軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

287話 悪い知らせが二つ

……数日後。

精霊族の里……というよりは、アルさんとサーリャさまの会談、及び親睦会は日を跨いで続けられた。

アリオスが引き起こした一件について、サーリャさまは正式に謝罪。

どのような賠償もすると言い……

そのまっすぐな態度に心打たれたアルさんは、お咎めなしで問題を解決することにした。

さらにそれだけではなくて、アルさんとその他数人の個人に限られるが、精霊族と国との間で交流が結ばれることになった。

今はまだ小さな流れだけど……

いずれ、人と精霊族の間の交流が復活するかもしれない。

期待せずにはいられない。

なお、スズさんとミルアさんもサーリャさまのことを気に入ったらしく、個人で交流を結んでいた。

アルさんだけではなくて、スズさんとミルアさんとも繋がりを作るなんて……サーリャさまは、なかなかにすごい人なのかもしれない。

賢王の娘というだけのことはあった。

そして……

「では、みなさん、お世話になりました」

サーリャさまが王都に帰る日がやってきた。

精霊族が使用する転移門を使うため、誰かが同行しないといけないのだけど……

「では、妾達は行くぞ」

「レインさんも、またいつか」

アルさんと一緒に、サーリャさまは転移門の中に消えた。

アルさんが同行することになるなんて……

よほど気に入られたらしいな。

まあ、サーリャさまなので納得だ。

人を惹きつけるところがあるというか、そういう魅力にあふれている人だからな。

数時間後……

当初の目的を果たした俺達も精霊族の里を後にすることにした。

もうしばらく、観光ついでに滞在する予定のスズさんとミルアさんが見送りに来てくれる。

「カナデちゃん、元気にやるんですよ。床に落ちたものを食べてはダメですよ? 3秒ルールなんてありませんからね。あと、ちょっとは女の子らしいことを学んでもいいと思いますよ。そうすることで、レインさんにアピールを……」

「うにゃー!!! お母さん、色々と余計なお世話だからっ」

「あら、ふふふ」

二人は相変わらずの母娘だった。

「うぅうううっ、タニアちゃん。帰っちゃうの? お母さんと一緒にいてくれないの? そろそろ試練はやめにして、里に帰ってきてもいいんだよ? 大丈夫。反対する人がいたら、お母さんが全部なんとかしてあげるから!」

「えっと……またね、母さん」

「うわーんっ、タニアちゃんが冷たいよーっ!? 反抗期っ、反抗期なのっ!?」

タニアさんとミルアさんは……

まあ、らしいという別れをしていた。

タニアもミルアさんも、どちらも大変そうだなあ。

アルさんとソラとルナは、別れの挨拶はしていなかったが、いいのだろうか?

