軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第85話 船員不足

「はあ? 魔導飛行船が墜落した? まさか魔族のテロか?」

「落ち着け、ローデリヒ。しばらくは魔族がそんなことをするわけがない。しそうな奴は、もう死んでいるからな。それに、バウマイスター辺境伯家の魔導飛行船が落ちたわけじゃないんだろう?」

「はい、サーヘル子爵家が運用していた魔導飛行船で、墜落したのは小領主混合領域です」

「やっぱりそうなったか……」

ゾヌターク共和国から大量に輸入された中古魔導飛行船がリンガイア大陸中で運用されるようになり、それに比例するかのように事故が増えた。

その最大の原因は熟練船員の不足だ。

空軍も積極的に船を増やしている影響があって、このところ退役する軍人が減ってしまい、船を運用している貴族家の一部でも船員の育成を始めてはいるものの、どうしてもその質は低くなってしまう。

育成できる人数にも限度があるし、零細貴族家ではそもそも船員の育成など不可能であった。

幸いにして、先んじてベテラン船員の確保と船員の育成を行なっていたバウマイスター辺境伯家ではこれまで事故は起こっていないが、後発で独自に魔導飛行船の運用を始めた貴族家ほど事故を起こす確率が高かった。

どうしても、練度の低い船員を雇い入れて使うことになってしまうからだ。

「ローデリヒ、詳しい事故の原因を調べておいてくれ」

「わかりました」

いまだにバウマイスター辺境伯家では無事故だが、その油断が危ない。

なので、たとえ他家でも魔導飛行船の事故が起こったら、その情報を全船員の間で共有するようになっていた。

今は、ローデリヒからの報告を待つことにしよう。

「魔力の補充し忘れですか……。基本中の基本なのですが……」

「船に搭載された魔晶石にどのくらいの魔力が残っているか。動かす前にチェックするのは当然なんだが、サーヘル子爵家の船員の大半が素人だったそうだ。船を動かしながら学んでいけと」

「無茶を言うなぁ……」

「とにかく船員が不足しているのさ」

これでも空軍とは良好な関係を築いているので、サーヘル子爵家の船が墜落した事故の詳細はローデリヒ経由ですぐに入手できた。

それをバウマイスター辺境伯家で魔導飛行船の運用を担当している家臣に伝えたのだけど、彼は呆れていた。

元々空軍の軍人だったが、退役後にバウマイスター辺境伯家に転籍し、領内で船員を育成する船員学校も運営している人物だったからだ。

「ベテラン船員が忙し過ぎて、出航前の魔力量チェックを忘れていたらしい。新人船員にチェックするように伝えていたはずだと」

「ベテラン船員が伝えたつもりなのか。命じられていたけど、テンパった新人船員が他のことに気を取られていて忘れたのか」

「新人船員だったので、他の作業に気を取られていて忘れたようです」

「新人だから忘れることもあると理解して、最後に自分でチェックすればよかったのに……」

「それすらできないほど多忙だったようで。ただそのベテラン船員のおかげで、人的被害は最小限に抑えられたと」

「でも、死者はゼロじゃない。また貴重な船員が……」

魔導飛行船は魔力で飛ぶので、魔力が尽きるとあの重量だ。

即座に墜落を開始するので、魔力が切れる前に着陸しないと大事故に繋がってしまう。

ゾヌターク共和国では、魔力が少なくなると徐々に船の高度を下げていく安全装置があるらしいが、最新装置なので古い船に搭載されているわけがなかった。

ましてやリンガイア大陸で運用されている魔導飛行船の中には、一度廃棄されていたものを再生したものすらあるのだから。

「船の素人である俺が言うのもなんだけど、出航前に必ず船の魔晶石の魔力量をチェックすることを徹底するしかないな」

「当たり前の対策ですが、サーヘル子爵家ではできていませんでしたからね。うちの船員たちに徹底させます」

「そんな凡ミスで、貴重な船員を失うなんて笑えないな」

「そうですね」

船も決して安くはないが、ゾヌターク共和国製の中古船ならそこまで高いわけではない。

それよりも魔導飛行船は、運用費、維持費の方が高くつく。

あとでそれに気がついて、船を維持できなくなって売る羽目になる零細貴族は珍しくなかった。

そしてそれ以上に船員が、それも熟練の船員の方が高いのだ。

「どんなに小さな船でも、基本的なことができる船員を育成するのに、最低二~三年。最低十年は船員をやらないと船長にできないからなぁ……」

船員を養成する学校での教育と訓練にかかる費用……当然学費が高額すぎると人が集まらないので、学校の運営はトントンか赤字のところも珍しくなかった。

見習い船員期間の給金……これも現在、少しでもいい船員を採ろうと、恐ろしい勢いで上がっていた……などを考えると、一人の船員を一人前にするには、長い時間とお金がかかる。

