作品タイトル不明
439話 全面協力
リーンを倒すことができて……
最低限の後始末を終えて……
そして、改めてエルフィンさんと話し合うことに。
リーンという乱入者があったものの、不死鳥族との間にある溝は完全に埋めることはできていないと思う。
イリスのために、どうにかして説得しないといけない。
絶対に諦めることはしないし、何日でも言葉を並べて、納得してもらえるまで説得を続けるつもりだ。
そんな覚悟で会談に挑んだのだけど、
「ありがとうございました。そして、申しわけありません」
いきなりエルフィンさんが、深々と頭を下げてきた。
その他、同席している数人の不死鳥族も頭を下げている。
これはいったい……?
突然のことに驚いて、現実に理解が追いつかず、俺はぽかんとしてしまう。
それはみんなも同じらしく、カナデ達も目を丸くしていた。
「なにを今更、と思われるかもしれません。そのような叱責を受けることは覚悟しています。ただ、それでも、礼を尽くすべき方には礼を尽くさなければいけない……私達はそう考えて、このようにしている次第です」
「えっと……?」
「ど、どういうことにゃ……?」
「人間は私達の敵。それは未だ変わりませんが……しかし、あなたは違う。私達のために、その身を犠牲にするような勢いで戦ってくれました。仲間を助けてくれました。あなたは……英雄です」
「……で、ですっ」
何度も頭を下げるエルフィンさんに続いて、その隣のフィーニアも、ややぎこちない様子で頭を下げる。
単純に、こういう場に慣れていない様子だ。
「思えば、もっと早くに信じるべきでした。あなたは、他の人間とは違うと。私の炎に焼かれてもなお、敵意を示さなかったこと。あれで十分だというのに、私の目は曇ったままで……」
「焼かれた!?」
「ちょっとレイン君、それ、どういうこと!?」
「危ないこと……した、の?」
「ダメだよ」
みんなが、なにをしたんだ? というような感じでこちらを睨みつけてきた。
まずい。
一番隠しておきたかったことなんだけど、あっさりと暴露されてしまった。
まあ、エルフィンさんに悪気はないんだろうけど……
「とにかく」
「「「ごまかした」」」
「……と、とにかく」
みんなの追求の視線に気づかないフリをして、話を先に進める。
「なんていうか、その……気にしないでください。俺は俺で目的があって、それでエルフィンさん達の力を貸してほしかった。だから、色々と協力した。それだけですから。英雄とか、そんな風に呼ばれるほど偉いことはしていません」
「そのように自分で言えることこそが……」
「これ、エルフィンや」
称賛の言葉を重ねようとするエルフィンさんを、シグレさんが止める。
「レインが困っているさね。その辺にしておきなさい」
「しかし……」
「謝罪はした。レインはそれを受け入れた。それでいいのではないかね? 簡単な話、とお主は反発するかもしれんが……言ってしまうと、それも自尊心の話だろう? 不死鳥族の自尊心のために、また話をややこしくするつもりかい?」
「うぐっ」
痛いところを突かれたという感じで、エルフィンさんは苦い顔に。
対するシグレさんは、にこやかに笑うのみ。
やはり、歳を重ねているシグレさんには、口では敵わないのだろうか?
「……一つだけ、いいですか?」
エルフィンさんはこちらに視線を戻して、真面目な顔で問いかけてくる。
「私達は、あなたのことを下に見て、失礼な態度を取り続けてきました。いえ、失礼という言葉で収まらないほどのことも考え、実行していたと思います。それでも、あなたは私達を許すことができますか?」
「もちろん」
「……」
即答すると、エルフィンさんは目を丸くした。
「というか、許すなんて偉そうなことは言えないかな。なにがあったのか、それはまだ聞いていないけど……不死鳥族が人を敵視するのは、それだけのことが昔あったから。だから、謝るとしたら俺の方だよ。人がバカなことをして、すみません」
「あなたは……」
「その上で、厚かましいですが、こう言わせてください。力を貸してくれませんか?」
「……」
エルフィンさんが膝をついた。
フィーニアも膝をついた。
同席している他の不死鳥族達も膝をついた。
頭を下げたまま、凛とした声で言う。
「喜んで。私達の力、あなたに捧げましょう」
色々なことがあったけれど……
ようやく、不死鳥族の協力を得ることができた。
その事実に喜び、ついつい頬を緩めてしまう。
「そして……今代の勇者よ」
「私、ですか?」
自分に話が振られるとは思っていなかったらしく、シフォンが驚いた顔に。
「あなたにも助けられました。今後、困っていることがあれば、私達は力になると約束しましょう」
「え? でも、私大したことは……」
「私達のことを助けてくれました。それは、十分に大したことです」
「えっと……うん。どうなるかわからないけど、なにかある時は、お願いします」
エルフィンさんは、シフォンとも握手を交わした。
いつか、人間全員と握手をできるようになればいいのだけど……それは難しいかな。
でも、一人一人、少しずつ進んでいけばいいと思う。
「それで、私達は、まずはなにをすればいいのですか?」
「あ、その前になんですけど……」
俺は手を差し出した。
「これは?」
「これからよろしくおねがいします、っていう握手です」
「……」
「えっと……ダメですか?」
「……いいえ」
エルフィンさんは立ち上がり、優しく微笑む。
その笑顔を見て、俺は少し驚いた。
厳しいことを口にすることが多い人だけど……
こんな風に、優しい顔もできるんだな。
不死鳥族と和解することができなければ、この顔を見ることはできなかっただろう。
「どうしたのですか?」
「いえ、なんでもありません」
じっと見ていたら、不思議そうな顔をされてしまった。
いけない、いけない。
せっかく信頼を得ることができたんだ。
ここで変なことをして、全てを台無しにするようなことは避けないと。
「にゃー……レイン、無自覚にたらしこもうとしてる?」
「レイン君って、ああなのね」
後ろの方で、なにやら誤解が生じていた。
「今までの無礼、深く謝罪いたします。その上で、私達と友好を結んでいただけますか?」
「ええ、もちろん」
「よかった」
「よろしくおねがいします」
俺とエルフィンさんは笑顔で握手を交わした。
それは、子供がやる仲直りの握手に似ていて、心がきちんと繋がったような気がした。