軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1054話 義なんてものはない

今度は、俺が前に出た。

千鳥を手に、連続で攻撃を繰り出していく。

力と技。

それらは俺の方が上だ。

魔族を少しずつ押していく。

「くっ……! またしても、またしても我らの邪魔をするというのか!?」

「ああ、そうさ! 何度でもしてやる!」

切り結び、競り合う。

とても強い力だ。

ともすれば負けてしまいそうだけど……

絶対に負けてたまるものか。

強い意思を胸に、前に……前に出ていく。

「なにも知らない子供を利用して……それが正しいなんて、言えるわけないだろう!」

「言っただろう、なんでもすると! 我らの勝利に繋がるのならば、なんでも……だ!」

「だから……」

雷虎からワイヤーを射出して、魔族を牽制した。

さらに前に出る。

「子供を巻き込むな!!!」

人間と魔族のハーフというだけで、ルリは過酷な道を歩まされて。

利用されてきて。

本当は辛いはずだ。

泣きたいはずだ。

でも、ルリはいつも感情を表に出すことはなくて、まるで人形のよう。

「あんな顔を見せられて、それでも尚、あなた達が正しいなんて、そんなこと思えるわけないだろう!?」

「なにを……!」

「同情なんてできるものか! そんな気持ち、今、消えた!」

「ふざけるな! 我らは奪われたのだ、理不尽に踏みにじられたのだ! なればこそ、我らが奪うことのなにが悪い!?」

「ルリは仲間だろう、魔族の血が流れているだろう!? なのにどうして、仲間まで踏みにじるようなことをする!?」

「はっ。あの小娘が仲間であるものか。忌々しい人間の血を引いている……あれは、我らにとって道具にすぎん!」

「そういうところが……」

さらに力が湧いてきた。

それを、目の前にいる魔族に全てぶつけてやる。

「まったく共感できないんだよ!!!」

「ぐっ……!?」

「復讐をしたいのなら、自分達だけでやれ! 他人を……子供を利用するな!」

「甘いことを!」

「その甘さがあるからこそ、俺達は、『人』でいられるんだろう!? そうした感情さえも捨てたら、もう『人』じゃない。魔物と同じだ。そして、あなた達はそれをした。堕ちた。これ以上……」

魔族の剣をギリギリのところで避けた。

同時に前に出て……

「お前の都合にルリを巻き込むな! それは、もう復讐じゃなくて、ただ単純に、義もなにもない暴れているだけだ!!!」

「がっ……!?」

魔族の懐に潜り込むと同時に、その勢いのまま、腹部に肘を叩き込んだ。

魔族の口からこぼれる苦痛の声。

バランスを崩して、倒れそうになり……

それでも、地面に膝をついてたまるものかと耐える。

……ただ、隙だらけだ。

追撃の拳を放つ。

一撃だけではなくて、何度も何度も。

「がっ!? ぐっ、かは……うぐ!?」

「義を掲げて、でも、実際は義に外れるようなことをして……」

「き、貴様……! 我らの悲願を……」

「平気で他人を踏みにじって……」

「我らは、我らは……!」

魔族は未だ倒れない。

執念だけで立っているようなものだ。

……どうして。

そこまで強い思いがあるのに、周りを見ない?

周りのことが見えなくなる?

少しでいいから。

ほんの少しでいいから……

「お前が抱いている『想い』を、『優しさ』を……なんであの子に分けてやれなかった!?」

「ぐぁ……!!!」

渾身の一撃が突き刺さり、魔族は大きく吹き飛んだ。

立っていることはできず、地面に転がる。

意識は失っていない様子だけど、うまく動くことができない様子だ。

立ち上がることができず、震えて、怨嗟の声を漏らしている。

「我ら……こそが、正しく……絶対的な、正義であるという、のに……」

「……正しさなんてあるものか」

魔族にも。

俺にも。

絶対的に正しいことなんて、世の中にない。

人の数だけ思想があるし。

人の数だけ、それぞれの『正義』がある。

全てに共通する正しさなんてない。

子供を利用するなと、俺は、魔族達と戦うことにしたけれど……

そんな俺の行為もまた、正しいとはいえない。

身勝手なものだろう。

「でも」

あの子の保護者になると決めた。

笑顔が見たいと思った。

だから、それを阻む者がいるのなら……

「俺は、何度でも戦うさ」