作品タイトル不明
406話 狩り
ヒドリの群れを連れて、周囲を探索すること少し。
見つけた!
ダンジョン……不死鳥族の里を見つけた。
よかった。
とんでもなく遠くに飛ばされているという可能性もあったが、そうではなくて、意外と近くにいたみたいだ。
たぶん、歩いて一時間ほどだろう。
これならすぐに戻ることができる。
ん?
同化を解除しようとしたその時、不死鳥族が見えた。
一人、二人、三人……次々と姿を見せている。
三人一組となり、周囲に展開していく。
その様子はまるで狩りをしているかのようで……
いや。
実際に狩りをしているのだろう。
その対象は、おそらく……俺だ。
――――――――――
「あっ……お、おかえりなさい」
同化を解除して戻ると、フィーニアが出迎えてくれた。
なにかしら情報を掴んだのではないかと、その目には期待の色が。
「……不死鳥族の里を見つけたよ。ここから南に一時間ほど歩いたところだ」
「ほ、本当ですか!? よかったぁ……変なところに転移させられたわけじゃないんですね」
フィーニアは、ほっとした様子で帰り道が判明したことを喜んでいた。
しかし、俺は素直に喜べない。
このまま不死鳥族の里に戻っても、歓迎されるわけがない。
たぶん……向こうからしたら、俺はリーンを使いフィーニアを誘拐した極悪人。
頼みを聞いてもらえるわけがないし、それ以前に、先の様子を見る限り、すぐに攻撃をされてしまうだろう。
くそっ。
リーンとモニカが余計なことをしたせいで、色々なことがめちゃくちゃだ。
どうにかして挽回しないといけないが、その方法が思いつかない。
「あ、あの……ど、どうかしたんですか?」
「おふ?」
フィーニアとサクラが心配そうにこちらを見た。
焦燥感が表情に出ていたらしい。
「あー……」
隠していても仕方ないか。
俺は素直に、さきほど見た光景を二人に話した。
「そ、そんな……みんながレインさんを……」
フィーニアの顔が青ざめる。
ただ、そんな反応をするということは、少しは俺の心配をしてくれているのだろうか?
こんな時ではあるが、そのことがうれしい。
「えと、えと……ご、誤解だと説明しましょう! 私も、がんばって説明しますっ」
「たぶん、無理だろうな。まともに話を聞いてくれるとは思えない」
殺気立った様子で狩りを行う不死鳥族の姿を思い返した。
フィーニアが前に立ったとしても、話を聞いてくれるとは思えない。
強引に保護されるのがオチだろう。
「な、なら……そこの人間が悪いっていうことを告発するとか……」
「残念ながら、それを証明する術がないんだ」
俺とリーン達が裏で繋がっていると、不死鳥族は思い込んでいるだろう。
それを否定する材料がない。
また、性格の悪いリーンのことだ。
不死鳥族の前に連れて行ったら、俺をハメるために、ここぞとばかりに仲間であることをアピールするような言動をするかもしれない。
これ以上、余計なことをさせないために捕まえたものの……
俺の無実を証明するための材料としては、若干、弱いんだよな。
せめて、心の声を表に出すことができれば。
ソラとルナがいたのなら、あるいは可能だったかもしれない。
しかし、彼女達はイリスの治療を続けてもらわないといけない。
ないものねだりをしても仕方ないので、別の打開策を考えないと。
「……」
ふと、フィーニアがひどく真面目な顔をしていることに気がついた。
なにか考え込んでいる様子で、小さくつぶやいている。
「フィーニア?」
「……」
「えっと……おーい、フィーニア?」
「えっ!? あっ、ひゃ、ひゃい!?」
フィーニアがぴょんと飛び上がる。
驚かせてしまったみたいで、もうしわけない。
「どうかしたのか?」
「えっと、その……」
迷うように視線を揺らしている。
もしかして、なにか言いたいことがあるのかもしれない。
だとしたら、急かすことなく、ゆっくり待とう。
こういう子は焦らせたりしたらダメだ。
ちゃんと自分の言葉が出せるように、落ち着かせることが大事なはず。
「……そ、そのっ!」
待つこと少し。
しっかりと心が定まったらしく、フィーニアは俺をまっすぐに見つめた。
「わ、ワタシに任せてくれませんかっ!?」
「えっ、どういうことだ?」
「ワタシが、その……お母さんを説得して、み、みますっ」
その方法は考えていた。
長であるエルフィンさんを説得できれば、この騒動を収めることはできる。
ただ……こう言っては失礼なのだけど、フィーニアにそれが可能なのだろうか?
性格的に、とても難しいように思う。
そんな俺の考えを読んでいるかのように、フィーニアは必死な様子で言葉を重ねる。
「わ、ワタシなんかに任せるのは、す、すっごく不安だと思いますけど……でも、その……が、がんばりますからっ!」
「……どうして、そこまで?」
「だって……こんなの、おかしいです」
フィーニアが寂しそうな顔になる。
うつむいて、自分の服をぎゅうっと掴む。
「お母さんも里のみんなも……その、普段はすごく優しいんです。でも、今は怖くて……か、狩りをするなんて……そんなことは、ダメです。ダメなんです……早く終わらせないと」
「……そっか」
俺は自然と頬を緩ませて、ぽんっとフィーニアの頭を撫でる。
「ひゃっ!?」
「フィーニアは、優しい子なんだな」
「ふぇ……? ワタシが……優しい?」