俺からすれば、船員の喪失が一番痛いのだ。

「これが大型船の場合、最低二十年は船員をやらないと船長を任せられませんからね」

船長は超のつく技術職なうえに豊富な経験が必要なので、そう簡単に作り出せなかった。

俺なんて、バウマイスター辺境伯領内で運航している魔導飛行船の船長が足りないので、魔法で増やせないかなと真剣に考えたことだってあるのだから。

「だからだよ。サーヘル子爵の罪は重い」

聞けば、領内に船員を育成する学校を作らず、一人のベテラン船員に他大勢の見習い船員たちの教育まで任せていたそうだ。

「そんなの無理に決まってますよ。ベテラン船員は体がいくつあっても足りないでしょうから」

「だよねぇ」

とはいえ、そんな魔導飛行船の運用をしている貴族や商会は少なくなかった。

だから定期的に事故が起こるのだ。

「先月は、船同士が空中で衝突しましたからね。見張りをその日初めて船に乗った見習い船員に任せたんでしたっけ? そして、他の船員たちは他の作業に集中していて、衝突寸前になるまで他の船の接近に気がつかなかったと」

「そんなあり得ないことが起こるのが、今のリンガイア大陸の空なんだ」

昔は魔導飛行船が貴重で隻数も少なかったから、事故なんて滅多に起こらなかった。

船自体が高価で、さらにゼロから建造できなかったため、熟練の船員にしか任せなかったからだ。

空軍でも腕のない船員は、たとえ大貴族でも船に乗せてもらえなかったほどなのだから。

「船が増えて、より多くの人と物が運べるようになったお陰でこの国は発展を続けている。ゆえに、今さら昔には戻せない。船の運航管理や船員の教育を強化するしかない」

「そうですね。少なくともバウマイスター辺境伯家では、事故を起こさないようにしませんと」

他家のことに口を出せない以上、まずはバウマイスター辺境伯家で船の事故を起こさないようにするのが最優先だった。

「ただ、このままでは終わらないよなぁ……」

「なにかしら、王都の空軍司令部が動くということですか?」

「そうなるかな。貴族や民間の船も、空軍の管轄にあるのだから」

これは戦時に、貴族と民間船を徴用することも想定していたからだ。

空軍が軍以外で運用している船を把握していないと、徴用すらできないのだから当然だ。

なので、船の安全対策は空軍の仕事になるだろう。

もう一つ理由があって、貴族に口を出せるのは、貴族の上位にある国及び組織だからだ。

「理屈としては正しいのですが、今の空軍も余裕があるとは……」

「それでもなんとかするでしょう」

だって、下手に他の組織や貴族に任せられないのだから。

俺はそう思っていたのだが、実際にそれからすぐ、なぜか俺も空軍のお偉いさんたちに呼び出されることになってしまったのであった。

「不足する船員をどう教育していくか、諸卿らの考えを聞きたい。遠慮なく意見を述べてくれ」

「……」

急増した魔導飛行船による事故が多発したため、それに対応するための会議が王都の空軍総司令部で開かれた。

それはいいことだと思うのだが、なぜ俺まで参加しないといけないんだろう?

「(俺って、空軍閥じゃないんだけどなぁ……)」

「(バウマイスター辺境伯は、先んじて空軍の退役軍人たちを大勢諸侯軍に受け入れ、そのおかげで致命的な船員不足になっていません。手を貸してほしいんでしょうね)」

「(あの時はまだ、退役船員を雇い入れやすかったんですよ)」

「(退役した船員が乗る魔導飛行船がなくて、水上船に乗っていたなんて時期もありましたからね。その状況を救ってくれたバウマイスター辺境伯に恩義を感じて、仲間扱いなのでしょう)」

そんな仲間意識いらないから!

