軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第26話 レベッカとの探索

ギルドから出て再び店を回ると思っていたアレンだったが、レベッカの提案によってそれは取りやめられた。そしてかなり早めの夕食を食べると、アレンとレベッカは冒険者としての装備に着替えて家から出た。

もちろんライラックのダンジョンの9階層へ行き、レベッカの自己依頼をこなすためである。

夕闇の中を2人してレベッカとアレンが歩いていく。街はだんだんと人気が少なくなってきており、その代わりではないが依頼から帰ってきたと思われる冒険者たちが楽しげに街を闊歩している姿が見られた。おそらく飲みにでもいくのであろう。

アレンが隣を歩くレベッカを見ながら声をかける。

「それにしてもなかなか良い装備だよな。手入れもしっかりされてるし」

「うん。レン兄に教えてもらった通り、装備の手入れは怠ってないよ。命に関わる事だしね」

「良い子だ」

胸を張ってそう答えたレベッカの頭をアレンがぐりぐりと撫でる。ちょっと髪がくしゃくしゃになってしまったが、レベッカは特に気にすることなく、嬉しそうにそれを受け入れていた。

レベッカの装備はモンスターの革などを使用した軽鎧に鋼鉄の片手槍、そして同じく鋼鉄のバックラーであり、アレンが行商人としてレベッカを街から送り出した時に贈った初心者装備と種類は一緒であるものの一新されていた。

その全てに傷などの使用された跡がうっすらと残っているが使用するには問題ない程度にしっかりと整備されており、それがレベッカの言葉が真実だというなによりの証拠だった。

(あー、でもちょっと槍はバランスが崩れてきてるっぽいな。本人にも自覚がないくらいかもしれんが)

ドルバンの工房で多少は鍛え上げられた武器に関する観察眼を発揮したアレンがそんなことを考える。とは言え、今回に関してはトレントを倒すのが主目的であるため、そこまで深く探索する予定も無いし問題はないだろうと判断した。

2人してダンジョンに行くのも久しぶりだな、とそんなことを懐かしく思いつつアレンは南門へと向かっていたのだが、その門が見えてきた頃にレベッカに確認しなければならないことを聞いていなかったことに気づく。

「なあ、レベッカ。トレントの建材の運搬方法は任せろって言ってたけど結局どうするんだ?」

「ふっふっふ。我に秘策あり、だよ。もうちょっとでレン兄にもわかると思うけどね」

「どういうことだ?」

問いに答えることなく、にんまりと笑ったレベッカに背中を押されるようにしてアレンは門へと進んだ。そして胸元からギルド発行の冒険者証を取り出し、警備をしていた門番へと提示する。

「通って良し」

冒険者証に書かれた情報とアレンの外見を照らし合わせた門番からの許可を受け、アレンはいつも通りそこを通り抜けた。そしてその後にレベッカが続く。

レベッカの出した鉄級の冒険者証に少しだけ門番が感心するかのような顔をし、チラッとアレンのほうへと視線をやった。それだけでおおよその門番の内心を察したアレンが頬を引きつらせる中、門番がレベッカの本人確認を終えて許可を出そうとし、そして止まる。

「ふむ、マジックバッグ持ちか。現在は所持しているか?」

「はい。中身は食料や予備の装備などですね」

「確認させてもらう」

レベッカが背負っていたリュックから折りたたまれた袋を取り出し、その袋へと門番が手を突っ込みしばらくその状態で確認を行う。

マジックバッグへと手を入れると、その内部に収納されている物が頭の中へと浮かぶため、チェックにそこまで時間がかかることはない。

特に問題の無かったレベッカは当然のように街から出ることを許可され、そして待っていたアレンのもとへと楽しげな顔をしながらやってきた。

「ねっ、わかったでしょ」

「ああ。マジックバッグを持ってたんだな。それなら確かに運搬については問題ないな」

レベッカの自信満々の態度もマジックバッグを持っているのなら当然だな、とそんな風にアレンは納得し、そしてライラックのダンジョンに向かって歩き出そうとした。

しかし目の前のレベッカの表情がみるみる不機嫌になっていくことに気づき、その動きを止める。

「どうした?」

「レン兄、驚いてない。レン兄が冒険者の憧れだって話してた、あのマジックバッグだよ。せっかくびっくりさせようと思ってたのに」

ちょっと落ち込んだ顔になっているレベッカの姿にアレンが自分の失態に気づいて慌て始める。

レベッカの言う事はその通りだった。マジックバッグについて昔アレンはレベッカにそんな風に話していた。マジックバッグを持ってこそ一流の冒険者などと熱く語った事さえあったのだ。

そんな自分を驚かせようと、レベッカがマジックバッグを持っていることをここまで隠してきたのだろうという事について、アレンはすぐに察した。本来なら、なんで持ってるんだよ! などと驚くべきだったのだ。

しかし既にネラとしてマジックバッグを手に入れてしまっていたアレンは、驚きよりも先に納得が来てしまったのだ。

「い、いや。驚いているからな。なんと言うか驚きすぎて冷静になっちまったと言うか。そういうのってあるだろ?」

「……」

「だから、えっと……なんか、すまん」

なんとか取り繕わなければと考えて言い訳を始めたアレンだったが、じっと見つめてくるレベッカの視線にそれをやめて謝った。

しばらくそんなアレンの姿を見ていたレベッカだったが、ふぅ、と息を吐き少しだけ目を閉じた。

「ううん。私こそごめん。別にレン兄は悪くないのに」

「いや、お前が楽しみにしてたのは理解できるからな。俺のことを考えてそうしてくれたんだと思うし、それは嬉しいよ。しっかしマジックバッグを買えるくらいに儲けてるんだな」

