軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1061話 カナデとルリ

「今日はいい天気だね」

「うん」

昼下がりの街。

カナデは、ルリと手を繋いで街を歩いていた。

散歩、というわけではない。

買い物を頼まれたカナデが外に出て……

それを手伝いたそうにしていたルリに気づいて、カナデが声をかけたのだ。

手伝いたい、と思っていたのは確からしく、二つ返事で了承。

こうして、二人は一緒に出かけることに。

「買い物……なにを買うの?」

「んー……日用品を頼まれたんだけど、せっかくだから、ちょっとお菓子とかも買っちゃおうか」

「お菓子?」

「ルリちゃんは、どんなお菓子が好き?」

「……わからない」

「特に好みはない、っていうこと?」

「ううん。食べたことないから」

「そっか」

カナデは、笑顔はそのままに。

でも、心でルリの言葉に心を痛めていた。

自分が子供の頃、お菓子なんて当たり前のように食べていた。

両親の作ってくれたお菓子。

仲のいい友達のおじさんおばさんが作ってくれたお菓子。

あるいは、店で売っていたお菓子。

食べて当然のもの。

でも、ルリは知らないという。

そこに、彼女の『今まで』が集約されているような気がした。

……最初は、ルリのことに驚いて。

またレインが女の子を! なんて、チラッと思ったのだけど。

でも、そういう気持ちはすぐに消えて、同情に変わる。

同情もまた、そのまま庇護欲に変わる。

ルリを守ってあげたい。

笑顔を見たい。

そのために、自分にできることはなんでもしたい。

そう思う気持ちは、カナデの『優しさ』なのだろう。

だからこそ、今日も、一緒にお出かけをすることにした。

そうすることで、ちょっとでも良い変化があるかもしれないから。

「お菓子って、どういうものがあるの?」

「うーん……色々あるよ? 単純に甘いものから、ちょっとしょっぱいものとか。甘辛いものもあったり、たくさん」

「おー」

ルリは無表情ながらも、ちょっと興味を示すような相槌を打つ。

そんな反応を持ってみたいな。

カナデはそう思い、言葉を重ねていく。

それに応えるようにルリも口を開いて、二人は小さな交流を重ねた。

そうして、良い感じに場が温まり。

カナデが、ちょっとはルリちゃんも私に心を許してくれたかなー? なんて思った、その時。

「きゃあああっ!?」

悲鳴が響いた。

カナデが慌てて振り返ると、地面に転んだ女性と、バッグを手に立ち去る男の姿が。

ひったくりだ。

「ルリちゃん、ここにいて!」

カナデの判断は早かった。

風のように動いて、ひったくり犯の行く手を塞ぐ。

「なっ!?」

「そのバッグ、女の人に返して!」

「う、うるせえっ、どけ!」

ひったくり犯が吠えて、ナイフを取り出した。

片手で構えてカナデに突撃するのだけど……

「ほい、っと」

「ふが!?」

カナデはジャンプ。

そのまま、くるっと宙で一回転しつつ、サーカスの団員のようなことをしてナイフを避けてみせた。

同時に男の側頭部を軽く、かするような感じで蹴りつけて、その衝撃で気絶させる。

曲芸を超えた神業に踏み込むほどのものではあるが、カナデにとってはもう慣れたものだ。

数々の修羅場をくぐり抜けているため、今更、ひったくり犯一人、どうということはない。

「ありがとうございます、ありがとうございます」

「ううん、気にしないで。それよりも、怪我をしているかもしれないから、一応、治癒院で見てもらってね」

女性にバッグを返して。

それから笑顔でばいばいをして。

カナデは、急いでルリのところに戻る。

「ルリちゃん、ごめんね。大丈夫だった?」

「……」

「ルリちゃん?」

「カナデ、かっこいいね」

「えっ」

「なんていうか、こう……かっこいい」

ルリは、なにか言語化したいみたいだけど、うまくいかない様子。

それでも、カナデがかっこいいと感じたことは確からしく、ちょっとテンションが上がっている様子だった。

子供はヒーローに憧れるもの。

だとしたら、自分もヒーローになれたのだろうか?

ふと、カナデはそんなことを考えて、自然と笑顔になる。

「お菓子、買いに行こうか?」

「うん」

二人はもう一度手を繋いで、買い物を再開した。