作品タイトル不明
1193話 覇竜
里に残り、『なにか』を探ること数日。
それまでなにも得ることができなかった。
小さな手がかりも、裏で蠢いているかもしれないものの欠片も突き止められていない。
ただ、今日……
初めて進展があった。
「グローヴェインから招待を受けた……?」
タニアとミルアさんが用事があると出かけて。
しばらくして戻ってきたら、そんな話をした。
「グローヴェインの父親が話をしたいらしいわ」
「父親……か。タニアは知っているのか?」
「知るわけないじゃない。あんなヤツの家族とか、道端の小石の欠片についている土くらいも興味ないわ」
ものすごく嫌っているな。
まあ、それも仕方ないけど。
「私は知っているよ」
ミルアさんが言う。
「グローヴェインと違って、ちょっとマシ……な竜だったはず、かなあ? うーん……」
「どんどん疑問形になっていくんですけど、それ、信じて大丈夫なんですか……?」
「ごめんね。自分で言っておいてなんだけど、やっぱり信用できないかも。あのグローヴェインの父親だし」
子は親に似る。
親は子に似る。
そういう言葉を考えると、色々と警戒した方がよさそうだ。
ただ……
「あえて誘いに乗るのもアリ……か?」
「え、マジで?」
「証拠なんてないんだけどさ。この嫌な感じというか、予感って、グローヴェインが関係していると思うんだよ」
タニアを手に入れようと企んで。
その目的は、タニアへの愛情ではなくて、地位を目的としたもの。
そういう企みをしているグローヴェインなら、さらにその裏で追加の悪巧みを企んでいてもおかしくなさそうだ。
その父親となれば、確実に関連性はあるだろう。
「なるほど。情報を得るために、あえて誘いに乗る、っていうわけね……でも、危険よ」
「うーん……それは大丈夫じゃないかな?」
タニアが苦い顔をして、でも、ミルアさんがそれを否定した。
「信用できないのは変わらないけどね。でも、こそこそと騙し討ちなんてこと、プライドが邪魔をして絶対しないと思うよ」
「プライドが高い人なんですか?」
「ものすごく」
とても真面目な顔で言われてしまった。
「『覇竜』なんて一部から呼ばれているくらいだからね」
「……覇竜……」
「それなのに卑怯な真似をしたら、一気に信頼を失っちゃうからねー。レインくんを騙し討ちすることで、それ以上のメリットがあるならもしかして、かもだけど……うーん。さすがに、それはないかな?」
「なるほど」
俺は、グローヴェインの父親のことはまったく知らない。
でも、ミルアさんはよく知っているだろうし、持つ情報量は桁違いだろう。
そのミルアさんが大丈夫というのなら、大丈夫なのだろう。
もちろん油断はできないから、しっかりと準備をする必要はあるけど。
――――――――――
「よくぞ参られた、英雄殿」
後日。
招待に応じて顔を合わせることになったのだけど……
「我が名は、ランデリオン。以後、よろしく頼む」
「はじめまして、レイン・シュラウドです。よろしくお願いします」
意外、と言うと失礼かもしれないが……
すごくまともな感じの人だ。
いや、竜か。
彼の住まう家ではなくて、来客用の洞窟に案内された。
洞窟といっても人間の来訪を想定しているらしく、また、自身が人間に変身することも想定しているらしく……
調度品などの大きさは全て人間サイズ。
観葉植物なども飾られていて、落ち着いた雰囲気だ。
こちらを気遣ってくれているように見えるけど……
穿った見方をすれば、油断させようとしている、とも考えられる。
……どちらだ?
「まずは……タニア殿、すまぬ」
同席するタニアに、人間に変身しているランデリオンが頭を下げた。
「愚息……グローヴェインがとんでもない迷惑をかけたようだ。息子に代わり、謝罪しよう」
「……」
「タニア殿?」
「あ……いえ、まあ……うん。謝罪を受け取るわ」
素直に謝罪されるとは思っていなかったらしく、タニアが驚いていた。
ふむ?
第一印象はしっかりとした人なのだけど……
さて、どうなるか。