作品タイトル不明
216話 いざ王都へ!
「……というわけで、昇格試験を受けようと思うんだけど、みんなはどう思う?」
あれからギルドを後にして、家に帰り……
Aランク昇格のことを考えて、考えて、考えて……結果、試験を受けてみようと判断した。
そして、みんなをリビングに集めて、その話をした。
「ふむ、Aランクか。ついに、我の活躍がワールドワイドになるのだな!」
「なぜそのような思考になるんですか? 一度、ルナの頭の中を見てみたいですね」
「ふふんっ、そう褒めるな。照れるぞ」
「妹の将来が本気で心配になってきました……」
ソラとルナはいつも通りで……
「Aランク、って……どれくらい、すごいのかな……?」
「んー……例えるなら、王様になるくらいやな」
「おー……レイン、王様……冠、かぶるの?」
「王様のポイント、そこなんや……」
やっぱり、ニーナとティナもいつも通りで……
「にゃー……質問!」
「どうして、Aランクを目指すの?」
カナデとタニアは、なんだかんだでしっかりものなので、理由を尋ねてきた。
「色々な恩恵を得られるから、今後やりやすくなるっていうのもあるんだけど……一番の理由は、発言力が増す、っていうところかな」
「にゃん? 発言力?」
「ナタリーさんは、Aランク冒険者には貴族並の権力が与えられる、って言っていたんだ」
俺の言葉に、ルナとソラが反応する。
「む? ということは、我がえらくなるのか? ふふんっ、全ての人々に我の威光を見せつけてやるぞ」
「威光ではなくて、恥を見せつけることになりそうですね」
「なんだとこの!? やるのか、なのだ!」
「知っていますか? 争いは同じレベルでしか発生しないのですよ? ソラとルナでは色々とレベルが違います」
「むきゃーーーっ、なのだ!!!」
「二人、とも……静かにしないと、ダメ……だよ?」
「「すみませんでした」」
ニーナに怒られて、ソラとルナはしゅんっとなっていた。
「あー……話を元に戻すけど、それなりの権力が与えられるっていうなら、発言力も増すだろう? 個人で活動する分にはなにも問題はないけど、イリスの時のように複数の冒険者が共同で活動する時は、上の命令に従うことになる。俺は……どうにも、自分の思ったように行動できないと不満を抱えるみたいだからな」
「レイン……まだ、引きずっているの?」
「いや、大丈夫だ」
心配そうな顔をするタニアに、笑みを見せた。
「タニアに説教されたからな。ちゃんと、前を向いているよ」
「そ、そう……それならいいんだけど」
「にゃー……気になる話」
カナデがジト目でタニアを見ていた。
タニアはそれに気が付かないフリをして、視線を横に向けていた。
「発言力が増せば上の命令に異を唱えることもできるし、独自行動もある程度は許されると思う」
「別に、そんなこと気にしなくていいんじゃないかな?」
「そういうわけにもいかないさ。イリスの時は、色々な要素が組み合わさって、結果オーライって形になったけど……本来なら、命令に背いて独断行動としたことで、罰を受けてもおかしくないからな」
「にゃるほど」
「だから、いざっていう時に自由に動けるように……そのために、Aランクを目指したい、って思ったんだ」
そこで一度言葉を切り、みんなの顔を見る。
みんな、じっと俺の話に耳を傾けていた。
「みんなはどう思う?」
「私はいいと思うよ。賛成!」
「あたしも賛成よ。つまらない命令に従う必要がなくなるっていうなら、いうことなしね」
まず最初に、カナデとタニアが賛成してくれた。
「我も問題ないと思うぞ。ふふんっ、我は威張りたいのだ!」
「ルナが偉くなるわけではありませんけどね。あ、ソラも賛成ですよ」
続けて、ルナとソラも賛成してくれた。
残りの二人は、
「ん……いいと、思うな」
「ええんやない? 他にも色々なメリットがあるんやろ? 昇格できるなら、しといて損はないと思うで」
そうすることが当たり前のように賛成してくれた。
「というか、なんで、わざわざウチらに聞いたん? レインの旦那がリーダーなんやから、一人で決めてもええのに」
「そうそう。誰も文句なんて言わないよ?」
ティナとカナデはそう言うけれど……
さすがに、それは自分勝手というものだろう。
みんながいたから、俺はここまで来ることができたわけで……
一人なら、途中で野垂れ死んでいたと思う。
それなのに、みんなの意見をないがしろにするようなことはできない。
……ということを話すと、みんなは、なぜか孫を見るような温かい目をした。
「な、なんだ? どうした? 俺、なにか変なことを言ったか?」
「んーん。レインはレインだなあ、って思っていたの。ね?」
「そうね」
カナデがよくわからないことを言って、それにみんなが頷いていた。
みんなの中で、俺はこういうものだ、という共通の認識があるみたいだけど……
いったい、どんな風に思われているのだろうか?
