軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1062話 双子はがんばりたい

「よし。では、これから魔法の授業を始めるのだ!」

家の裏庭。

そこに、ソラとルナ。

そして、ルリの姿があった。

ルリは、人間と魔族のハーフ。

故に、二つの種族の魔力を持つ。

最強種の血を引いているため、なにかしら特殊な能力を有しているかもしれない。

というか、すでに有していた。

ゼロに近い能力。

ただ、詳細は不明。

よくわからないものをそのまま放置することは、あまりよくない。

能力の詳細を確認するか。

能力を得た経緯を探るか。

それができれば最適ではあるが、手がかりが一つもない現状では、それはなかなか難しい。

なればこそ。

能力に振り回されることなく暴走することなく、なるべくうまく扱えるようにしておいた方がいい。

……と、ソラとルナは考えた。

そのために、まずは簡単な魔法を習得しておいた方がいいだろう、という判断に。

魔力を扱う術に慣れておけば、能力をうまく使い、暴走する確率も減るだろう。

そう考えてのことだ。

それと……

「がんばる」

ルリも、魔法を覚えたいと張り切っていた。

やはりというか、いつものごとく無表情ではあるものの……

ふんす、という感じで小さな両拳を握る姿からは、やる気を感じられる。

守られてばかり、という環境にまだ慣れていないのだろう。

自分もなにか、と考えてしまうのだろう。

ルリのような子供は、守られて当たり前。

それ以上を考える必要なんてないのだけど……

ソラとルナは、それを諭すことはしない。

本人がやりたいのならやらせるべき。

二人は、わりと実戦派なのだ。

「魔法は、どう使えばいいの?」

「簡単に言うと、己の中で魔力を最適な形に組み替えます。それをパズルのように組み合わせていき、最後に、それをパーンと外に押し出す……即ち発動する、ですね」

「?」

「まあ、最初は説明を聞いただけではわかりません。一つ一つ、ゆっくりやっていきましょう」

「うむ。なにも、今日中に覚えなければいけない、ということはないからな。我らは、今、とても暇故に、いつでも勉強に付き合うのだ」

「……そう聞くと、ソラ達は、なんだかとてもダメな生活を送っているような気がしました」

「いいではないか、姉よ。のんびり、ダラダラできるのは平和の証なのだ」

「それはそうなのですが……」

適当なルナ。

真面目なソラ。

二人の心は、なかなか噛み合わない。

「まずは、自分の中の魔力を感じるところから始めましょう」

「目を閉じて、意識を内側に向けるのだ。なにかこう、温かいものを感じたりしないか? あるいは、妙な痺れとか、ピリピリとか」

「……ん……」

言われた通り、ルリは目を閉じた。

そのまま集中。

「……なにかある」

「おぉ、本当か?」

「それが、たぶん、魔力ですね。こんなに早く感じることができるなんて、ルリは魔法の才能があるかもしれませんね」

「これを、どうすればいいの?」

「さきほど言ったように、最適な形に組み替えていきます。例えば、この魔力の塊は『熱』を構成する要素に。この魔力の塊は『飛翔』を構成する要素に……という感じで、魔力を区切り、どのような効果になるか頭の中で思い浮かべて、要素を構成させていくんです」

「……ん、できたかもしれない」

「おぉ、マジなのか? とても速いぞ」

「では、それを次に組み立てていきましょう。パズルのような感じで、無理なく、歪まないように、正しい形で積み上げて……」

「できた」

「えっ」

即答を連発するルリ。

それに、ソラとルナは驚くことしかできない。

ルリは、最強種の血を引いている。

それならば、魔法の習得も簡単かもしれないとは思っていたが……

ここまで驚異的な速度で学ぶというのは、さすがに予想外だ。

あのレインでさえ、魔法を学ぶのにそれなりの時間がかかったと聞いている。

とはいえ、ここで止めるのはもったいない。

せっかくだから最後までやらせてみようと、ソラとルナは、期待半分不安半分で魔法の授業を進める。

「で、では、最後にそれを一つにまとめあげてください」

「そして、外に解き放つイメージを持つのだ」

「……ん……」

「魔法の発動は、ただイメージするだけではできないのだ。発動の鍵となる力のある言葉を紡ぐことで、魔法は発動する。今、ルリが練り上げているものの場合は、ファイアーボールと唱えることで……」

「ファイアーボール」

「「っ!?」」

ルリの手の平から火球が放たれた。

それはとても小さくて。

少し飛んだ後、ぽんっ、と妙に可愛らしい音を立てて小さな爆発。

そのまま消えてしまう。

そんな魔法だけど……

魔法は魔法だ。

習い始めて数時間の女の子が、いきなり魔法を使うことができた。

「す、凄まじい才能ですね……」

「これは、我ら精霊族に匹敵するやもしれぬな。いや、魔族の血を引いているのなら、それも……?」

驚くソラとルナ。

そして、ルリは……

「……」

やはり無表情なのだけど。

ただ、よし、という感じで拳を握っていた。

「これは、とても優秀な生徒ですね……教えがいがあります」

「よし、ルリよ! この勢いで超級魔法を習得するぞ!」

「いえ。ルリならば、もしかして絶級魔法も!」

とても優秀な弟子を得たことで、ソラとルリのテンションが爆上がりするのだけど……

その後。

話を聞いたレインから、相手は子供なんだから、いくらすごい才能があったとしても駆け足気味にあれこれと詰め込みすぎないように、と注意されてしまうのだった。

一方、ルリは……

「……魔法……」

いつも無表情な彼女が、わずかに顔を歪めていた。

でも、それに誰も気づくことはない。