作品タイトル不明
1018話 エピローグ・その1
「ふぅ……」
机に向かうユウキは、ペンを持つ手を休ませて、吐息をこぼした。
目の前に積み上がるのは、書類の山。
一通りの戦後処理は終わったものの……
真に大変なのはその後だ。
和平は結んだものの、そこから新しい問題が発生する。
その問題は、さらに別の問題に派生して……
そこから、さらにさらに新しい問題が……
……そのような感じで、毎日、なにかしらの問題が起きている状態だ。
それに対処するため、日々、執務に追われている。
最後にまともに寝たのはいつだろうか?
四時間眠れたら良い方だ。
「……とはいえ」
ユウキは小さく笑う。
せっかく掴んだ平和だ。
ここで手放すわけにはいかない。
維持するために、なにがなんでも喰らいついてみせよう。
そのためにできることは、なんでもするつもりだ。
それが次期国王の務めだ。
「まさか、僕が父さんの跡を継ぐことになるとは……」
アルガス王は、数々の問題の責任を取り、辞意を表明していた。
さすがに、準備もできていない状態で退位をすれば、混乱しか招かない。
そのため、玉座を降りるのはしばらく先になる。
ユウキは、後継者として指命された。
ココロという優秀な姉がいるのだけど、性に合わない、と一言で断られてしまったらしい。
「やれやれだよね……まあ、僕は僕で、できることをやらないと」
「お兄様」
「ユウキ」
部屋の扉がノックされて、サーリャとココロが姿を見せた。
噂をすれば影、というほど噂はしていないが……
なかなか妙なタイミングで姿を見せるものだ、と苦笑してしまう。
「二人共、どうかした?」
「なに。真面目な弟のことだから、少し無理をしているのではないかと思ってな」
「はい、どうぞ。こちら、差し入れです」
サーリャは、机の空いているスペースに、手に持っていたトレーを置いた。
そこには色とりどりのお菓子と、ふわりと香る紅茶のポットが載せられていた。
「サーリャが作ったものだ」
「サーリャが? ありがとう」
「ふふ、どういたしまして」
クッキーを一口。
それから、紅茶も一口。
どちらも非常に美味しい。
執務の疲れが吹き飛んでいくかのようだ。
仕事は一時中断。
今は家族と一緒に穏やかな時間を過ごす。
「お仕事の調子はいかがですか?」
「見ての通りかな」
書類の山を見て、ユウキは苦笑した。
それが移るかのように、サーリャ苦笑する。
「大変ですね」
「僕だけが、っていうわけじゃないからね。泣き言は言っていられないよ」
「とはいえ、適度な休憩はとらなければな。でないと倒れてしまう」
ココロが優雅に紅茶を飲みつつ、笑みを浮かべた。
「倒れるわけにはいかないね」
「そうだな。そのようなヒマはない」
これから時代が大きく動く。
その流れに飲み込まれないように。
うまく御することができるように。
なにがなんでもくらいついていかないといけない。
それが、今を生きる者の……
そして、上に立つ者の責任だ。
ユウキは、ふと、以前、一緒にレインと旅をしたことを思い返した。
諸国漫遊というわけではなくて、きちんとした目的があった旅なのだけど……
それでも楽しかった。
鳥のように空を飛んでいる気持ちになることができた。
あのような旅は、もうできないだろう。
これからは、王族としての務めを果たすことが最優先となる。
「がんばらないと」
だから……と、ユウキは心の中でつぶやく。
レインもがんばってほしい、と。