作品タイトル不明
1071話 妙な五人組
「じゃあ、出発しようか。がんばるよ、おー!」
ホライズンの入り口。
これからの旅をがんばろう、という感じで、シフォンが元気よく言う。
意気込むのはいいのだけど……
「驚いたな……まさか、アクスも一緒だなんて」
「おう! レインと組むのは、かなり久しぶりだな」
待ち合わせ場所に行くと、アクスの姿もあって……
シフォン達から、彼も一緒ということを聞かされたのだ。
「また、よろしく頼むぜ!」
「ああ、こちらこそ。アクスとまたパーティーを組めるなんて、嬉しいよ」
「へへっ、嬉しいことを言ってくれるな」
「ただ、家はいいのか……?」
セルと子供のために、アクスは、冒険者を休んでいたはずなのだけど。
「くぅ……! 本当は、愛する妻と子供のために家にいたいがな! 愛する妻と子供のために!!!」
二人が結婚してから、若干、アクスがめんどくさくなったような気がする。
「ただ、自分のことだけ考えるようなヤツにはなりたくないだろ? 今回の件、色々と根深そうだし、人手が必要なはずだ。なら、俺が力になってやるさ」
「……アクス……」
「それに、久しぶりに体を動かしておかないとな。店ばかりじゃあ、さすがに体が鈍る」
「……と、いうわけで。アクスさんにも声をかけて、手伝ってもらうことにしたの」
「貴重なAランクですからねー。とても頼りにさせていただきますぅ」
「おー、ショコラの代わりにタンクを頼むぞ?」
「俺はアタッカーだ! タンクなんてできるか!」
「いいツッコミ。なおさらタンクに向いていると思う」
「ですねー」
「関係ねぇだろ!?」
軽快な会話を見せるアクスとショコラとミルフィーユ。
三人は知り合いだったのか、と思うほど気軽な感じだ。
昨日、シフォン達がアクスに声をかけて……
それから一緒に食事をして、意気投合したらしい。
「にしても……相変わらず、レインは厄介事に巻き込まれているな。なんか呪われているんじゃねえか? いや……それなら、あれだけたくさんの恋人ができるわけがないか。くそっ、爆発しろ!」
いや、すでに結婚して子供も授かっているアクスに言われてもな……
「えっ!? レイン君、恋人ができたの!?」
シフォンがものすごく驚いていた。
そういえばカナデ達のことは話していない。
「えっと……まあ、一応」
「……」
「あらあら、ものすごいショックを受けてますねー」
「大丈夫か? ショコラが慰めてやろうか?」
「だ、大丈夫……! ま、まだ……恋人っていうのなら、まだチャンスは……」
ものすごくコメントしづらい。
「えっと……ひとまず、出発しようか」
結局、俺が仕切ることになってしまった。
――――――――――
ラウル・ラズナからもらった地図は、ホライズンから歩いて二日ほどの距離にある、山中が示されていた。
念の為、出発前にギルドで確認をしたのだけど、特に情報を得ることはできなかった。
山中になにがあるのか?
邪教徒の情報を得ることができるのか?
いくらかの緊張と不安と共に、俺達は街を出発した。
「それにしても」
街道を歩きつつ、アクスが言う。
「惜しいな……くそ、レインが女だったらよかったのに」
「……いきなり、どうしたんだ? 頭でも打ったか?」
「いや。勇者パーティーは、みんな、それぞれ個性のある魅力的な女だろう? これでレインも女なら、両手に花どころじゃなくて、花の中に俺だ。男なら、一度は憧れるシチュエーションじゃねえか」
「「……」」
アクスの発言に、俺だけではなくてシフォンも呆れていた。
ショコラとミルフィーユは特に気にしていないらしく、のんびりしたままだ。
「あのな……そういう発言は控えた方がいいんじゃないか? セルも子供もいるんだから」
「別に本気じゃねえさ。ただの常識を語っただけだろ?」
「それは常識じゃない」
「なに?」
アクスは、心底不思議そうに首を傾げた。
本気で常識だと思っていたみたいだ。
そんなアクスを見て、シフォンが小声で問いかけてくる。
「ねえねえ、レイン君。私が声をかけておいてなんだけど、アクスさんって、その……大丈夫かな?」
「不安に思う気持ちはわかるけど、これが通常だなぁ……まあ、Aランクに恥じない腕は持っているから、問題ないと思う」
「うーん……野営をする時は、アクスさんのテントだけ百メートルは離した方がいいかな……?」
本当にそうした方がいいかもしれない。
とはいえ、こういう時の対処方法はバッチリだ。
アクスのことだからもしかしたら、と思い、事前にとある人物に相談しておいた。
「まあ、こういう風にちょっと調子に乗るところがあるから、そういう時は……」
俺は、ぽんぽんとアクスの肩を叩いてこちらを振り向かせつつ、言う。
「アクス、あまり羽目を外さないようにな?」
「ん? 久しぶりの冒険なんだから、あまり堅苦しいことを言うなよ。それに、こんなにも美人、美少女揃いなら、男として……」
「あとでセルに言いつけるからな?」
「真面目に勤勉に冒険者の務めを果たさせていただきますっ!!!」
アクスはビシリと背を伸ばして、それはもう見事な敬礼を披露してみせた。
苦笑しつつ、シフォンを見る。
「……と、こんな感じで釘を刺せばいい」
「あ、あはは……」
シフォンも苦笑をして……
このパーティー大丈夫かな?
……と、けっこう深刻な声のトーンで呟くのだった。
いや、うん。
今更だけど、俺もちょっと不安になってきた。