作品タイトル不明
第14話 危機感はないですわね
「護衛を置いて行ったら意味がないと言ったではありませんか」
解せません。なぜここがわかったのでしょう?
私でさえ、ここがどこかわかりませんのに。
はい、ラフェシエンに見つかってしまったようです。
はぁ、女性騎士ならごまかせていましたのに、やりにくいですわ。
背後に視線を向けると、額に汗を光らせ肩で息をしているラフェシエンがいました。
「ここで何をしていたのですか?」
「……秘密です」
すぐ近くに腰が抜けて地面を這うように逃げている男性がいるので、言い訳が苦しいですが、秘密です。
「あ、この洞窟のどこかに、昨日戻ってこなかった聖女の子がいるらしいのです」
「らしい?」
「ボスと呼ばれた人が言っていただけなので、絶対とは言い切れません」
「わかりました。それから、その力は使わなくて大丈夫です。あとは私が行います」
あれ? 私はこの力のことをラフェシエンに言ったことがあったのでしょうか?
記憶にありませんわね。
で、なぜに私はラフェシエンに抱えられたまま洞窟の中を進んでいるのでしょうか?
「フィエーラ様ー!」
私は木箱から出てきた聖女の子に抱きつかれています。
何時間も木箱の中とかきつかったでしょう。
私は背中をポンポンして落ち着くのを待ちます。
私がどのようのな言葉をかけても、その恐怖は本人にしかわかりません。
だから、もう大丈夫だということしかできません。
まぁ、私も木箱で運ばれましたけどね。
「フィエーラ様。多少怪我をしていましたが聖騎士も無事でした」
「そうですか。良かったですわ」
どうやら、昨日の雨の中、町に戻る途中で襲われたそうです。それも魔物の襲撃があったすぐ後の隙を狙われたと。
聖騎士と言えど人ですからね。視界の悪い雨の中の移動と魔物の対応、疲れがピークのときに襲われたのでしょう。
しかし、全員と言われなかったので、犠牲者はいたのだと思われます。
この子はこのまま王都に帰還ですわね。これではこの先がもちません。
「聖女ナステーリア。もう大丈夫なのでゆっくり休みなさい」
私は安らぎの加護を使いながら言います。すると、力が抜け私にもたれかかるように、ナステーリアは眠ってしまいました。
……重いですわ。
「この子の護衛騎士は?」
「少々問題がありまして、別の者を代行させます」
「そう」
……まぁ、そうですわね。護衛騎士は聖女とともに馬車の中にいたのです。普通であればこの状況にはなりえません。
何が何でも護衛騎士は聖女を守り、安全な場所まで運ぶという役目を課せられているのです。
私のように勝手な行動をする聖女でなければという条件がつきますが。
こうして一旦、宿泊している町に戻ることになったのでした。
もちろん、私の転移の祝福でですね。
「それで、何があってあのようなことになっていたのか、きっちりと説明をしていただきたいですね」
そして私は、あてがわれた個室でラフェシエンに説明を求められています。
そう言われましても……
「そもそもなのですが、神聖女の私がこのように動くとなると、このような感じになるのがいつものことです」
「説明になっていません。はぁ、貴女にはいくつもの役目を与えられていることぐらい、護衛騎士になったときに聞いています」
「え?」
あの大司教が教えていたと?
いやいやいや、あのおっさん。『貴女のやっていることは誰にも話してはいけませんよ』って自分から言っていたではありませんか!
「そもそもですが、私は神聖女アンジェリカ様と聖騎士アンラディーラの孫です。神聖女に課せられた役目は幼い頃から聞いています」
「うぇ? まさか、私に加護を与えた神が女神イーリア様でないことも?」
「はい」
そこもバレていたのですか!
はぁ、それは躊躇なく私を抱えて運ぶわけです。
はい、私に力を与えたのは主神アクティース様です。
それはそれは恐ろしい神様で、男神と女神の兄妹も畏怖するほどだそうです。
神話にそう描かれているというだけですが。
まぁ実際に私は全てを消滅させる力を持っていますので、あながち嘘ではないのでしょう。
恐らく力が強すぎるということだと思います。
「それで説明をしていただけますね?」
有無を言わせない威圧感。
はぁ、今までなら散歩に行って迷子になっちゃったとごまかせましたのに……。
「今朝の食堂で、若い女性が攫われるという噂がされていたので、真偽を確かめるべく、町の衛兵隊に聞こうと詰所に向かっている途中で、麻袋をかけられて箱に詰められたので、これ幸いと本拠地まで連れて行ってもらったのです」
「フィエーラ様。危機感というものがおありではないのですか?」
危機感。さて?
「うーん? 壊れているのかもしれませんね。そういうのをもっていたら、この力は使えないと思います。それに私には主神アクティース様がついてくれていますので、ないのかもしれません」
でも、トラウマは治りません。
不思議なことです。