そっちで勝手に進めてくれって!

「(ブライヒレーダー辺境伯も仲間ですね)」

「(私の場合、ただ単に運用する船が多いから呼ばれたんですよ。実際、大貴族の参加も多い。私だって、魔導飛行船には詳しくないですし)」

「(俺も詳しくないですよ)」

俺も別に、魔導飛行船の専門家ではないのだから。

「バウマイスター辺境伯、いかがですかな?」

「(最初に俺かい!)はあ……」

なにか言わないといけないか……。

空軍に所属する将官のみならず、魔導飛行船をそれなりの数運用している大貴族たちも呼ばれていたのだが、俺に最初に発言させるのはやめてほしい。

前世で働いていた会議でも、俺はなるべく発言しないでやり過ごすことに集中する男だったのだから。

「極度に船員が不足しているせいで、ゾヌターク共和国から安い中古船を買って、ほぼ見習い船員だけで適当に運用している貴族たちが事故を起こしている。これを防ぐには、船員を免許制にしたらどうですか?」

「免許制かぁ……」

「免許は、必要な知識の習得度を確認する筆記と、必要な技術を確認する実技の二つ。これを持たない船員を船に乗せるのを禁止します」

「うーーーん、貴族たちが決まりを守るかな?」

「違反者には罰がある、という風にしませんと。免許を持たない偽船員だけでなく、無免許者を雇用した者にも罰金を科すとか。そうすれば、雇用主も雇う船員に免許があるか確認はするでしょうから」

免許があれば絶対に安全というわけではないが、少なくとも素人が船員になることはなくなる。

事故は減ると思うのだ。

「それしかないか……。しかし船員が足りない今の状況で、無免許者の船員見習いを使えないのはつらい」

「船員不足は、すぐには解決しないでしょうね。緊急処置として、船員を教育する学校で勉強しながら、船の運航を手伝う『実習生』という例外を認めるとか。勿論、ちゃんと学校に通うのが条件ですけど」

「零細貴族には、船員学校を作る余裕がない問題については?」

「船員を養成する学校を、ヘルムート王国各地に作るしかないのでは? 領内に学校を作れない貴族は、決められた年数自分のところで働くという条件で、船員になりたい者の進学を手助けすればいいと思います」

「学校を増やすのか……。しかし、王都の空軍学校を増やすのは難しいぞ」

「空軍学校は、将校の教育もしているのでしょう? 普通の船員を養成する学校だけを増やすんです」

「船長などの幹部クラスには、特別な教育が必要だぞ」

「それは王都の空軍学校を拡張して、船員学校を卒業した者の中から、優秀な人を推薦して教育すればいいのでは?」

それが正解かわからないのに、俺の適当な意見を神妙な態度で聞く空軍の軍人たち。

そのくらい、あんたたちでも思いつくだろうに。

「バウマイスター辺境伯の方策が、一番堅実で効果的だろう」

「そうだな。船員の教育は、船を降りてしまった老人たちも講師として動員すれば、なんとかいけるか?」

本当に俺の意見なんて誰でも思いつく方策だろうが、話が進んでよかった。

「ところで、バウマイスター辺境伯領内には、すでに船員学校がありますよね?」

「ええ」

あと先考えずに大量の船を買ってしまったので、とにかく動かす船員を育てないといけないと思って作ったものだ。

講師は、退役した元空軍軍人たち……は船を動かすのに忙しいので、彼らのすでに船員を引退した父兄を雇って対応していた。

軍人家系って言葉があるように、元空軍軍人の親や兄も船乗りというパターンが多かったので、この方策は実に上手くいった。

彼らはまた船に関われると、喜び勇んでバウマイスター辺境伯領に移住し、若い船員見習いたちに船のことを教えている。

なお、退役軍人の子供たちは現役の軍人であり、残念ながら引き抜けなかった。

下手に引き抜くと、現在人手不足の空軍を敵に回してしまうというのもある。

「引退した老人でも、座学や停泊した船で船員としての基礎を教えることくらいはできますからね。船員学校で保有している実習用の小型船もあるので、それで荷物を運ぶ練習航海を担当している人もいますよ」

