軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第22話 再攻略

そして始まったドラゴンとアレンたちの戦いだったが、結論から言えば誰も大きな怪我を負うことなくあっさりとアレンたちはドラゴンを倒してしまった。

ドラゴンの吐く氷のブレスは強烈で範囲も広かったが、その前動作としてわずかな溜めがあり、その隙にブレスから逃げられるだけの素早さを全員が持っていたことが大きな勝因だろう。

通常であれば魔法使いなどの後衛は素早さなどのステータスが低いことが多く、ブレスなどの広範囲の攻撃から彼らをいかに守るかがドラゴンを相手にする冒険者が頭を悩ませるところなのだ。

しかしレベルダウンの罠とレベルアップの罠を利用して、後衛とは思えないほどの高い素早さを持っている彼らにとって、ボスとして出てきたドラゴンは集団で戦うのであればまだまだ余裕のある相手だったのだ。

倒したドラゴンの解体を終え、それを前回手に入れたマジックバッグに全て納めたところで、フロアの中央から宝箱が1つ現れる。

前回とは違い、銀に縁取られたその宝箱を見たアレンは、ボスがドラゴンだったのにハズレくさいな、と考えたところで引っかかりを覚える。

「ドラゴン、ドラゴン……なんだったかな。かなり重要なことだった気がするんだが」

首を傾げて考え始めたアレンの目の前で、宝箱に近づいていったピートが罠の確認を始める。

弓使いであるピートは『ライオネル』の中で斥候の役割を兼ねており、罠の解除についてもそれなりの知識があった。そうでなければ『ライオネル』がダンジョンで活躍できるはずがないので当然とも言えるが。

もちろんアレンには及ばないものの、ピートはそこらの斥候よりはよほどよい腕をしている。罠の階層でも熱心にその仕掛けを観察していたのでその技量もめきめきと上がっていた。

そういったこともあり、今後のことも考えてなかなか機会のない宝箱の罠の確認という経験をピートに積んでもらおうと事前に話し合っていたのだ。

危なげなく確認をしていくピートを見守るアレンの耳に、ライオネルたちの会話が届く。

「しかし俺たちもついにドラゴンスレイヤーか。ダンジョンを攻略したときよりもある意味感慨深いな」

「ドラゴンを倒すのはミスリル級の証みたいなところがライラックにはありますからね」

「パーシー、俺たちのミスリル証はもうすぐ届くんだったよな?」

「そのはずだ」

その会話内容にアレンがわずかに笑みを浮かべる。

ライラックのダンジョンを攻略したことにより、『ライオネル』については金級からミスリル級への昇級が決まっていた。

ネラについてもオリハルコン級に、という話は出ているもののオリハルコン級冒険者の認定については王都にある冒険者ギルド本部で年二回ある総会でしか決められない。

そういった事情もあり、現状としてネラはミスリル級のままだった。アレンとしてもオリハルコン級に憧れはあるものの、絶対になりたいというわけでもないため不満はなかったが。

それはさておき、ライラックで活動する冒険者にとってドラゴンスレイヤーというのは特別な意味を持つ。

それはランク制限された特異なダンジョン、ドラゴンダンジョンがあるからだ。

いちおうドラゴンダンジョンは金級以上の冒険者であれば入場できるため、以前の『ライオネル』でも入ることはできた。しかし入ることができるのと、そこを探索できるというのには大きな違いがある。

低階層のドラゴンパピーやワイバーンであれば金級の冒険者でも対応ができるかもしれない。しかしそれらを倒してもドラゴンスレイヤーとは呼ばれないのだ。

そう呼ばれるのは最低でも十メートルは超える成竜を倒した者だけであり、それを成して初めてミスリル級冒険者として認識される。そんな風土がライラックにはあった。

先ほどアレンたちが相手にした体長二十メートルを超える個体は成竜の中でも上位種であり、それを倒したことでライオネルたちも改めて自分たちがミスリル級になったと認識したのだろう。

