作品タイトル不明
1090話 ルーツ
「ある意味で同胞……?」
どういう意味だ?
その言葉をそのまま捉えるのなら……
「にゃ……もしかして、あなたも最強種?」
「半分正解で、半分外れ」
「えっ、半分正解なの!? 私、ちょっと冗談というか、適当なことを言っただけなのに!」
カナデが驚いていた。
俺も驚いていた。
半分正解という意味はわからないけど……
ただ、フィアが最強種のようには見えない。
基本、最強種は、人間とどこかで異なる外見を持つ。
カナデなら、猫耳と尻尾。
リファなら角といった感じで。
ソラとルナ。
イリスやフィーニアは人間とほとんど変わらないけど……
いざという時は羽を広げている。
フィアも、今は人間と変わらない姿だけど、仮のものなのだろうか?
戦闘時になると、また別の姿になるのだろうか?
「にゃ……にゃにゃにゃ???」
「ありゃ。ごめんね。別に、意味深なこと言って困らせるつもりはなかったんだよねー。でもさ、ほら。ちょっともったいぶった方が、なんか、かっこいいじゃん? あは♪」
「話すつもりはない、と?」
「んや。別に隠しているわけじゃないからね。あと、キミ達には、私達のことは、できるだけ知っておいてほしいんだよねー。方針は合わないかもだけど、最終的な目的は同じっていうことで、互いに邪魔はしない、ってのが理想的だし。あ、このこと、勇者とかにも伝えておいてほしいかな」
シフォンのことも知っているのか。
「で、話を戻すけど、ある意味で同胞っていうのは、そのまんまの意味。私、半分は最強種なんだよねー」
「にゃん? そんな感じ、ぜんぜんしないけど……というか、人間にしか見えない?」
「まさか……」
はっと、とある考えに辿り着いた。
人間にしか見えないけど。
でも、特殊な能力を持っている。
そういう子がすぐ近くにいるじゃないか。
「……人間と魔族のハーフなのか?」
「正解♪」
あっさりと肯定されてしまう。
あまりにもあっさりとしているものだから、拍子抜けしてしまうほどだ。
「ルリちゃふが!?」
カナデがルリのことを口にしようとしたので、慌てて口を塞いだ。
フィアは、今のところ明確に敵対はしていないものの、その思想や立場を考えると、将来的にほぼほぼ確実に敵対することになる。
そんな相手に、似た立場にいるルリのことを教えたくない。
いずれ知られるのかもしれないが……
今は、隠しておいた方がいいはずだ。
「瑠璃茶? なにそれ、美味しい?」
「気にしないでくれ。カナデは食いしん坊だから、ちょくちょく食べ物や飲み物のことをぽろっと口にしてしまうんだ」
「なんか酷い設定を足された!?」
そこでショックを受けるのなら、もう少し腹芸というものを覚えてほしい。
でも、まあ。
まっすぐで素直なところがカナデのいいところだから、やっぱり、このままでいいか。
「あまり驚かないんだね。私達のことを話すと、けっこう驚かれるんだけど」
「前の戦いの時とかに、色々と聞いたからな。実際に目にするのは初めてだけど」
「なるほど。勇者や神様なら知っててもおかしくないか」
ラインハルトとゼロのことも知っている……?
いったい、どれだけの情報網を持っているんだ。
「ま、そんなわけで、私達は……いや、うーん? 私個人としては、キミ達と争うつもりはないんだよねー。さっき、ゼクスが暴れようとしたのを止めたのも、私なりの誠意かな?」
「仲間は暴れる、って聞こえるが?」
「そこ、そこなんだよねー」
やれやれという感じでフィアがため息をこぼす。
「私達も一枚岩じゃなくて、色々とあるんだよねー。ちょい過激な子もいるから、なかなかどうして……」
「それじゃあ、争わない、っていうのは無理じゃないか? 言っておくが、さっきのような暴挙を繰り返すつもりなら、俺は、絶対に止めるぞ」
「それは、うん。もちろん、好きにしていいよ。さすがに、黙って殴られてね? なんて言えるほど、私も常識を捨ててないつもりだし。ただ、ダメージがでかそうだし、なんだかんだわかってもらえるところもあると思うから、私としては、戦いたくない感じ。他の大神官……幹部の数人も、理解を示してくれると思うよ」
ただの雑談というわけじゃなくて、停戦交渉のようなものか。
でも、それにしてはあまりにも適当すぎる。
普通は、もっと詳細を詰めて、相手が納得できるだけの材料を示すのでは?
……いや。
適当なのは俺達も同じか。
邪教徒のことを知ったのは、つい最近。
その実態や詳細は知らないまま。
単純に、倒すべき敵と考えていたけど……
しかし、フィアの話を信じるのなら、なにも知らないまま倒してしまってもいいものか、迷うところがある。
「そうだな……俺達は、互いを知る必要があるのかもしれないな」
「おっ、いいこと言うねー。そうそう、その通り。知ってほしいかなー、って思うよん。その結果、余計にこじれるかもしれないけど……逆に、仲良くなれるかもしれないしねー」
「うーん……そう言われると、あまり否定はできないよね。私達、そういうこと、何度も経験してきたし」
ただし。
「これは、俺個人で決められる話じゃないな」
「そだね。ギルドとか国とかに報告をあげておいてくれると嬉しいかな? 答えが出るまでは、私の方で、できる限り仲間達を抑えておくから。ま、中には無視して暴走するヤツも出てくるだろうけど。あっはっは」
笑い事じゃないんだけどな。
「まあ、私が言いたいことは簡単。邪教徒って呼ばれていて、邪神の復活を目的としていることは確かだけど、それは過程。最終的な目的は、世界平和。過激な手段を取ることは多いけど、できるなら対立はしたくない……ってこと」
「どうして、それを伝えようと?」
「んー……キミなら、なんとなく、話を聞いてくれそうな気がしてね。信頼を得られるか、それはまったく別だけど、考えてくれそうな気はしたかな」
「ちゃんと話を聞く。それがレインの良いところだからね! にゃふん!」
カナデが自分のことのように嬉しそうに言う。
そこまで誇らしそうにしなくても、と苦笑してしまう。
「そんなわけで、私はこの辺りで帰ろうかな?」
フィアは立ち上がり、テーブルの上に銀貨を置いた。
おごられるつもりはない。
今、この場で、小さなものだとしても貸し借りを作るつもりはない、ということか?
「あっ、ちょっとまって! ハーフっていうのは、どういうこと!?」
「詳しいことは秘密♪」
カナデの問いかけに応えることなく、フィアは微笑み……
そして、ゼクスの時と同じように、ふっと消えてしまうのだった。