作品タイトル不明
1036話 二つの血を引く少女
女の子を保護した後、奴隷商人とその護衛を連れてホライズンに戻った。
騎士団に移動して、奴隷商人達を引き渡す。
それとギルドに伝言を頼み、ナタリーさんに今回の依頼人についての調査をお願いした。
たぶん、奴隷商人と通じている可能性が高い。
そのような依頼をギルドが扱うわけにはいかないし……
きちんと調査をして、犯罪を一網打尽にしていきたい。
その後、俺は騎士団に留まり、団長であるステラと話をすることに。
「なるほど……奴隷商人に捕らえられていた少女、か」
一通りの事情を説明すると、ステラは険しい表情を作る。
ちなみに、女の子はこの場にいない。
あちらこちら汚れていたので、他の騎士に頼み、風呂などに入れてもらっている。
人間不信なのか、怯えている様子ではあったが……
ステラの部下は皆、優しいから、たぶん、大丈夫だと思う。
「で、ここからは、今はステラだけに話すことで秘密にしてほしい」
「ふむ?」
「たぶん、だけど……あの子は、人間と魔族のハーフだ」
「なっ……!?」
ステラは大きな声をあげて、ついついといった様子で立ち上がる。
ややあって落ち着きを取り戻したらしく、再び客間のソファーに座る。
「それは本当なのか?」
「ちゃんと調べたわけじゃないから、断言はできない。ただ、人間と魔族、両方の魔力を感じるんだ。こんなこと、普通はありえない」
「むぅ……レインがそう言うのなら、そうなのだろうな」
「人間と魔族のハーフなんて、聞いたことがない」
異なる種族のハイブリッド。
もちろん、その存在を完全に否定するつもりはない。
世界は広い。
クリオスのように、人間と最強種が仲良く共存する街もあるから、探せばハーフは見つかると思う。
ただ、人間と魔族というのはあまりにも予想外だ。
一年前まで、人間と魔族は争い続けていた。
ずっと敵対していた。
そんな間柄なのに、結ばれて、子供を授かるに至るなんて……
なかなか想像することができない。
「おまけに出自は不明で、名前もわからない……か」
「あまり想像したくないような、酷い環境に置かれていたんだと思う。そうなった経緯は、まったくわからないけど……」
「そうだな。あの怯えようを見ていると、私も同感だ」
「通常、ああいう行き場のない子供は、騎士団で身辺調査を行った後、関連する施設で保護されるんだよな?」
「ああ、その通りだ。私達の任務は、秩序の維持と人々を守ることだからな」
「……あの子の保護を、俺に任せてくれないか?」
適当に思いついての発言じゃない。
何度も何度も考えて、慎重に検討を重ねた結果の答えだ。
普通の子供なら、街の施設に預けるのが一番だと思う。
施設側も慣れているだろうから、きちんと子供を保護して、育てることができるだろう。
ただ、あの女の子は特殊な背景を持つ。
人間と魔族のハーフ。
それ故に、奴隷商人に狙われたのかもしれない。
普通の施設に預けるだけでは、またさらわれてしまうかもしれない。
それと……
これはただの勘なのだけど。
彼女がハーフというのに、大きな理由や意味があるような気がした。
なにか大きな問題を抱えているような気がした。
その場合、やはり普通の施設では手に負えないだろう。
ここまで関わった以上、放っておくことはできない。
できる限り、あの子の力になりたいと思う。
「わかった、レインに任せる」
思っていた以上にあっさりと任されてしまった。
「えっと……」
「どうしたんだ、ぽかんとして」
「いや。思っていた以上にあっさりだったから」
「レイン以上の適任者はいないだろうからな。それに、信頼も抜群だ」
「はは、ありがとう」
「まあ、少女の身辺を守るという意味ではまったく心配していないが……育児となると、なかなか大変だろうから、なにかあれば気軽に相談してほしい」
「わかった。その時は頼らせてもらうよ。ステラだけじゃなくて、街の人にも」
「ああ、そうしてくれ」
……こうして、俺は名無しの女の子を保護することになった。
その選択が、後々で大きな影響を与えて。
そして、大きな事件に巻き込まれていくことになるのだけど。
でも。
そのことについて、まったく後悔はしないのだった。