軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1088話 邪教の目的

「うん、これはいけるね! 甘いだけじゃなくて、ほどよい酸味……いちごかな? それと、うーん……パイナップル? 二つの果物がいい感じにマッチしているから、甘さがくどくない。むしろ、甘さだけじゃなくて旨味を引き出している! あー……やば、まじ幸せぇ♪ 私、このままとろけちゃいそう」

とあるカフェ。

俺達は、なにがあってもいいようにオープンテラスを利用したのだけど……

そこで、フィアはとても幸せそうな顔でフルーツパフェを食べていた。

……この子のメンタルは鋼鉄なのか?

相手のことはよく知らない。

今までの反応からすると、たぶん、相手も俺のことを詳しくは知らない。

ただ、敵同士であることは考えるまでもない。

それなのに、一緒にカフェに行くなんて。

しかも、幸せそうにパフェを食べるなんて。

普通に考えたらありえないことだ。

「んにゃ~♪ このお魚パフェ、最高だよぉ……はぁん、とろけちゃう」

……カナデも幸せそうにパフェを食べていた。

いや、まあ。

こうして、必要以上に敵対的にならず、冷静にいられることは大事なのだけど。

それでも、もうちょっと緊張感を持ってほしい。

とはいえ、そんなカナデのおかげで、逆に落ち着くことができた。

香りのいい紅茶を一口飲んで。

静かに問いかける。

「まず、確認をしたいが……というか、自己紹介をしようか」

「あ、そだね。なんとなくはお互いにわかっていると思うけど、そういうところ、ちゃんとしておいた方がいいっしょ」

フィアはパフェを食べる手を止めて、軽く頭を下げた。

その所作はとても洗練されたもので、綺麗だ。

「ジ・ゼセル教の大神官が一人。序列四位のフィアよ。そうね……簡単に言うのなら、あなた達が邪教徒と呼んでいるところの幹部、って感じ」

「……レイン・シュラウド。このホライズンを拠点にする冒険者で、まあ……色々とあって、絆の英雄とか言われている」

「カナデだよ。見ての通り、猫霊族!」

カナデはお魚パフェを食べつつ、言う。

というか、そのパフェは美味しいのか……?

魚の切り身と生クリームとか、大惨事でしかないと思うんだけど。

「自己紹介はこんなところにして……まず最初に、謝っておこうかな?」

「謝る?」

「ゼクスがやりすぎたこと」

ホライズンの騎士団支部を燃やしたことか?

「あなた達に捕まった信者は、簡単に口を開いて、ぽろぽろと情報を漏らしちゃうからねー。それは、ちょーーーいまずい。だから、ゼクスに奪い返すようにお願いしておいたんだけど……」

「あいつは、騎士団支部を燃やしたらしいが?」

「そこはね、うん……ホントごめんなさい」

素直な謝罪。

調子が狂うな……

俺の中の邪教徒のイメージは、邪神を復活させようとする、倫理観も常識も持たない、頭のおかしい連中というものだったのだけど。

でも、フィアは、わりと常識人に見えた。

……まあ。

騎士団支部を燃やして。

捕らえた邪教徒も燃やしたと聞いて、やっちゃったかー、とペットの粗相を見たようなだけの反応だったのは、気になるところではあるが。

彼女を見た目通りに判断したらいけないな。

見た目はともかく、その中身は恐ろしい存在なのだろう。

「今、私達の邪魔をされるのは困るっしょ。だから、ゼクスも過激な行動に出ちゃったと思うんだよねー」

「……邪魔をされたくないのは、邪神を復活させたいからなのか?」

「そそ。邪神ジ・ゼセル……アレを復活させることが、私達の大きな目的だからね」

……今、邪神を『アレ』呼ばわりした?

俺の反応を見て、フィアがくすりと笑う。

「私達は、確かに邪神を崇拝しているけど、でも、絶対服従ていうわけじゃない。邪神に血肉だけじゃなくて魂も全て捧げていい……なんて、バカなことは考えていないし」

「幹部とは思えない言葉だな」

「だって、そうっしょ? 誰かを信じる、信仰するってのは、結局のところ、自分が幸せになりたいから。助けてほしいから。それなのに、不幸になるような犠牲になるようなこと、容認できるわけないじゃん。そんなものを受け入れるとしたら、それはもう信仰じゃないよ。ただの盲信」

「なら、あなた達は邪神を復活させて、なにをしようとしているの? そんなことになれば邪神が大暴れして、結局、自分達も不幸になると思うんだけど」

カナデが鋭いところに切り込んだ。

ただ、その問いかけは予想していたらしい。

フィアは落ち着いていて、微笑みと共に応える。

「世界平和」

「……にゃん?」

「だから、世界平和だって。私達の目的は邪神を復活させること……でも、それが最大の目的じゃないっしょ。邪神を利用することで、この世界に恒久的かつ、絶対的な平和をもたらす……それが目的だよん♪」

「「……」」

俺とカナデ、驚いて言葉が出てこない。

予想の斜め上をいく答えだ。

まさか、こんなことを言われてしまうなんて。

冗談とかごまかされているとか、そういう可能性を考えたものの、フィアは態度は軽いが、しかし、嘘を吐いている様子はない。

わりと真面目にこちらの質問に答えている様子。

「本気……なのか?」

「本気、本気。ってか、そういう真面目な大義がないと、信者なんて集まらないっしょ? 邪神を復活させて世界を滅ぼしますー。あるいは、世界征服しますー。とか、そんな名目でついてくるやつなんて、やばやばじゃん」

「それは、まあ……」

「ま、私達は、目的のために犠牲なんて気にしないっていう過激なところはあるから、そこそこ頭のおかしい連中は多いけどね。あっはっは」

自虐ギャグらしく、フィアが笑う。

こちらとしては、まったく笑えない内容なのだけど。

「っていうことを知っておいてほしくてねー。こうして、お茶に誘ったわけ」

「……」

「あと、個人的にキミに興味があるから、っていうのも理由かな?」

「にゃっ……!?」

カナデが、警戒するように尻尾を立てた。

そこで警戒するのか……?

「レイン、この人は捕まえるべきだよ! 危険だよ!」

「危険、っていうのは賛成だけど……」

「嫌われているなー、私。仕方ないけどね。でも……」

フィアは、にっこりと笑いつつ言う。

「ある意味で、同胞の私を捕まえるとか、そういう物騒な話はやめない?」