軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1019話 エピローグ・その2

魔王城。

その執務室にジルオールの姿があった。

とはいえ、机に向かい仕事をしているわけではない。

いくらかの書類を持ち、訪ねてきたところだ。

しかし、部屋の中は空。

ジルオール以外、誰もいない。

「……」

ため息。

それから、部屋の外で待機する護衛に声をかけた。

「少しいいですか?」

「はっ、なんでしょうか?」

「カシオンはどちらに?」

「えっと、その……」

護衛は気まずそうにしつつ、間を置いて、答えを返す。

「現場の方が性に合っている、と外へ……」

「やれやれ、またですか……」

ジルオールはため息をこぼした。

戦争が終わり、魔族は大きく変わろうとしていた。

それを良しとしない者がいる。

流れによる問題が発生することがある。

それらの対処をするために、ジルオールは、日々、奮闘していた。

本来ならば、王であるエーデルワイスが指揮を取るべきなのだけど……

今まで、彼女に『魔王』であることを強いてきた。

魔族の象徴であることを求めてきた。

これからも先、同じようなことをして束縛するつもりはない。

『魔王』は解放された。

ならば、その器であるエーデルワイスも解放されるべきだ。

そう考えて、ジルオールは、エーデルワイスに王の役割を求めなかった。

好きに生きてもらうことにした。

元々、エーデルワイスは長く休眠状態にあった。

王としての務めをしていないため、正直なところ、いなくても大きな問題はない。

逆に、王となるための学を積んでいないため、いたら困るというところもある。

「だからこそ、我々ががんばらないといけないというのに……」

二度目のため息。

部下は書類仕事が苦手らしく、なにかと理由をつけては現場に赴いてしまう。

現場でやらなくてはいけないことはあるものの、だからといって、書類仕事も必要だ。

後回しにしていたら、後で大変なことになってしまう。

「私がやるしかありませんね」

「……あの」

ふと、護衛が話しかけてきた。

その顔はどこか緊張した様子だ。

「なんでしょう?」

「ジルオールさまは……これから、どうなると思いますか?」

「……人間とのことですか?」

「はい。自分は、うまくいくとは思えず……」

人間と和平を結ぶことができた。

それに合わせて、他の最強種達とも友好的な条約を結ぶことができた。

もう争う必要はない。

理不尽に虐げられることはない。

とはいえ、必ずしも良い方向に進むとは限らない。

過去の歴史は消えない。

全ての者が納得できるわけではない。

火種は残る。

それはいつか、大きな衝突に発展するかもしれない。

ただ……

「気持ちはわかります」

「なら……」

「ですが、もう、舵は切られました。ならば、やるべきことをやるだけですよ」

『かもしれない』と考えていても仕方ない。

それよりは、明るい未来を思い、そちらに突き進んでいく方が何倍もマシだ。

「正直なところ、私も、人間には思うところがあります」

「ジルオールさまも……ですか?」

「ええ。私は、聖人というわけではありませんからね」

「それは……しかし、意外です。穏健派のトップであったジルオールさまなら、そのような気持ちは持っていないのかと」

「単純な話ですよ」

ジルオールは苦笑しつつ言う。

「敵を増やすよりも、良き隣人が増える方が良い……そう思いませんか?」

「そう言われると……」

「なので、私は、こうする道を選んだのですよ」

ジルオールは、そう言って微笑んだ。

その選択に後悔はない。

どこまでも突き進む覚悟だ。

そして……

「次の世代には、争いのない世界を贈りましょう」