作品タイトル不明
1002話 魔王の力
「……」
足を止めた。
目を閉じて集中する。
「みんな、叩き込むよ!」
「うん、いくよ!」
ユウキとシフォンは、すぐに俺をかばうような動きをしてくれた。
なにも打ち合わせはしていない。
ただ、俺に時間が必要なことをすぐに察してくれたのだろう。
本当に頼りになる。
一緒に戦うことができて嬉しい。
「我が力を受けよ!」
エーデルワイスも前に出た。
派手に攻撃をして、俺に対する注意を逸らしてくれていた。
みんながここまでしてくれているのだ。
絶対に失敗するわけにはいかない。
「すぅ……」
軽い深呼吸。
そして、エーデルワイスと契約したことで得た力を使う。
自分の心に手を伸ばすような感覚で……
その中にある、彼女の力を掴む。
「くっ……!?」
瞬間、ゾクリと背中が震えた。
エーデルワイスとの契約で得た力がある。
しかしそれは、魔王の力だ。
簡単に触れていいものではないし、簡単に扱えるようなものではない。
でも、今は……!
「使わせてもらう!」
クサナギとカムイを、それぞれ鞘に戻した。
そして、右手を掲げて……
ブゥンッ。
空気が重く震えた後、右手に漆黒の炎が宿る。
それは、夜よりも暗く。
深淵よりも深く。
とても純粋な黒。
俺の右手は漆黒の炎に包まれた。
「我が主よ、使いこなしたか……!」
「これでいく!」
遅れて、俺も前に出た。
対するラインハルトは、わずかに困惑した様子だ。
俺の持つ力の正体がわからないのだろう。
それもそうだ。
数多の最強種と契約をして、神様とも契約してみせた。
そんなラインハルトも、魔王と契約したことはないはずだ。
そこで得た能力を知ることはできない。
そこに勝機がある。
「砕けろ」
ラインハルトはすぐに平常心を取り戻して、攻撃を再開した。
超級魔法に匹敵する……あるいはそれ以上の衝撃波が迫る。
防ぐことは難しい。
まともに直撃したら、そこで終わり。
でも俺は、まっすぐに突撃して……
「はぁっ!」
漆黒の炎に包まれた右手を振る。
同時に衝撃波が着弾して……
キィンッ!
甲高い音が響いて、衝撃波が消えた。
「……なに?」
「ラインハルト!」
そのまま前へ。
俺の接近を拒むように、ラインハルトは、さらに攻撃を重ねるのだけど……
「今度は……俺が!」
右手を振るい、次々とラインハルトの攻撃を打ち消していく。
いや。
破壊していく。
「その力は……ちっ、厄介な」
ラインハルトから余裕の色が消えた。
俺の接近を嫌がるように、後ろへ跳ぶ。
同時に、さらなる攻撃をばらまいてきた。
「レインくん!?」
「大丈夫だ」
シフォンの悲鳴のような声に、俺は、落ち着いて答える。
そして、今までと同じように、ラインハルトの攻撃を無効化する。
これがエーデルワイスと契約して得た力。
迂闊に使うことはできない……
しかし、一度枷を解き放てば、強力無比な攻撃となる。
破壊する力。
触れるもの全てを壊して、無に返す。
それが、エーデルワイスとの契約で得た能力だ。
あまりにも強力すぎる。
敵味方の区別をすることができない。
故に、使うタイミングはとても慎重なものが求められるけど……
「今は、あなたに届くために使わせてもらう!」