そのことが気になり、二人に尋ねてみると……

「母さんはああいう人なので、今朝、手軽に挨拶を済ませました」

「元気でやるのじゃぞ、の一言だけだったぞ。まあ、それはそれで気軽なので、特に問題はないがな」

……ということだった。

アルさんらしくあり、ソラとルナらしくもある気がした。

最後に長に挨拶をして、俺達は精霊族の里を後にした。

数日間の滞在で、その目的は暴走するアルさん達の説得というもの。

遊びに来たわけではないのだけど、でも、充実した時間を過ごすことができて……

今度、機会があれば、単純に遊びに来たいと思うのだった。

転移門を抜けて、迷いの森へ。

うさぎをテイムして出口に案内してもらい、街道に出て、ホライズンに続く道を歩く。

「……」

「にゃー? どうしたの、レイン? なんかぼーっとしているね」

「ん? ああ……いや、なんでも」

「ちょっと、ホントになんでもないわけ? あたしらに何か話さないといけないことがあるんじゃない?」

「それは……」

ないと言いかけて、ふと、思い直した。

一人で抱え込むのは悪い癖と言われているし、そのせいで問題が大きくなるかもしれない。

それに、みんなを信用していないみたいで、改めて考えるとどうかと思う。

素直に打ち明けることにするか。

「えっと、実は……悪い知らせが二つあるんだ」

「にゃあ、二つも……」

「しかも、両方悪い知らせなのね……」

二人がげんなりした顔になる。

そんな二人を見て、残りのメンバーも集まってきた。

歩きながら二つの情報をみんなで共有する。

「アリオスが投獄された、っていう話はしたよな?」

「うむ、聞いたぞ。勇者の資格を剥奪されたことも聞いたのだ」

「ざまあみろ、ですね。そのまま、一生を牢で過ごすといいと思いますよ」

ソラとルナは容赦なかった。

まあ、俺も似たような気持ちなので人のことは言えないが。

「そのアリオスなんだけど……脱獄したらしい」

「だつ……ごく?」

ニーナにとっては難しい言葉らしく、小首を傾げた。

そんなニーナに、ティナが朗らかに説明する。

「あのな、ニーナ。脱獄ってゆーのは、勝手に牢を抜け出す悪いことや」

「レインも……抜け出した、よ?」

「あはは、そうやな。それじゃあ、レインも悪い子やなー」

はっはっは、と笑い……

「なんやてっ!!!?」

我に返った様子で、大きな声をあげた。

他のみんなも目を丸くして驚いている。

「これ、公にはされていないことだから、内緒で頼む」

「う、うん。わかったよ」

「それにしても、まさか、あの勇者が脱獄してたなんて……びっくりね」

「サーリャさまから聞いたんだ。モニカっていう女騎士がいただろ? あいつが手引をして、アリオスを脱獄させたらしい」

モニカは王に仕える親衛隊であり、アリオスの監視役でもあった。

しかし、最初からアリオスと通じていたらしく……

刑が執行される前日、アリオスとその仲間達を連れて姿をくらませたらしい。

その話をすると、タニアが呆れたような顔になる。

「なによそれ。側近に裏切られるなんて、ダメダメじゃない。あの王様、ホントに大丈夫なわけ?」

「そう言うな。モニカは何年も仕えていたらしいから、そんな騎士が裏切るなんて、予想することは難しいさ。むしろ、何年もかけて王の懐に潜り込むモニカがすごいと思う。いや、モニカというよりは、その背後にいる連中か……?」

一度、モニカと顔を合わせた夜のことを思い返した。

あの時の会話から察するに、彼女の背後には誰かがいる。

個人なのか、それとも大規模な組織なのか。

それはわからないが……一筋縄ではいかない相手であることは間違いないだろう。

「っていうことは、あの勇者、また何かしてくるのかな?」

「どうだろうな……王都であれだけのことができたのは、勇者の威光のおかげだからな。それを失った今、何ができるのやら」

とはいえ、気をつけた方がいいな。

直接、顔を合わせて話したからわかるが、アリオスはだいぶおかしくなっていた。

元々傲慢なヤツではあったが、今はそれが生易しいくらいに思えるほどで……

こちらから動いた方がいいのかもしれない。

とはいえ、情報はゼロなのだが。

アルさん達も注意をして、調べてくれるらしいから……

今は、どこからか情報が現れるのを待つことしかできないだろう。

「面倒なことになっとるなあ……せや、レインの旦那。もう一つの悪い情報ってなんや?」

「それもアリオス絡みなんだけど、アイツ、真実の盾っていう伝説の装備を所持しているんだよ。それと、サーリャさまからの追加情報で、天の指輪っていう、同じく伝説の装備を手にしているらしい」

「資格が剥奪されたんやから、そんなの持ってても意味ないんやない?」

「資格は剥奪されても、勇者の血がなくなるわけじゃないからな。伝説の装備を使用することはできるよ」

「厄介やなあ……」

「で……投獄の際に没収された装備も消えていたらしい。順当に考えるなら、アリオス達が持ち出したんだろうな。あるいは、モニカか」

アリオスが所持していたのは伝説の装備だ。

保管庫に放置していました、なんてずさんな管理はしていない。

魔法も使い厳重に管理されていたはずだが……

ますます背後関係が気になる。

「アホに刃物とゆーか、手に負えない可能性が増えた、っていうことやな」

「どちらもまだ使いこなしていないみたいだけど……この先も、ずっとそうとは限らないからな。気をつけた方がいいと思う」

もっとも、具体的な対策は思い浮かばない。

どこに潜んでいるかわからないし、どんな行動に出るかもわからない。

なかなかに難しい問題だ。

「すぐにどうこうってことはないと思うけど、みんなも気をつけてほしい」

「ラニャー!」

アリオスが何か企んでいたとしても、思い通りにはさせない。

王都の事件は繰り返させない。

そう強く決意した。