軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第339話 気付いた︰異変

フレーミスの様子が気になる。

夢で前世の家族と会うのを楽しみにしていてあとは寝るだけだった。

他に予定もなかった夜だったのに……。

「今日はいい」

なんて、断られた。

具合でも悪かったのかもしれないし、そこはおかしく思わなかった。

だけど……俺の精霊がフレーミスに警戒していた。俺には絶対見せない可愛らしい仕草でいつもフレーミスに気に入られようと媚びる精霊がだ。

――――何度も何度も家で言われていた。

精霊の異変は……上位存在の存在が関係している可能性があるから気をつけるようにと。なぜなら、精霊の急変は――――命に関わる。

大抵の場合は精霊の機嫌や気まぐれだったりするが、それでもその兆候があれば絶対に無視するなと言われてきた。

だからフレーミスが大病でも患ったのかと思ったが、玉蹴り遊びで泥だらけになるほどはしゃいでいたそうだし、そうでもなさそうだ。

人の姿に化ける魔導具の存在から、俺が会ったのはフレーミスじゃなかったって可能性もある。俺にはいつものフレーミスに見えたし、それもしっくりこねぇ。

「おい、話したいことがある」

「……なんだ?」

パキスを見つけたので話してみる。髪の色が目立つからすぐに分かった。

元々会って話してみるだけだったがついでに聞いてみることにした。別に特別話すようなこともないしな。

「フレーミスの様子がおかしくないか?」

「――――フリムが?……最近見てなかったが、なにかあったのか?」

「そういうわけじゃないが、なんか変でな」

こいつ、エルストラとの喧嘩の際に俺の胸を見たかもしれないのに、顔色一つ変えない。

……ということは見てなかったのか?

フレーミスの元に連れて行こうとすると俺がなにか言う前にフレーミスのもとに向かった。ついて行くが……こいつは何故か正面から行くのを避け、裏口のような場所から入ってフレーミスに気づかれないように遠目に見ていた。

