作品タイトル不明
1027話 幕間・恋愛戦争の行方その3
実のところ。
俺は、みんなが全員を恋人にしてほしい、と言うより先に答えを出していた。
その答えは、とても単純なもの。
誰と付き合うこともない。
誰か一人と付き合えば、他のみんなを悲しませてしまう。
それならば……という考えが一つ。
もう一つは……
正直な話。
情けない話。
俺は、一人ではなくてみんなに惹かれていた。
カナデはいつも明るくて、その笑顔に何度も救われてきた。
タニアは凛々しくかっこよく、その姿に見惚れてきた。
ソラは賢く、幾度となく支えてもらった。
ルナはムードメーカーで、いつもみんなを笑顔にしてくれた。
ニーナは優しくて、その純粋な心に惹かれていた。
ティナは軽そうに見えてとても思慮深く、なくてはならない存在だ。
イリスは小悪魔っぽいのだけど、でも、そういうところが逆に愛らしいと思う。
リファはぼーっとしているようで感情豊かで、色々な顔を見せてほしい。
サクラはいつも元気いっぱいで、その元気を分けてもらっていた。
フィーニアは少し臆病だけど、それは思いやりがあるという証で、その優しさは見習いたいところがある。
ライハはとても真面目で、どこまでもまっすぐなところが魅力的だ。
コハネは強く優しく、澄んだ心を持ち、あそこまで色々なことをしてもらい、気にならないわけがない。
エーデルワイスは王としての器を持ち、しかし、俺にもみんなにも優しく、そういうところが素直にすごいと思う。
「……なんか、悪いところとか、まったく出てこないんだよな」
自室でため息をこぼした。
「誰か一人を選べない。みんなに惹かれている。だから、今回のみんなの申し出は嬉しいんだけど……」
結局のところ、他人任せなんだよな。
みんなが言ってくれなければ、俺はまだ悩んでいたかもしれない。
あるいは、変な答えを出していたかもしれない。
今回は、みんながタイミングよく言ってくれたことがうまくいっただけで……
俺は、なにもしていない。
なにも決めていない。
「……ダメだよな」
というか、情けない。
カッコ悪い。
俺は俺として。
これ以上、後ろ向きにならないで。
「ちゃんと、やるべきことをやらないとな」
――――――――――
夜。
ごはんを食べた後、みんな、そのままリビングに残ってもらう。
「どうしたの、レイン? もしかして、まだ食べたりなかった?」
「カナデじゃあるまいし」
「うむ、カナデじゃあるまいし」
「みんなの私に対する認識!?」
ガーンとショックを受けるカナデを見て、ティナとリファがのほほんとする。
「最近のカナデは、リアクションが冴えてきたなあ」
「世界一のリアクション猫を目指せるね」
「カナデさまは、そのようなところを目指していたのですか? 僭越ながら、わたくしが手助けをしたいと思います」
「違うからね!? コハネが変な勘違いしちゃったじゃない!」
「お前達はやかましいな。主殿がなにか話があるというのだから、静かにしろ」
「「「……はい……」」」
エーデルワイスが、いつからかみんなのリーダー的な立ち位置になっていた。
やはり王だからなのだろうか?
「えっと……話があるんだ。この前の、みんなの告白について」
「「「っ……!」」」
みんな、途端に真面目な顔になる。
俺も似たような顔をしていると思う。
「あれから、しっかり考えたんだけど……」
「にゃー……やっぱり、レインは嫌? なかったことにしたい?」
カナデは不安そうだ。
他のみんなも不安そうだ。
そんなみんなを安心させるように、笑みを向ける。
「嫌じゃないさ。むしろ、嬉しい」
「えっ。それじゃあ……」
「なんというか、これは男の意地というか、つまらないプライドなんだけど……」
ここは、しっかりと。
はっきりとさせておきたいと思った。
「俺、みんなのことが好きだ」
人によっては、なにをバカなと怒られてしまいそうだけど……
でも、嘘を吐くことはできない。
下手にごまかすようなこともしたくない。
素直に。
思いのまま。
やりたいことをすることにした。
「誰か一人、って決められたらいいのかもしれないけど、でも、そういう気持ちはあまり……決められない、っていう情けない選択かもしれないけど。それでも、みんなのことが好きなんだ」
「……レイン……」
「カナデ、タニア、ソラ、ルナ、ニーナ、ティナ、イリス、リファ、サクラ、フィーニア、ライハ、コハネ、エーデルワイス……俺も、みんな一緒がいい」
先の話を繰り返しているだけ。
でも、先の話の時は、俺は流されているだけだった。
ちゃんと気持ちを伝えていなかった。
だから今、ちゃんと伝えたい。
確かにみんなのことが好きなんだ……と。
「これからも、ずっと……俺と一緒にいてくれないかな?」
沈黙。
ややあって……
「「「もちろん!!!」」」
みんなは笑顔になって……
そのまま、勢いよく飛び込んできた。
もみくちゃになってしまうものの、笑顔があふれていて……
それは、俺達のこれからを示しているかのようだった。