軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1188話 借金の理由

「わふぅ……」

「ひぃん……」

ややあって……

サクラとフィーニアが精神的ダメージから回復して、目を覚ました。

コハネが用意した紅茶を飲んで落ち着いて。

それから改めて借金の理由を話す。

「わ、ワタシ達、見聞を広げるために旅をしていたんですけど……あ、でもでも、そろそろレインさんやみんなのところに帰りたいな、って思っていて……あ、でもでも、けっこう路銀が少なくなっていて……あ、でもでも、ワタシ達なら特に馬車に乗らなくても自力で移動することができて……あ、でもでも、やっぱり多少は疲れて……」

「長い」

「ぴぃ!?」

「七文字でまとめよ」

「だ、騙されました!」

エーデルワイスがぴしゃりと言い、フィーニアは先輩にしごかれる新兵のように慌てて答えた。

エーデルワイスは満足そうに頷く。

「うむ、それでいい。フィーニアよ、そなたはもっと胸を張れ。しっかりと主張しろ。強き最強種であると同時に、良い女なのだからな」

「は、はぃ……エーデルワイスさまぁ……」

「「「フィーニア!?」」」

フィーニアが妙な性癖に目覚めそうになり、カナデ達が慌てた。

それはともかく。

サクラが引き継いで、話の続きをする。

「ぼく達、馬車に乗ることにしたの。でもでも、お金が足りなかったからお仕事をしようとして。それで、すごく良いお仕事がある、って誘われたんだけど……」

「そ、その……実はそこ、え、え……えっち、な……ところで……」

「「「えぇ!?」」」

今日、何度目になるかわからないカナデ達の驚きの声が響いた。

サクラとフィーニアは、騙されて大人の店で働かされそうになったという。

最強種を相手に、そのような店で働かせようとする経営者の胆力はなかなかのものだ。

普通なら、そのような命知らずな真似はできない。

とはいえ、最強種がいる、となればこれ以上ないほどの『売り』になる。

リスクは大きいがリターンも大きい。

「そ、そそそ、そんなところで働いちゃったの!?」

「い、いえいえいえいえ!? ま、ままま、まさか!? サクラちゃんはともかく、わ、ワタシなんて需要ないでしょうし……そ、そういう問題じゃないですよね!? もちろん、途中で気づいて断りました!」

ほっと、安堵の吐息がこぼれた。

「た、ただ、すごくしつこくて、一度了承したんだから責任を果たせとか言われてしまって……」

「ぼく達、むーーー! ってなって、どかばーん! ってした!」

「どかばーん……?」

「なにかの暗号っすかね……?」

「どかばーん……つまり、サクラさまとフィーニアさまが、その悪徳商人を成敗したのではないかと」

「……そなた、今のやりとりだけで、よくサクラの言いたいことが理解できたな?」

「わたくしには翻訳機能も搭載されています故」

そのような問題だろうか?

エーデルワイスは疑問に思ったけれど、深く考えないことにした。

それが人生をのんびりと過ごすコツである。

「でも、それがどうして借金を背負うことになるっすか?」

「あぅ……その悪い商人さんが、違法だ、不当な暴力だ、って怒っちゃいまして……」

「ぼく達、すごいたくさんのお金を払わないといけなくなっちゃった……」

しょぼん、と肩を落とすフィーニアとサクラ。

一方のカナデ達は、なるほど、と状況を理解した。

その悪徳商人は、まだサクラとフィーニアのことを諦めていないのだろう。

そこで、あれこれと屁理屈をこねて二人に借金を背負わせた。

額はまだ聞いていないが、サクラとフィーニアの様子を見る限り、普通に働いていてはとても返せない額だろう。

数十年、がんばればなんとかなるかもしれない。

しかし、相手はそこまで待つつもりはない。

適当なタイミングを見て、サクラとフィーニアならもっと稼げるところがある。

借金があるんだから断るなんてことはしないよな?

と、言葉巧みに誘導するつもりなのだろう。

まさに悪徳商人である。

「よし、ぶち殴るよ!」

カナデが怒気を迸らせつつ、拳をパキパキと鳴らした。

仲間が罠にハメられて。

つまらない欲のために犠牲にされようとしている。

許せるわけがない。

カナデはキレていた。

ついでに、ライハもキレていた。

「久しぶりにキレちまったっす……その悪徳商人とやらを、表に出すっす」

バチバチ、と軽く放電していた。

サクラとフィーニアは大事な仲間で。

そして、実の姉妹のように深い絆を持つ。

黙っていられることなどできようか?

「お待ちください」

「にゃ、コハネ?」

「その悪徳商人がここまでの無法をしているのは、それなりの正当性を確保しているのでしょう。法律を盾にして、あるいは、街の有力者を味方につけているなど……そういう敵に立ち向かうためには、それなりの準備が必要と具申いたします」

「それは……」

「むぅ……」

カナデとライハは渋い顔に。

コハネの言うことはもっともだ。

たとえば、サクラとフィーニアが借金に関する誓約書などを書かされていたら?

暴れた時、悪徳商人の財産を壊していたら?

その時、法は悪徳商人の味方をする。

被害者のはずのサクラとフィーニアを逆に追い詰めることになり。

そして、カナデ達も新しい悪として認定されて……

また、新しい『商品』となることだろう。

なんて厄介な。

悪徳商人は大した力を持たないだろうが、社会の影響力というものをしっかりと理解していて、それを最大限に活用している様子。

これを打ち破るとなると、なかなか難しいだろう。

……と、カナデ達は迷うのだけど。

ただ一人、まったく迷っていない者がいた。

「なに、問題はない。全て私に任せるがよい」

迷っていない者……

それは、魔王エーデルワイスだ。