作品タイトル不明
独りになりたくて
昼食後。
「こんな処にガゼボなんてあったのね……」
散歩をしていると誰もいないガゼボに辿り着いたのでそこで休憩を取ることにした。
過去の私はこんな場所があるなんて知らない。
私の行動範囲と言えば、教室と図書室に職員室くらい。
庭を散歩するなんて、過去の私には考えられない事。
「あの頃は人目が怖くて、ほとんど教室から出られなかったものね……」
教室には王子がいたので、側近や婚約者を目指している生徒達は自身の評価を下げるような言動は控え私への悪意は落ち着いていた。
二年の今頃なんて、芸術祭の作品の破損の犯人にされていたので皆の鋭い視線が怖くていつも隠れるように存在していた。
「ふぅ……」
私にこんな穏やかな時間が訪れるなんて不思議。
王子の婚約者筆頭候補と言われ、何かと話題に上がり候補者である令嬢達から目の敵に。
気が付いた時には
『義妹を利用し、婚約者候補達を陥れようとしている姉』
と、噂されていた。
ことあるごとに私が犯人に……
私からしたら全て身に覚えがないが、誰も私が犯人ではないと信じてはくれなかった。
あれだけ真面目に生きて来たのに……
「虚しい人生……」
過去の私の人生はあの男に認められたくて必死で、それしかない人生だった。
全てを犠牲にして『真面目な優等生』をしていたのに、結果は『義妹を虐げ不正し断罪された愚かな女』だ。
「……虚しいんですか?」
「へっ?」
独り言を呟いたつもりが、思いもよらない返事があり驚いた。
「あの……聞こえてしまって……」
私の背後から現れたのはルディルさん。
「あっいやっその……ルディルさんはこちらで休憩を?」
独り言を聞かれた恥ずかしさから話題を逸らす。
「はい。教室にいるより落ち着くので」
彼の言葉から、ここに来るのは習慣に聞こえた。
「……そうなんですね。では、私はこれで……」
私は逃げるように彼から奪ってしまった場所を返し離れる。
「いやっ、そんな……俺が離れるんでニルヴァーナさんはこちらに。先にいたのはニルヴァーナさんなので、俺が去ります」
「いえ……私は大丈夫なんで……どうぞ……」
「……なら……少し、話をしませんか?」
「……良いんですか? 私といて……」
私といることで彼の評価を下げてしまう。
私は彼と会話をするのを楽しみに思っているが、それで彼の将来の妨げになってしまうのは嫌。
「俺はニルヴァーナさんと話したい」
私と……話したい?
彼の言葉は信じられない。
こんな私なんかと『話したい』と言ってくれる人がこの学校にいるなんて……
彼の言葉が嬉しくて涙を流してしまいそうだったが、必死に堪えた。
こんなことで泣いて面倒な人と彼に思われたくない。
「……私……で……良ければ……」
本当は『私も話したい』と言いたかったが、言えない。