まだ船乗りとしてやれるけど、年齢が理由で退役した老船乗りも多く雇い入れていた。

そうでもしないと、バウマイスター辺境伯領内の魔導飛行船運用も回らないからだ。

「……先を越されている……」

「まだ働いていない老船員がいるはずだ。可能な限り集めないと……」

「ところでバウマイスター辺境伯」

「なんでしょうか?(老船員は渡さないぞ!)」

あの爺さんたちがいないと、バウマイスター辺境伯領内の船員教育機能が破綻しかねないのだから。

「独自に船員学校を作れる貴族家は少ない。そこで、バウマイスター辺境伯領内の船員学校に、南部貴族及び、そこに通う意志のある他領出身の船員見習いたちを受け入れてほしい」

「そしてその中から成績優秀者を、船長や空軍将校を教育する王都の士官学校に推薦、送り込む仕事もやってほしいのだ」

「実は我々は現在、王都の士官学校の拡張、移転を進めているが、地方に船員学校を作る余裕がないのだ」

「他の大貴族たちにも、船員学校の建設や規模拡大、他領からの見習い船員受け入れを要請するつもりだ」

「わかりました」

まさかここで、『嫌です、面倒だから』と言えないのが元社畜の悲しさ。

結局、バウマイスター辺境伯領内の船員学校の規模を広げることになり、ローデリヒは大変そうだなって思っていたら……。

「お館様、急ぎ校舎を移転、拡張しなければなりません。それとバウマイスター辺境伯領は広いので分校の建設も進めたく、お館様のお力をお借りしたいのです」

「俺の仕事、減らないなぁ……」

魔法で効率よく仕事ができるようになっても、仕事が増えたら俺の大変度は変わらないどころか、さらに忙しくなっていくことを今実感していた。

「この際、今のうちにバウルブルク郊外の港も拡張しましょう。見習い船員たちの住む寮の建設もあります」

「……」

世の中が便利になっていけばいくほど、俺の仕事が増えていく。

こんな理不尽……前世でもあったか。

仕方がないので魔法で土木工事に勤しんでいると、別の家臣が俺のところに駆け寄ってきた。

「お館様、船舶ギルドバウマイスター辺境伯支部長が話があるそうですが……」

「船舶ギルド? ああっ!」

あったな!

そんな名前のギルドが!

ようは船舶ギルドとは、水上船の船員たちを束ねるギルドだ。

「なんの用事だろう? まあ明日なら……」

本当は休みたいけど、休めないなら、船舶ギルドの支部長と会う体で休みを……。

別に好き好んでおっさんに会いたくないけど、休めるのならまぁ。

「わかりました。明日ですね」

「ローデリヒ、なんの用事だろう?」

「船舶ギルドなので、水上船の件ではないでしょうか?」

「それはそうなんだけど……」

水上船も、ゾヌターク共和国から魔力駆動の中古船を輸入することが多くなった。

こちらも大型化したが、漕ぎ手が必要なくなった分、少ない船員で動かせるようになったから船員不足ってことは……ただ今は好景気で、よほどの斜陽業界でなければどこも人手不足なんだけど。

