作品タイトル不明
1077話 自分で考えるからこそ力となる
「……」
ライハは無言のまま。
その状態で、どんどん攻撃が苛烈になっていく。
雷撃は威力が増して、空を這う大蛇のよう。
一本だけではなくて、同時に複数が放たれる。
外れた雷撃が近くの岩を粉々に砕いた。
また、木々をまとめでなぎ倒した。
恐ろしい威力だ。
もしも直撃したら、一瞬で全身が炭になるかもしれない。
ただ……
「……あまり怖くないな」
威力は抜群。
ただ、狙いが甘い。
適当に雷をばらまいているだけ。
しっかりと様子を見て、そこから回避をしても十分に間に合う。
「……なんか、レインが変態的な機動をしているぞ?」
「……同じ人間とは思えませんねー」
「……あいつ、いつの間にあんな無茶苦茶なことができるようになったんだ?」
「……まあ、レイン君だからね」
そんな声が聞こえてきたような?
うん。
今は気にしない。
「……」
変わらず、ライハは攻撃を続けていた。
雷をばらまいて、周囲にあるものをでたらめに破壊していく。
巻き込まれることを恐れているのか、邪教徒が彼女に近づくことはない。
……ということは、ライハは、連中の言う通りに動いていない、ということか?
洗脳されているのか。
それとも、操られているのか。
そこはよくわからないのだけど、邪教徒の完全な言いなり、というわけじゃなさそうだ。
「よし、やるか」
ひとまず、ライハがどんな状況に置かれているのか、ある程度の推測を立てることができた。
当たり前の話だけど、このまま放置するわけにはいかない。
被害が拡大してしまうし……
なによりも、ライハを助けないと。
そのために、俺は、すぐ行動に移ることにした。
「いくぞ、ライハ」
「……」
やはり、彼女はなにも反応を示さない。
それを寂しく思いつつ、俺は地面を蹴り、前に出た。
俺を迎撃するため、ライハが雷を放つ。
視界を埋め尽くすかのような雷撃の嵐。
飲み込まれたらひとたまりもないだろう。
……なので、避けることにした。
しっかりと地面を踏んで、跳躍。
ティナと契約したことで得た重力を操作する能力を使い、宙で反転。
地に戻ったところで、地面すれすれを這うようにして駆けて。
今度は、ステップを踏み舞うように横に跳んで。
立体的な機動でライハを翻弄する。
「……」
ライハの表情は変わらないものの、攻撃の頻度、威力は増していた。
表に出ていないだけで苛立ちを覚えているのかもしれない。
でも、悪いな。
攻撃に当たるつもりはない。
というか、
「ライハのやつ……日頃の鍛錬をサボっていたな?」
操られていることを考慮しても、攻撃の精度が低い。
狙いが適当で、簡単に先を読むことができた。
以前のライハは、もっと苛烈で優れた攻撃をしていたのだけど……うーん。
ここしばらく平和だったから、鈍っているみたいだ。
なにがあるかわからないから、最低限の鍛錬は欠かさないように言っていたのだけど。
問題が解決したら、またエーデルワイスに稽古をつけてもらった方がいいかな?
……なんて。
俺は、そんな余裕を抱えていた。
ライハを、決して侮っているわけじゃない。
普通の人からしたら、どうしようもならないほどの絶対的な脅威だ。
ただ……
俺は、ちょっと変わっているらしく。
それに、魔王であるエーデルワイスとか。
世界の管理者のような存在のコハネに稽古をつけてもらったので。
操られている状態で、まともな思考ができず、戦うだけの人形になったライハに負ける気なんて欠片もしない。
考えて戦う、というのは一番大事なことだ。
力よりも魔力よりも。
それよりも、きちんとした戦術が最優先されるのが常。
ライハは操られているため、戦術を組み立てることができず、本来の力が発揮できていない。
……まあ、鍛錬をサボっていたであろう影響もあるけど。
なので、付け入る隙はたくさん。
いくらでも戦い方はある。
「そろそろ終わりにするぞ」
もしかしたら説得できるかもしれない、と声をかけ続けていたのだけど……
しかし、ライハに俺の言葉が届くことはない。
なら、少々手荒になってしまうが、ライハを止めよう。
そう判断した俺は、
「ブースト」
自身に、身体能力を上昇させる魔法をかけた。
ぐん! と加速すると、周囲の景色が一気に後ろに流れていく。
そのままの勢いでライハの懐に潜り込んで、
「悪い、少し眠っていてくれ」
「っ……!?」
腹部に拳を打ち込む。
手加減はしているものの、急所に対する一撃だ。
耐えられるものではなくて、ライハはびくんと震えて……
そのまま意識を失い、俺の腕の中に倒れてきた。