軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

405話 加速度的に……

「うにゃー……これ、けっこう大変?」

「うん、大変かも」

牢に入れられているカナデとシフォンは危機感を覚えていた。

外の状況はわからない。

ただ、さきほどエルフィンが現れて、予想外のことを告げてきた。

レインは外部に仲間を潜ませておいたこと。

その仲間を使い、フィーニアを誘拐したこと。

不死鳥族を侮辱する行為に他ならないとして、断固として制裁を与えること。

寝耳に水であり、カナデとシフォンは驚くことしかできない。

「レイン君と私以外の人間って、誰のことだろう?」

「うにゃーん……イヤな予感がするんだよねえ。またモニカとかが現れたのかな?」

「モニカ?」

「あ、シフォンは知らないんだっけ。えっとね……」

カナデは、モニカの情報をシフォンと共有した。

「そんな騎士がいるなんて……ううん、元騎士? 王都との深い繋がりができたのはわりと最近だけど……幻影の力を持つ騎士がいるなんて、聞いたことないかな」

「隠していたのかもね。アイツ、すごく底意地の悪い性格をしてるっぽいから」

「うーん……この件が解決したら、王様に報告しておいた方がいいかも」

「解決できたら……だけどね」

見張りの不死鳥族が倍の数に増えていた。

時折、厳しい視線を向けられたり、すぐに処刑するべきだなどの物騒な言葉が飛んでくる。

無事に解決できる予感がしない。

カナデとシフォンは冷や汗を流した。

「カナデ……シフォンっ」

「あっ、ニーナ! それに、リファも」

ニーナとリファがやってきて、カナデが笑顔になる。

ただ、二人だけではなくて、シグレとエルフィンも一緒ということを知り、笑顔がひきつる。

エルフィンは、敵意たっぷりの視線をシフォンに向けて……

次いで、カナデに失望するような目を向ける。

「あなたは知っていたのですか?」

「にゃん? なんのこと?」

「あの人間が仲間を潜ませておいて、娘を誘拐する計画を立てていた、ということです」

「レインはそんなことしないよ! それ、なにかの間違いだと思うな」

「私がこの目で犯行の瞬間を見たのです。間違いはありません」

「でもでも、他に人間がいただけなんでしょ? ソイツがレインと繋がっているかなんて、どうしたらわかるの?」

「人間達と一緒に娘が消えた、それだけで証拠は十分でしょう。愚かで浅ましい人間のことです。おそらく、最初からフィーニアを狙っていたのでしょう」

「えっと……」

カナデは声を大にして否定したかった。

レインはそんなことはしない、きっとなにかの間違いだ。

しかし、エルフィンの目を見て声を出せなくなってしまう。

レインの仕業だと断定して……

愚かなことをしでかした人間に対する怒りがあった。

娘を奪われた怒りがあった。

たぶん、今はどんな言葉も届かない。

レインをここに連れてくるか……

あるいは、娘のフィーニアがいないと、まともに取り合ってくれないだろう。

そう直感したカナデは、否定する言葉を出せないでいた。

「あなたたちも牢に入りなさい」

ニーナとリファも牢に入れられてしまう。

それを見たシグレが、たしなめるように言う。

「のう、エルフィンや。その子達は最強種さね。同胞を牢に入れるというのは……」

「あの人間が連れてきたのですから、敵という可能性が非常に高いです。敵を自由に歩き回らせるわけにはいきません」

「むう……頑固者め」

エルフィンの強い意思を宿した言葉に、シグレは説得することを諦めた。

「あのー……」

シフォンが恐る恐る声を出す。

「シグレさんの言う通り、カナデさんやニーナちゃん、リファちゃんは最強種だから外に出してあげることはできませんか? 私は、このまま牢の中にいて構いませんから」

「……なにを企んでいるのですか?」

「え?」

シフォンからすれば、純粋にカナデ達のことを心配しての発言だ。

しかし、エルフィンはそうは捉えなかった。

「人間がそのようなことを言うなんて、ありえません。今の発言、なにか裏があるのでしょう? 私がそのような戯言を信じて、騙されるとでも?」

「い、いえ……別に私はなにも企んでいません。ただ、カナデさん達のことが……」

「……ふっ」

必死で弁解するシフォンを、エルフィンは鼻で笑う。

「そのような姿を見せれば、私が信じると? 情にほだされると? 見くびられたものですね。人間を信じるなど、二度とありえません。愚かで利己的で、自分のことしか考えることのできない、どうしようもない存在……そんな人間は敵でしかありません」

そう語るエルフィンからは、人間に対する強い敵意……いや。

それも超えて、憎しみさえ感じた。

エルフィンだけではない。

牢の見張りをしている不死鳥族達からも、同じような感情がうかがえる。

「これは……」

まずいかも……と、シフォンは心の中でつぶやいた。

もしもレースで自分達の力を示すことができていたら、あるいは認められていたかもしれない。

しかし、思わぬ乱入者によって事態は悪化。

認められるどころか、最大限に敵視されてしまうことに。

こちらは何も企んでいないのに、予期せぬ乱入者のせいで場が混乱してしまう。

疑念が疑念を呼び、敵視が敵視を招く。

糸が複雑に絡み合うように、元に戻すことは難しく……

いったい、どうすればいいのだろうか?

必死になって考えるシフォンだけど、解決策を思い浮かべることはできない。

思わず諦めさえ抱いてしまう。

「大丈夫だよ」

ただ、カナデは諦めていなかった。

暗い顔をするシフォンを見て、カナデが笑顔を向ける。

「カナデさんには、打開策が……?」

「ううん、なにも。私もどうしていいかわからないよ」

「それじゃあ……」

「でも、レインなら大丈夫」

そう言うカナデの言葉には力強い響きがあった。

「きっと、レインならなんとかしてくれるよ」

「ん……レイン、頼りに……なるよ」

「レインなら信頼できる」

ニーナとリファも同意見らしく、自身の主を信じて疑っていない様子だ。

信じる心……この絆こそが、彼女達の力の源かもしれない。

彼女達がいれば……そして、レインがいればなんとかなるのかもしれない。

シフォンはそんなことを思う。

「それで……これからどうするつもりさね?」

「そうですね……」

シグレの問いかけに、エルフィンはしばし考える。

そして、

「……狩りを行いましょう」

さらに事態が悪化する案を口にするのだった。