ちょっとだけ気になった。
――――――――――
Aランク昇格試験を受けると決めて……その三日後。
準備を終えた俺達は家を後にして、街の出口へ向かう。
街の出口には、たくさんの馬車が並んでいた。
パゴスに向かう際は、戦いに巻き込んでしまうかもしれない、という問題があったので馬車を使うことはできなかったけれど……
今回は違う。
昇格試験を受けるために王都に向かうので、危険なんてものはない。
なので、馬車を使うことにした。
「おーっ、馬車だ~♪」
カナデが目を輝かせて、尻尾をひょこひょこ動かしていた。
馬車が珍しいらしい。
子供のように馬車を見て回り、馬をなでていた。
猫と馬。
通じるものがあるのか、馬は気持ちよさそうに鳴いて、素直になでられていた。
「今回は馬車を使うのですか?」
「我は歩きでも構わぬぞ?」
「王都は遠いからな。徒歩だと二週間はかかるって聞いたぞ」
「やっぱり、馬車がいいのだ! 馬車サイコー!」
徒歩二週間と聞いて、ルナは馬車に抱きついた。
やっぱり、運動は苦手らしい。
「というか、この前みたいにタニアに変身してもらって、運んでもらえばいいのではないか?」
「あたしは馬車じゃないんだけど……」
「そんなことをしたら、大騒ぎになりますよ。ドラゴンが現れた、とかで魔法で撃墜されるのがオチですよ。そんなことも想像できないなんて、ルナの頭は空っぽなのですか」
「そうなのだ!」
「偉そうに認めた!?」
ソラとルナが漫才をしている間に、ニーナの腰を掴み、持ち上げて馬車に乗せる。
ニーナは背が低いから、自力じゃ乗り降りできないんだよな。
「あり、がと……レイン」
「ありがとやでー」
ニーナの頭の上に乗っている、人形バージョンのティナも、ちゃっかりと乗車していた。
ティナは魔力で飛べるから、誰かに持ち上げてもらう必要はないんだけど……
めんどうだから、と横着したんだろうなあ。
続けて、カナデとタニアが乗り込み……
最後にケンカを始めていたソラとルナを放り込んだ。
「おーっ、この馬車、座り心地がいいね」
「ホント。馬車ってお尻が痛いイメージしかなかったけど、そんなことないのね」
荷物を輸送するための馬車ではなくて、人を運ぶためのものなので、座りやすいようにクッションが設置されているなど、乗り心地に配慮されていた。
馬車を使ったとしても、王都まで5日ほどかかると言われている。
なので、疲れたりしないように、馬車はいいものを選んだ。
「さあ、いくのだ、ブラックサンダーよ! 我らを王都まで運ぶがいい!」
「あのー……ウチの子に、変な名前をつけないでほしいのですが……」
御者が困った顔になる。
「ルナ、落ち着きなさい。御者を困らせてはいけませんよ」
「む? なぜそういう結論になるのだ? 我はなにもしていないぞ」
「無自覚ですか」
「ルナって、時々おかしいよね」
ついにはカナデにまでキツイことを言われてしまうルナだった。
まあ、ルナからしてみれば、初めての馬車だからな。
物珍しさもあって、テンションが上がっているのだろう。
御者には申し訳ないが、目をつむってほしい。
「それじゃあ、出発してくれないか? 事前に話した通り、ルートは任せる」
「はい、わかりました」
御者が手綱を引いて、馬がゆっくりと歩き出した。
「おおっ、動いたのだ!」
「ルナ、そんなにはしゃがないでください、恥ずかしいですよ。あっ、意外と速いですね!」
「ソラもはしゃいでいるのだ……」
「仲良し、さん……」
少々騒がしいものの……
こうして、俺達は王都に向けて出発したのだった。