軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

あっ……

ローレルの事件で気が付いた。

「私はいつ王子の婚約者候補から外れる事が出来るのかしら?」

最近では、廊下を歩く王子が婚約者候補であろう女生徒を誘う姿を目撃しなくなった。

その事から婚約者候補達との対面を終わらせているものと予想できる。

それにも拘わらず、一向に婚約者候補達の選別というか辞退すら受け入れてはもらえず保留の状態のまま。

他の候補者達から見れば敵視もされない程の存在の私なので、辞退が許されてもいいのに。

それは私だけでなく、ローレルもあの事件の事もあり婚約者候補戦から既に脱落しているものとみられている。

「こんな状態ならハッキリと婚約者候補から除外してほしい」

きっと私以外にも辞退や脱落したものは存在しているはず。

一人一人落とされるのではなく集団で一気に候補から外されれば傷も付かず、候補者達による諍いにも巻き込まれなくて楽なのに。

ふと食堂で王子と見知らぬ女生徒が一緒にいるのを目撃。

女生徒は見かけたことが無いので、きっと学年が違うのだろう……

学年が違う?

「あっ……」

王子の婚約者候補は伯爵家以上の婚約者のいない令嬢。

婚約者は私達の学年から選出されるのではなく、学園に在籍している伯爵家以上の令嬢が対象。

となると……私の一学年上もだが下の学年とさらには来年入学する生徒も対象となるのでは?

「えっ……そうなると……私が三年になるまで辞退は……公表されない?」

今、気が付いた。

「嘘でしょ……」

気付いた途端、どっと疲れた。

後一年以上も私には関係のない争いに巻き込まれるのか……

私の評価や王子との関係を良好にするなんて愚かなことはせず自由気ままに過ごしてはいるが、それでも視線を感じることはある。

「目立たないようにするしかないのね……」

気分転換を兼ねて、芸術祭に参加した作品の見学をしている。

代表者が決定する前は、ローレルの事件の事もあり作品を見るのを遠慮していた。

国際芸術祭での評価を受けた後で今は安全を確保して展示されている。

安心して参加した生徒達の絵画や彫刻品を眺めることができた。

過去は、事件の犯人とされたので作品には近付かないようにしていた。

初めての鑑賞。

今までの人生で音楽や美術などの芸術に触れて来なかったので、どの作品に対しても単純に感心し感動していた。

「はぁ……どれも凄いなぁ……きゃっ」

作品に心を奪われ過ぎて隣に人がいるのに気が付かず移動していたのでぶつかってしまった。

「うぁっ……大丈夫ですか?」

相手も、同じように謝罪を口にする。

「はい……あのすみません。私の不注意で、貴方こそ大丈夫ですか?」

「はい、俺は平気です」

「「あっ」」

私がぶつかってしまったのは、ローレルの犯行を目撃したルディル。

彼の方もぶつかられた相手が私だと気が付き驚いている。

義妹の犯行を告発したので姉の私に対しても多少の気まずさがあるのだろう。

私は全く気にしていないが、外から見れば私はローレルと家族。

正しいことをしたとは言え、家族の問題を告発した人間からしたらなんとも言えない相手だろう。

「先日はローレルが大変申し訳ありませんでした」

「あっ、いや……俺の方も、あんなに人がいるのに犯罪者のように追及してしまいました」

「いえ。ルディル様が声をあげてくださらなかったらあの子は真実を公表することから逃げ、作者の方に迷惑を掛けていたはずです……」

それだけでなく、きっと私が犯人にされていた。

なので、本当の意味で助けられたのは私。

「いえ俺は……ぇっ? 俺の名前っ」

「ルディル様ですよね?」

「はい……どうして俺の名前を?」

「ルディル様は気付いていらっしゃらないかもしれませんが、同じクラスです……私達」

私は目立つ人間ではないし、二年になってからは目立たないように行動していたので私が同じクラスだと気付かれていなかったのかもしれない。

「いやっ……俺は……その……平民……なんで……覚えられていないと……」

「同じクラスなので覚えていますよ。それに……私はあまり貴族として胸を張れない立場なので……」

「そんな事はないっ、ニルヴァーナ・キャステン公爵令嬢は努力家で素晴らしい令嬢だ」

「へっ?」

そんなことを言われたのは過去を含めて初めてだ。

「あっいやっその……」

「……あぁりがとぅうございます。そんな風に言われたのは……初めてです」

誰かに認めてもらえたのは初めて……

「俺だけじゃないと思う……思い……ます」

「ルディル様は……」

「……様……は……」

「そうですか? ではルディルさんで。私の事もニルヴァーナと呼んでください」

「はい……いやっそれは……」

「キャステンだと妹と間違われてしまうので、ニルヴァーナでお願いしたいです」

「……では、ニルヴァーナ……様……」

「はいっルディル様っ」

「あっいや……俺は……では……ニル……ヴァーナ……さん……で……」

「はいっ、ルディル様……あっじゃない、ルディルさんっ」

「……あの作品は御覧になりましたか?」

「いえ、まだこれからです」

彼とぎこちなくだが、今回の作品について会話した。

友人のような会話をしたのは、彼が初めて。

とても楽しくでもっと話したいと思うが、普段人と会話しないので言葉が出ずもどかしい。

私の下手な会話に彼はいつまでも付き合ってくれる。

そのせいで貴重な昼休みを私が奪ってしまった。

「ごめんなさい、私のせいで休憩時間が」

「いえ、俺も話せて良かったです」

人に『良かった』なんて言われたのも初めて。

一緒に教室まで向かった。

それからルディルを見つけると嬉しくなり会話をしたいという気持ちから、私から探すようになっていた。

それでも踏みとどまっていたのは、私の存在が彼に迷惑を掛けてしまうから。

『娼婦の娘』

『日陰の存在』

『学園を巻き込む問題行動』

『王子の婚約者候補の一人』

これが今の私。

良い評価の無い私と一緒にいることで彼にも悪いイメージが付いてしまったら申し訳ない。

「おはよう、ニルヴァーナさん」

「ぉおはようございます。ルディルさん……それでは」

会話をしたいのを堪え、挨拶のみでいつも離れる。

彼は試験の結果等で優秀さを発揮するも、『平民』と言うことで貴族の目に留まることがなかった。

王子も自身の周囲にいる人物から側近をと考えているのか、ルディルに目を向けている様子はない。

あの人は周囲の言葉に耳を傾けるが、身近な周囲の言葉にしか耳を傾けない。

遠くにいる人物の言葉は彼には届かない。

自らの目で確かめることも、率先して動くこともしない。

周囲にいる人物が常に真実を語り、騙そうとする人間はいないと考えているのが彼。

私の罪が冤罪だとは一切疑わなかった人。

「あの人は変わることが無いんだろうな……あんな人の側近でも、ルディルさんが望むなら報われてほしい」