「ふっふっふ。だから一流の行商人って言ったでしょ。行商人にとっても憧れのアイテムなんだからね」

さっきまでの悪い雰囲気を吹き飛ばすように楽しげに会話を交わしながら、2人はライラックのダンジョンへと歩いていく。お互いに心の内でちょっとほっとしながら。

たどり着いたライラックのダンジョンで2人は順調すぎるほど順調に9階層への道のりを進んでいた。9階層までの最短経路についてはアレンがしっかりと記憶しているし、それに加えて……

「よーい、しょっと」

レベッカの気の抜けるような掛け声と共に鋭く突き出された片手槍が、不意打ち気味に木陰から飛び出してきたアッシュウルフの胴体を確実に貫く。そしてすぐに引き戻された片手槍をレベッカは地面へと倒れたアッシュウルフの脳天へと突き刺して止めを刺した。

その手際は鮮やかなもので、そばで見ていたアレンでも文句のつけようの無いものだった。

「腕を上げたな」

「まあね。それに体も少しは大きくなったし、ちなみに胸も大きくなりました!」

にんまりと笑ったレベッカがモンスターの革の軽鎧の胸の部分を強調するかのように胸を張る。それなりに起伏のあるその部分にアレンは視線をやった。

「へー、良かったな」

「そこはもっと、マジか! とか言って驚くとか、ちょっと頬を染めて恥ずかしそうにするとか、レン兄はそういうのないの?」

軽く流したアレンの反応が気に食わなかったのか、レベッカが自分でそんなリアクションを取りながら突っ込む。その様子に苦笑しながら、アレンは首をひねった。

「いや、だって俺、お前のおしめとか替えてたんだぞ。大きくなったなぁ、とは思ってもそんな風には思わないだろ」

「ええー」

「逆に考えてみろ。俺がお前の話を聞いて胸をじろじろ見たり、そして頬を染めたりしたら気持ち悪くねえか?」

不満の声を上げたレベッカだったが、アレンの言葉を聞いてその姿を想像する。そして、アレンの目を見つめ、真剣な表情でレベッカは首を縦に振った。

「うん、気持ち悪い」

「だろ」

うげー、と吐くような真似をするレベッカにアレンが同意し、同時にくだらない会話に油断していると見て左後方から飛び掛ってきたアッシュウルフをアレンが蹴り返す。

キャイン、と悲鳴をあげながら吹き飛び、木に叩きつけられて地面へと落ちたアッシュウルフの首筋にアレンが自身の剣を差し込む。

「レン兄も強くなった、よね?」

「まっ、多少はな。お前に教えてから数年経ってる訳だし」

レベッカの問いかけにアレンが軽く答える。

レベッカが商人になると決めて街を出ていく前、アレンはレベッカに時間が許す限り、戦う手段を教えることとレベルアップをさせるためにダンジョンへ行っていたのだ。くしくも今いるライラックのダンジョンに。

だからこそアレンもレベッカもその腕が上がっている事がはっきりとわかったとも言える。このライラックのダンジョンは離れる前に多くの時を共に過ごした、2人にとって思い出のダンジョンでもあった。

そして特になにも起こることなく2人は9階層、トレントのフロアへとたどり着いた。階段から降り立ったアレンが、少しだけ首を傾げる。

「珍しいな。何組か戦ってる奴がいる」

ステータスがアップした事によって集中すると非常によく聞こえるようになったアレンの耳は3方向から聞こえる戦闘音を拾っていた。その言葉に、少しだけレベッカが表情を曇らせる。

「うーん、やっぱ気づく人はいるってことだね」

「なにがだ?」

「うん。こっちのこと。ライバルがいてもこっちには強みがあるんだから、負けないしね。でも本当に報酬は均等で良いの? 私としてはレン兄が7くらいかなって思うんだけど」

「いやランクが高いのはレベッカだし、むしろ俺が3なのが普通だぞ。ってそれはもう話して結論が出たろ。さっさと行くぞ」

「あっ、待ってよ。レン兄!」

歩き始めたアレンを追ってレベッカがその隣へと並ぶ。

先ほど2人がしていたのは報酬の分け前についてだった。ダンジョンに入る前に話したのだが、お互いに自分が少ない方が当たり前だとして譲らず、結局折半という事で落ち着いたのだ。お互いに本当の意味で納得はしていないのだが。

追いついてきたレベッカに少し笑みを浮かべ、アレンが問いかける。

「そういや聞いてなかったけど、どのくらい狩るつもりなんだ?」

「んっ? もちろんマジックバッグ一杯になるまでだよ。それを何度も繰り返すつもり」

「はっ? そんなに持って帰っても売れねえだろ」

「そこは心配しないで私に任せて。大丈夫、レン兄を大儲けさせてあげるから」

その想定外の量の多さに驚くアレンに、レベッカは自信満々に笑みを浮かべてそう言い切った。