軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

441話 焦り

転移の魔道具を何度か利用することで、モニカは主がいる屋敷に戻った。

若干のクールタイムが必要で、連続使用することはできないが……

しかし、魔力が続く限りは何度でも使用することができる。

とても便利な魔道具ではあるが、転移できるのは一人だけ。

また、一度に移動できる距離も、そこまで大きなものではない。

利点もあるが欠点もある。

「ままならないものですね」

モニカはため息をこぼす。

これからリースに会い、北大陸の事の顛末を報告しなければいけない。

有能なリースのことだ。

モニカの報告を受けるまでもなく、間者などを利用して、すでに情報は得ているだろう。

だからといって、モニカがなにもしないでいいということはない。

顔を合わせて、繰り返しになるであろう報告をしなければならない。

「どのような顔をして、リース様に会えばいいのか……」

リースの目的は、北大陸にいる未知の最強種の排除。

難しいようならば、レインの目的である、イリスの復活を阻止すること。

しかし、どちらの目的も達成することができなかった。

リーンを魔族化させてぶつけるという切り札まで使用したのに、一人も殺すことができなかった。

「失態……ですね」

思い通りにいかない現実に腹が立ち、モニカはギリリと奥歯を噛んだ。

レインやタニア達の前では涼しい顔をしていたものの、あれは単なる演技。

内心では、こちらが用意した罠や策を次々と突破するレイン達に驚き、苛立ち、怒りすら覚えていた。

なんて忌々しい。

最初は順調だった。

アリオスをサポートするように見せて、その実、そそのかして無謀な行動をとらせる。

勇者の称号が剥奪された後、脱獄に手を貸して恩を売り、味方に取り込む。

ヴァイスのサポートに回り、鬼族を殲滅する作戦に手を貸す。

これは失敗してしまったものの、どちらかというとヴァイスの問題だ。

カグネで起きた事件では、うまい具合に裏で活動することができた。

その証拠に、不完全ではあったものの、イリスの魂を手に入れることができた。

ほぼほぼ順調で、リースもモニカの働きに満足していた。

していたが……今回はどうだろうか?

何一つ、目的を達成していない。

それどころかリーンを失い、レインと不死鳥族、呀狼族の絆は強くなり……

マイナス要素しかない。

本当に頭が痛い。

「いえ、そもそも……」

自分は、本当にうまく立ち回れていたのだろうか?

そんな疑問と不安が、モニカの心の底を漂う。

本来ならば、アリオスはまだ勇者の称号を奪われていないはずだった。

勇者として活躍してもらいつつ、裏でリースとの繋がりを作り、傀儡としていく予定だった。

ヴァイスの件も、自分がもっとうまく立ち回れば、彼が滅びるなどという結果は避けられたのでは?

カグネの件は、イリスの力を得ることが目的ではあったものの、完璧とは言い難い。

北大陸は考えるまでもない。

「冷静に考えてみると……これは、ダメですね」

モニカは苦い顔になる。

それなりの仕事はしてきた。

しかし、完璧とはいえない。

それではダメなのだ。

もっともっとリースの役に立ちたい。

彼女のために力を振るいたい。

「そう……私は、リースさまのために、役に立たなくては」

それだけの恩がある。

恩だけではなくて、リースの力になりたいという思いもある。

なんでもできる。

なんでもしたい。

全てを捧げる覚悟もある。

その思いが強ければ強いほど、焦りを覚える。

リースにとって、自分は有用な存在なのか?

ここしばらくの失敗は気にしていないと言うが、実は苦々しく思っているのではないか?

無能だと、見捨てられていないだろうか?

「うっ……」

モニカにとって最悪の未来を想像して、思わず吐き気を覚えるほどに、気分が悪くなってしまう。

片手を口元へ。

もう片方の手は胸元へ。

手の平で自らの心音を感じつつ、心の中で落ち着けと繰り返す。

「……ふぅ」

落ち着きを取り戻したモニカは、改めてリースのところへ向かう。

「ただいま戻りました、リースさま」

「おかえりなさい、モニカ」

リースは笑顔でモニカを迎えると、すぐに彼女の手を取る。

それから、体のあちこちに触れた。

「あ、あの……リースさま? どうされたのですか、私の体を触って」

「北大陸でのことは聞きました」

「それ、は……」

「なので、あなたが怪我をしていないかと心配になって。でも、どうやら大丈夫みたいですね。安心しました」

「……」

モニカはぽかんとした。

リースの言葉に嘘偽りはないだろう。

それだけの情が言葉に込められている。

それをしっかりと感じ取ったからこそ、モニカは驚いたのだ。

自分なんて、捨てられてもおかしくないのに……

それなのに、リースは未だ手元に置いてくれるだけではなくて、こうして、親身になって接してくれている。

あぁ。

なんて素晴らしい主なのだろう。

自分を救い出してくれた時から、リースは変わっていない。

友人のように母親のように、愛情を注いでくれている。

その事実をこれ以上ないほどに感じ取ることができたモニカは、今まで以上に、彼女のために働かなければという誓いを立てた。

今まで以上の忠誠心を胸に抱いた。

それと同時に……焦りも覚えた。

中途半端な結果ばかりを出してなんていられない。

リースのために、これ以上ないほどの完璧な成果を出したい。

モニカは……焦る。