒やしの力を持つ、不死鳥族の長のエルフィンさん。その娘のフィーニア。それと、同じく北大陸に住む呀狼族のサクラです」
「はじめまして、エルフィンといいます」
「ふぃ、ふぃふぃふぃーにゃでっす!?」
「オンッ!」
それぞれに簡単な挨拶をした。
「あー……そうじゃった。不死鳥族と呀狼族、確かに、そんな最強種がいたのう。北大陸に移動しておったのか。うーむ、ようやく思い出したのじゃ。歳はとりたくないのう……っと、無駄話をしておる場合じゃないのう。ゆくぞ」
アルさんに招かれて、俺達は精霊族の里へ。
できることなら長に挨拶をしたいが、時間が惜しい。
アルさんの案内で、すぐにカグネに繋がる道を開いてもらう。
「……」
空間が揺らぎ……
一時的に宿に設置された扉に出る。
カグネの宿だ。
ここを離れていたのは一週間くらいなのだけど、ずいぶんと久しぶりのように感じた。
「レインっ!?」
聞き覚えがあり、懐かしさすら感じるほどの声。
振り返ると、タニアが駆けてくるのが見えて……
「ふぐっ!?」
「あーもうっ、遅いわよ! 待ちくたびれたんだから」
おもいきり抱きしめられた。
待たせてしまったことは悪いと思うが、いや、これはなんていうか……
「ちょ、ちょっとタニア! そういうのはダメ!!!」
「あっ」
カナデに引き離されて、タニアが正気に戻ったような顔に。
自分がなにをしていたか自覚したらしく、その頬が赤くなる。
ただ……
目に浮かぶ涙が止められない。
つまり、タニアが泣いてしまうような事態に発展しているということに……?
「タニア、状況は? イリスは?」
「イリスは大丈夫。今は、ソラとルナががんばってくれているわ。ただ……」
「ただ?」
「モニカが現れたの。イリスを狙っていたみたいで……もちろん、追い払ったわ。ただ、嫌がらせとばかりに魔物を放ってきて、他のみんなはその対処に出てるところ。もう、一日以上も攻撃が続いていて……たぶん、どこからか召喚されているんだと思うけど、あたしらだけじゃどうしようもなくて」
「またモニカか……」
拳を強く握り締めて……
しかし、今は怒りに囚われている場合じゃないと、思考を切り替える。
「もう……ホントに遅いんだから」
タニアは泣きそうな声で言う。
不安にさせてしまったみたいで、申しわけない。
「大丈夫」
「あ……」
「もう、タニア達だけに無理はさせないから。色々と任せてごめん。あと、耐えていてくれてありがとう」
タニアを抱きしめると、そっと、向こうも俺の背に手を回す。
カナデは複雑そうな顔をしつつも、今度はなにも言わない。
少しして離れる。
「カナデ、ニーナ、リファ、シフォン。すまないけど……」
「うん、任せて。みんなのお手伝いをすればいいんだよね?」
「がん、ばる」
「ボクはぜんぜん疲れてないから、いけるよ」
「ショコラとミルフィーユも戦っているんだもの。なら、私だけがのんびりするわけにはいかないわね」
「ありがとう」
精霊族の里を経由したとはいえ、けっこうな距離を移動しているため、それなりに疲労はたまっているはず。
それなのに、すぐに笑顔で応えてくれるところは、とても頼もしく思う。
「オンッ!」
自分もやるぞ、というような感じでサクラが吠えた。
「ああ、サクラもありがとう」
「オフゥ」
頭を撫でると、尻尾がぶんぶんとはちきれんばかりに横に振られた。
「いくよー!」
カナデを先頭に、みんなが外へ駆けていく。
タニアもみんなに続いて、外に出た。
これなら大丈夫。
みんなのことを信頼しているから、安心して任せることができる。
俺は、俺のやるべきことをやろう。
エルフィンさんとフィーニアを、イリスのいる部屋に案内する。
「あっ、レイン!?」
「戻ってきたのですね、よかった……」
「待ってたでー!」
目の下にクマを作り、かなり疲労いっぱいな様子のソラとルナ。
そして、そんな二人を甲斐甲斐しく世話するティナがいた。
「ごめん、待たせた」
「ふふん、我らなら心配いらないぞ。あと一週間くらいならば、どうにでもなるのだ」
「それ以上は、さすがに厳しいですが……でも、なんとかなったのですね?」
ソラの視線が、エルフィンさんとフィーニアに向いた。
「不死鳥族の、エルフィンさんとフィーニアだ」
「はじめまして……と、挨拶をしている場合ではありませんね。さっそく、治療を開始しましょう。フィーニア、手伝ってくれますね?」
「は、はひっ!」
エルフィンさんとフィーニアが、それぞれベッドの左右に立つ。
イリスに手の平をかざして、そっと炎の翼を背に展開させた。