作品タイトル不明
1001話 切り札には切り札を
「滅びろ」
その言葉と共に光が弾けた。
それは濁流のごとく俺達に迫り、飲み込もうとする。
あれはまずい。
防ぐことは難しい。
「避けろ!」
悲鳴のように叫びつつ、俺は大きく横に跳んだ。
視界の端で、みんなも同じように避けるのが見えた。
よかった。
でも、安堵するのは早い。
「砕けろ」
続けて、キィィィンという高い音が響いた。
空間が揺らぎ、不可視の衝撃波が飛ぶ。
これは防ぐことができる。
そう感じたものの、でも、俺は再び地面を蹴り避けた。
そうしたのは簡単な答え。
「爆ぜろ」
第三射。
炎が生き物のごとく迫る。
もしも、あの場で防御をしていたら、押し止められてしまい、この炎に対処することができず飲み込まれていただろう。
避けたことで、比較的自由に動くことができる。
回避も防御も可能だ。
なら、次の選択は……
「砕けろ」
「くっ……!?」
ほぼ同時に、第四射が来る。
こちらは直接、俺達を狙うことはない。
逃げ道を塞ぐことを目的として放ったものだろう。
こうなると防御しかない。
「ファイアーボール・マルチショット!」
炎を魔法で相殺した。
みんなも、それぞれの方法で相殺する。
よし。
このまま反撃を……
「光よ」
第五射!?
「くそっ!」
思わず舌打ちしつつ、回避に専念した。
世界を書き換える力。
脅威だろうとは思っていたが、想像以上だ。
超級魔法に匹敵する攻撃を、たった一言、つぶやくだけで連射できて。
こちらの攻撃は、同じく一言でかき消されてしまう。
どうする?
どう戦えばいい?
……手はある。
ラインハルトが切り札を隠していたように、俺も、切り札を持つ。
ただ、それをうまく活用できるかどうか……
って、不安を抱えていても仕方ない。
ここで負けるわけにはいかない。
絶対に。
なら、俺にできること、全てをやるだけだ。
「……エーデルワイス」
攻撃を続けながら、彼女にだけ聞こえる声で言う。
「あれを使う」
「っ……!?」
一瞬、攻撃の手が止まる。
それくらいにエーデルワイスは動揺していた。
「それは……私の方だな?」
「ああ、エーデルワイスの方だ」
「それならば……いや、しかし……」
「他に方法がない。エーデルワイスも切り札を持っているのなら、話は別だけど……」
「……いや。残念ながら、私は全てを出し尽くした。基本、私は神族や不死鳥族のような特殊な能力は持たない。身体能力と魔力が限界突破しているというだけだ。なにかしら特別な力を持っていればよかったのだが……くっ」
魔王が己の力不足を嘆くなんて、ちょっとした冗談みたいだ。
しかし、ラインハルトはそれほどの強敵。
出し惜しみをしてはダメだ。
「確認するが、私との方なんだな?」
「ああ」
「……わかった。なら、いい。我が主なら、使いこなすことができるだろう」
「ありがとう」
エーデルワイスがそう言ってくれるのなら安心できる。
絶対にうまくいくという自信がある。
だから……
「いくぞ」
俺は、エーデルワイスと契約したことで得た能力を使うことにした。