作品タイトル不明
1012話 いつも傍に
「本当にキミなのか……? ……ゼロ……」
ラインハルトの震える言葉に、女性はゆっくりと頷いた。
それでも信じられない様子で、どうしたらいいかわからないらしく、ラインハルトは棒立ちになっていた。
「どういうこと……なのかな?」
「ゼロって、神様……だよね?」
シフォンとユウキが不思議そうな顔に。
たぶん、俺も似たような顔をしていると思う。
一方で、エーデルワイスは、ラインハルトと同じように唖然としていた。
「バカな……なぜ、あの方が……」
エーデルワイスやラインハルトの反応を見る限り……
たぶん、あの女性は、本当にゼロなのだろう。
神様なのだろう。
とはいえ、どういうことだ?
なにが起きている?
状況をまったく理解できない。
「なぜ、キミが……」
「ずっと一緒にいたよ?」
「しかし、そんなことは……!」
「今の私は、魂だけの存在だから」
……そうか!
彼女の一言で納得した。
今のゼロは……簡単に言うと、幽霊なのだろう。
否定されがちな話ではあるけれど……
幽霊は確かに存在する。
なぜ断言できるのか?
だって、身近にティナという幽霊がいるから。
彼女の存在が幽霊の存在を証明している。
そもそも不思議だった。
ラインハルトはゼロと契約していたが、対象が死んだ場合、その能力は消えてしまう。
それなのに、ラインハルトは能力を使うことができた。
なぜか?
ゼロが幽霊になっていたから。
ティナと同じように。
人間の幽霊がいるのなら、神様の幽霊がいたとしてもおかしくない。
きっと、探せば最強種の幽霊もいるのだろう。
そして、幽霊と契約して能力を行使することもできる。
ラインハルトの場合、生前のゼロと契約をして……
ゼロが死んでしまったものの、その後、幽霊となっていたから、能力が消えることはなかったのだろう。
「ずっと、あなたの隣にいたよ」
「そ、そんなバカな……なら、どうして……」
「周りが見えなくなっていたから。ラインハルトの悪い癖だよ」
ゼロの幽霊は、ちょっと困ったような顔をした。
それから、こちらを見て微笑む。
「でも、あの子のおかげ」
「レインの……?」
「あの子と戦うことで、ラインハルトがまとっていた黒い感情が剥がれていった。あの子の拳が貫いて、払ってくれた」
「俺は……復讐に傾倒するあまり、キミの存在を見落としていたというのか……?」
「うん。めっ、だよ?」
ゼロは、ちょこんとラインハルトをつついた。
幽霊なので触れることはできないのだけど……
でも、ラインハルトはその場に膝をついてしまう。
そんな彼に寄り添うように、ゼロはかがむ。
「簡単に言うと、ラインハルトがレインと戦うことで、いい感じにストレス発散できた……っていうところかな?」
「……簡単に言い過ぎだろう」
「そうかな? わかりやすくて、私はいいと思うな」
「その物言い……本当にゼロなんだな」
「うん、私だよ」
ラインハルトは彼女に手を伸ばして……
しかし、途中で止めた。
「どうしたの? 昔みたいに、触れてくれないの?」
「……俺にそんな資格はない」
うなだれてしまう。
幽霊とはいえ、愛する人と再会できた。
とても嬉しいはずなのだけど……
だからこそ、同時に、途方もない罪悪感に襲われているだろう。
「俺は……キミの想いを、願いを裏切った。だから……」
「いいよ」
ゼロは、そっとラインハルトを抱きしめた。
実体がないから、直接、彼に触れることはできない。
でも、その想いを感じることはできたのかもしれない。
ラインハルトが震える。
「ちょっと困ったことになっているけど、でも私は、あなただけの味方でいるよ」
「そんなことを……」
「贔屓だけど、でも、今まですごくがんばってきたから……それくらいは、いいんじゃないかな?」
「……」
「ラインハルトの罪は、私が一緒に背負うよ。だって……」
静かに唇が触れる。
「あなたのことが好きだから」