そして翌日、船舶ギルドの会長が屋敷にやってきたのだけど、案の定というか、相談内容は人手不足の件だった。

「魔族の船は船員を減らせるから、隻数が増えてもそこまで問題ないだろう?」

「それが、それ以上に輸送量が増えてしまいまして……、あとは、河川を運行する中、小型船の利用が急増してしまったのです」

水上船の利点は、小回りが利くことと、大量の荷を安く運べることだ。

大型船で港から港へと荷を運び、そこから魔導飛行船で内陸部へと運ぶ。

魔導飛行船はどうしても運航コストが高いので、急がない大量の荷物なら水上船舶で運んだ方が安かった。

そして船員の人手不足に拍車をかけたのは、内陸部の河川で人と荷を運ぶ中、小型の水上船舶だという。

「魔力推進で、一人で運航できるようになったおかげで運賃が安くなり、利用者が激増したんです」

少し川を登って隣の領地に出かけるのに、魔導飛行船を使うのは効率が悪い。

少人数の移動に使える小型魔導飛行船は運航コストが高く、実はそこまで普及していなかった。

どうしても運賃が高くなってしまうので、それなら水上船の方が近距離や少人数の移動に適している。

急ぐ人は高額の運賃を支払って小型魔導飛行船を使えばいいのだけど、それでも利益が出にくく、船員不足もあってあまり普及していなかった。

船員の給金が上がり続けているので、どうしても利益が出る大、中型船で荷物を運ぶ方を優先してしまうのだ。

「そんな状況でして、水上船の船員を教育する学校が必要になると思うんです。バウマイスター辺境伯様は、魔導飛行船の船員の育成には熱心なようですが……」

「うっ!」

それは仕事の優先順位を考えただけのことで、特に他意はない。

現に、なんとか水上船舶は運航できているのだから。

だがここで上手く手を打たないと、やはり将来深刻な水上船舶の船員不足に陥ってしまうかもしれないのか……。

「水上船舶の船員学校を、港に近い魔の森の南にある港町に作るから」

「ありがとうございます」

「これも、バウマイスター辺境伯領発展のためだから(そしてまた、俺の仕事が増える……)」

貴族はただ威張っていればいい、なんて単純に考えられるバカ貴族が羨ましい。

そういう奴は、メンタルが最強だからだ。

俺は船舶ギルドにヘソを曲げられないように、こうやって気を使ってしまうのだから。

「お館様もようやく、自らバウマイスター辺境伯領発展のために働くようになられましたね! ローデリヒは感動しています!」

「……ただ陳情を受け入れただけですけど……」

俺は、一人で勝手に感動しているローデリヒを生暖かい目で見つめつつ、水上船舶の船員を育てる学校の建設予定地の整地を急ぎ終え、校舎建設の手配をするのであった。

そしてそれから半年後。

「なあ、バウマイスター辺境伯。今度、王国軍水上船舶部隊の会合に顔を出してくれよ」

「どうして俺が? 俺は職業軍人じゃあ……」

「確かにバウマイスター辺境伯は職業軍人じゃないが、これまでの功績を考えたら職業軍人みたいなものだろうが。遠慮するなよ」

「遠慮はしていませんよ(いや、俺はただ単にそんな会合に出たくないんですけど……)」

とは、ヤクザよりも怖いエドガー侯爵とアームストロング軍務卿に言えず、俺はその会合に出席することになったのだが……。

「空軍の連中もそうだが、水上船舶の船員も足りないんだよなぁ」

「魔力推進の船が大量にゾヌターク共和国から入ってきて、水上交通と輸送に大活躍なのはいいが……」

「中、小型船舶用の魔力動力機のおかげで、船を簡単に河の上流に向かわせることができるようになって、余計需要が増したのもある」

これまでは、船を上流に向かわせる時には大勢で漕ぐか、魔法使いに頼むか、諦めるかの三択だったけど、今は魔力動力機を動かせば、船は一人で動かせる。

運賃も下がったので、利用者も激増していた。

当然船員は不足するわけだ。

「バウマイスター辺境伯、確か貴殿は、水上船の船員学校を領内に作っていたよな?」

「領内の船舶ギルドに陳情されたので」

船員不足を放置した結果、船舶ギルドバウマイスター辺境伯領支部の幹部たちに嫌味を言われるくらいならいいが、船員が逃げ出したら目も当てられないのだから。

「水上船の船員を養成する学校を各地に作って、王都の士官学校を拡張。成績優秀者を士官学校に送り込んでという手法は、水上船舶部隊にも応用できる!」

「学校をすべての貴族の領地に作るのは難しいから、その地方の大物貴族に任せるしかない」

「となると、バウマイスター辺境伯に頼むしかないよなぁ。作ったばかりの船員学校だけどよぅ。拡張してくれないか?」

「えっ?」

「当然ブライヒレーダー辺境伯領にも作るけどよ。将来、バウマイスター辺境伯領とガトル大陸との間の水上船舶の航路も開拓したいからさ」

「その海路は、 海竜(サーペント) が出現するじゃないですか」

「撃退できる武器を備え付けた船を航行させる予定だから安心してくれ。やっばり安く大量に運ぶには水上船だし、そうなると船員不足になるんだよ」

「頼むぞ、バウマイスター辺境伯」

「……はい」

これって、魔導飛行船の船員不足の時と同じパターンじゃないか!

それでも、ヤクザのような軍人貴族相手に断る度胸は俺にはなく、またもバウマイスター辺境伯領の南岸で、俺は水上船舶の船員を養成する学校の拡張を進めるのであった。

いい加減、特に役職もない俺に色々と頼むのをやめてくれないかな。