そんな推測をしていたアレンが、動きを止める。そして徐々にその顔色が青くなっていった。

「もしかして、またスタンピードが起こるんじゃねえか?」

普通の人が聞けば荒唐無稽な話だと笑い飛ばすような予想だったが、アレン自身はそれが絶対に起こらないとは考えられなかった。

なぜならスタンピードを起こしたと思われるエンシェントドラゴンのミズチと会い、強者を導くことがドラゴンダンジョンの役目だと聞いていたからだ。

スタンピードは強者にそれを知らせるための手段にすぎない、そんな印象を抱いたことをアレンは忘れていなかった。

「よし、大丈夫だと思うよ」

宝箱の罠の確認を終えたピートが皆に声をかけ、そちらに視線を向けたまま談笑していたライオネルたちがぞろぞろと近寄っていく。いずれも強者と呼ぶに相応しいステータスをした面々だ。

その光景を眺めながら腕を組んで考え込んでいたアレンだったが、一つ首を小さく縦に振って決断を下した。

魔王に対抗する装備やアイテムを集めるためにもライラックのダンジョンを周回して準備を整えるつもりだったが、それは『ライオネル』たちだけでも十分に果たせる。

ならば自分は万が一に備えようと。

皆の方へ近づいていくアレンの目の前で、宝箱を開いたピートがその中に入っていた物を取り出す。

少し湾曲した古めかしい木に蔦がはっているように見えるデザインのその弓を、ピートは嬉しそうに眺め、ライオネルたちが祝福の声をかける。アレンも少し遅ればせながらもその輪に加わった。

「おっ、自分の装備を引き当てるとはピートは運がいいな」

「まあ僕は日ごろの行いがいいからね」

「それはこの装備を引き当てた俺は、日ごろの行いが悪いってことか?」

ネラの奇抜な衣装を引っ張ってアレンが冗談をとばし、ピートは笑いながら首を横に振った。

「アレンのだって性能はいいでしょ。性能は。それに目立つし」

「地味なアレンがこんな衣装を着ているとは誰も思わないだろうからな。身を隠すのにも役立ってるぞ」

「地味っていうな、地味って。まあ確かに着心地はいいし、自動修復してくれるから使いやすくはあるんだよな」

ナジームのフォローになっているのかなっていないのかわからない言葉に苦笑しながら、アレンが肩をすくめる。

ピートが笑いながら手に持った弓を構えてその具合を確かめようすると、番えていなかったはずの矢が突如として現れる。慌ててピートがその手を緩めるとその緑色の矢は幻であったかのように姿を消した。

「もう一回確かめてみる」

そう言って今度は壁に向けてピートが弓を構えると、緑の矢は再びその姿を現した。ピートはぴくりと眉を動かしたものの今度はそれ以上の反応は見せず、いつもどおりの調子で弓を引き、そして壁に向けて緑の矢が放たれた。

ダンジョンの壁に突き刺さった瞬間、その矢は破裂するように割れ、そこから幾つもの蔦が円を描くように広がって張り付く。

その結果を眺めていたピートは、ふぅと息を吐くと皆の方に向き直った。

「おもしろい弓だね。矢の補充が不要なところが特にいい」

「問題は数か。使用回数に制限があるものや、魔力を変換しているものとかは聞いたことがあるが」

「そこはおいおいだね。今後のダンジョンの攻略時に確かめていくよ」

助言するライオネルに、楽しげにそう返すピートを眺めながら、話すなら今だなと考えたアレンが口を挟む。

「あっ、そうそう。次回から俺は同行しなくても大丈夫か?」

「んっ、どういうことだ?」

そんな当然の反応に、アレンは自分の推理を皆に伝えていく。

はじめはまさか、といった反応だったライオネルたちだったが、あまりのアレンの真剣な表情にその気持ちは徐々に消えていった。

そして……

「わかった。この難易度であれば今の俺たちなら大丈夫だ。アレンの分までしっかり準備しておくから、気兼ねなく行ってこい」

「ありがとな、ライ」

頼もしくなった親友に背中を押され、アレンは一人、ドラゴンダンジョンに向かうことになったのだった。