作品タイトル不明
1093話 秘密の会合
「やれやれ。僕にはさっさと帰れと言っておきながら、キミは、レインと楽しそうに話をして友好を育んできたのかい?」
「だってさー、仕方ないじゃん? ゼクスが暴れたから、あれは本意じゃないんだよ、って伝えて誤解を解かないといけないじゃん? 話は必須じゃん?」
なんてことのない宿の一室。
そこに、ゼクスとフィアの姿があった。
派手な大神官の服ではなくて、シンプルな服装だ。
顔もフードで隠している。
さすがに自分達が目立つことは理解しているため、簡単に変装をしていた。
「おかげで、そこそこは私の言うこと、信じてくれたと思うよ?」
「……そのために、ハーフということをバラした、というのかい?」
「誠意だって、誠意。信じてもらうには、そこそこの秘密を教えた方がいいっしょ」
「はぁ……キミはマイペースで、独断が過ぎる。キミと組まされると、いつもこうだ。僕の頭痛と胃痛の種になっていることを自覚してほしいね」
「頭と胃が痛いの? 薬、持ってこようか?」
「……まったく自覚していないようだね」
ゼクスは深いため息をこぼした。
気持ちを切り替えて、話を続ける。
「……やってしまったことは仕方ない」
第三者の声が響いた。
しかし、姿は見当たらない。
闇に潜み、表に出てくることはない。
「ジーベンか」
「やっほー、ひさしぶり? そうでもないか」
「あまり知られたくない情報ではあるが、しかし、いずれ知られていたこと……そう考えて、気にしないことにしようではないか」
「やれやれ、ジーベンはフィアに甘いね。いや、全員が甘いような?」
「私って、愛されキャラだからねー」
「まったく、その口は……」
反省しないフィアに、ゼクスはさらにため息をこぼした。
とはいえ、いつまでも気にしても仕方ない。
やってしまったことは仕方ない。
それはその通りなので、気持ちを切り替えて話を進める。
「それよりも、各自の進捗を聞いておこうか」
「私は問題なしかな? いい感じ。順調に信者が増えているよ」
「数値で示せ」
「めんどいなあ……はいはい。目標数は達成しているよ」
「よくやった。祈りの数だけ力となり、邪神の復活に近づいていく。もっと数を増やせ」
「はいはーい」
大きな戦いが終わり、世界は安定した。
……したように見えた。
しかし、実際は邪教徒が増えているなど、問題は大きい。
表は安定しているように見えて、裏では動乱の兆し。
平和は遠い。
だからこそ彼らは、真の平和を得るために、手段を選ぶことなく活動を続けている。
「ゼクスは、順調に進んでいるか?」
「少し前まではね」
「どういう意味だ?」
「ちょっとレインに邪魔されちゃったからね。信者も少し減ったから、その分、多少の影響は出てしまうかな?」
「……あの者は、やはり我らの障害となるか」
苛立たしそうな声。
ただ、それはすぐに収まる。
「影響はどれくらいになる?」
「もう調整したから、大した問題じゃないさ。数日後には、試しに召喚することができるよ」
「ならばよい」
「まったく……ジーベンのリーダー面も勘弁してほしいね。そうやって、偉そうにされたら、僕達のやる気がなくなってしまうよ」
「私は別に気にしてないけどねー」
「私は調整役だ。それが必要となる、お前達の方に問題があると知れ」
「へぇ……もしかして、僕にケンカを売っている?」
ゼクスは不敵な笑みを浮かべた。
手を握ったり開いたりして。
そこに炎が生まれる。
魔法ではない。
個人が持つ、特殊な能力だ。
「あー、はいはい。そういう身内で揉めるの止めようね? ってか、何回、私に仲裁させるのさ。本当の苦労人は私だと思うよ」
「……まったく」
ゼクスは舌打ちをしつつも、炎を消した。
「ま、心配はしなくていいよ。実験については、問題なく行うことができる。まあ、成功か失敗か、どちらに転ぶか、それはなんとも言えないけどね」
「任せる」
「ああ、任せてくれ……ジーベン?」
問いかけるものの、返事はない。
すでに彼の気配は消えていた。
「本当に神出鬼没だな」
「それが彼の能力だからねー。あたしも、ああいうのが欲しかったかな? いや、欲しくないか。うーん、迷う。どう思う?」
「まあ、好きに悩んでくれ。僕は行くよ」
ゼクスは席を立ち、部屋を出ようとして。
扉の前で足を止めて、フィアを振り返る。
「少し聞いておきたいのだけど……キミも、レインに興味を持ったのかい?」
信頼を得るために情報を渡す。
一見すると理に叶った行為ではあるが、フィアの場合、それは適用されない。
彼女はひどく気まぐれだ。
そうすることが正しい行いだとしても、気が乗らない、という理由で正反対の行いをすることがある。
というか、そうすることの方が多い。
そんなフィアが、レインに対してはわりと素直に行動していた。
興味。
あるいは好意を抱いたのだろう。
「まだ、なんとなくっていう段階だけど……仲良くなれそうだな、って」
「へぇ……まあ、いいさ。キミの行動を縛るつもりはないが、ただ……」
ゼクスは、笑いながら言う。
「彼のことは、僕も興味がある。だから、今までのように壊さないでくれよ?」