手慣れた様子で物陰に隠れながらフレーミスを見ているのは……なんか、気持ち悪いな。

「どれどれ…………おかしいな」

俺から見ればやはりいつものフレーミスに見える。

ただいつものように歩いているだけ。

やっぱり俺の考えすぎかとも頭をよぎったが……こいつから見てもおかしい部分があるようだ。

「どのへんがおかしい?」

「――――……背筋がいつもより伸びてる。変な髪型が動かない。重心が安定しすぎ、歩幅が小指分狭い、足の角度が爪二枚分は違う」

「え、気持ち悪」

思わず口に出てしまった。

隠れて遠くから見ているのにそこまでわかるのは気持ち悪いを通り越してちょっと怖いかもしれない。

俺にはいつもと全く同じに見えているのに、こいつには違って見えているようだ。

そこまで人の細かな部分を見るとか……。

「はぁ?喧嘩売ってんのか?」

「ちげぇよ。素直な感想だ」

「――――……ちっ、それより何時からああ何だ?怪我でもしてんのか?」

こいつ、俺に遠慮がないな。

まぁポヨ様ポヨ様と媚びへつらってくる貴族共よりは良いが。

「わからん。だが、変装の魔導具もあるしすり替わってる可能性もあるだろう?」

「――――っ!!?おい、そりゃ本気で言ってんのか?」

目を見開いたパキス。

情報によるとパキスはフリムの味方か敵かはわからない。しかしそれでもフリムのことで本気で感情を動かしたのは今見て取れた。

「あぁ、周りの誰もそれに気が付いていない。誰か確認できる手段か方法はないか?」

「…………ある。多分な」

「どこに?」

こういう時、高位貴族なら何かしらの符号を用意していてもおかしくはない。

何も問題なければそれで良いんだが、俺はフレーミスのことが心配だし、こいつの目からしてもおかしな部分があるなら確証が欲しい。

「――――あんたがフリムの味方とは限らねぇよな?」

パキスは俺に向かって鋭い目を向けてきた。

まぁ確かに、対外的に俺とフレーミスはそこまで良い関係でもない。

パキスはフレーミスの後ろの方でフレーミスにバレないようにチョロチョロうろついてやがるし詳しくは知らないのだろう。

「俺の精霊にかけて誓ってやるよ。ほらっ」

「<キュー!!?キキ?……キキキキキ!!>」

首筋にいた精霊を取り出してパキスに投げ渡した。

なにやらトゲトゲした髪が気に入ったのか、パキスの頭の上をくるくると走り回っていく俺の精霊。

パキスは俺を警戒しているのか身動き一つとらなかった。

「……わかった。だが俺から離れんなよ。――――信用したわけじゃねえからな」

「ふん。まぁ良い」

頭の上で帽子のように丸まって寝た俺の精霊がいるからか全く怖くないが懐の短剣に手をかけて威圧して言ってくるパキス。なんて生意気な。

しめてやりたいがそれよりもフレーミスが心配になってきたし、素直にこいつについていく。

「おい、ミキキシカ!ちょっと来い!」

「な、何っスか?!」

「ちょっとこいつ借りてくからな!」

何をするのかと見守っていると、なんかフレーミスの配下の働いていた子をいきなり拐ってきた。

路地裏にまでその子を連れて行くパキス、戸惑いながらも手を引っ張られていくその子。

「何の用っスか?ポヨ様まで」

「お前に用があるんだよ」

「ま、まさか!」

「察しが良いな」

俺よりも近くにいた配下ならフレーミスの異変に気がついてもおかしくはない。

まさか、本当にあのフレーミスは別人なのか?走り回って筋肉痛とかじゃなかったのか?

「愛の告白っすか?!自分にはダーマがいるっスよ!」

「ちげぇよ」

「じゃ、じゃあまさか――――――駆け落ちの相談っスか?」

「「ちげぇよ!!」」

予想外の言葉にパキスと声が重なってしまった。

こいつらに頼って大丈夫なんだろうか?

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「フレーミス様が成り代わってるかもしれないって?」

「そうだ」

「なるほど……つまり、私の目で見てほしいと」

なんとか事情を説明し、なぜこの娘をパキスが呼んだのか、彼女が自分の目を指さし、少し開いたことで察しがついた。

ミキキシカというこの娘は、精霊の瞳を持っている。普通の人には見えないものも見える特別な目だ。

「そうだ」

「最近交易品や危険そうな魔導具を見る仕事もあってお会いしてなかったんスけど……確信はあるんスか?」

「確信はねぇ。だが背筋がいつもより伸びてるしあの変な髪型が動かない。ふらふら歩くのに重心が安定しすぎてる。いつもの歩幅と足の先の角度が違う」

「――――きっしょ……なにそれキモいっスね」

「んだとぉ!?」

「まぁまぁ……」

何故か俺が間に入ることとなった。

ここで喧嘩されても困るし……でもやっぱキモいよな。そこまで人を観察してるとか。

「んー、でもそれ難しいっスね」

「見るだけだろうが」

「私の目は普通以上にものを見れるっスけど、周りに誰も居なくしないとよくは見えないんスよ」

「そういうもんか?」

「うっス。強い魔力持ちが多いと……そうっスね。色付きの松明がたくさんありすぎて見えない……みたいな感じっス」

「なるほど、じゃあフレーミスが一人でいる場面を見ないといけないわけだな」

「出来ればそうっスね。それに『成り代わってるのに周りが気が付いていない』ってことは、近づくとそういう道具か魔法の影響を受けるかもっス。私魔力はないんでそういう魔法はかかりやすいっス!」

「胸張って言うことじゃねぇだろ」

「必要だから言ったまでっスよ!」

そうして……作戦会議をして、よく考えていると……フレーミスは急に海に行くと言い出したそうだ。それも一人で。

だから急いで小舟を借りて、海門の外に出て待った。

海門の内側では声が大きくなってきて、フレーミスが中の浜辺に現れたのがわかった。

「ミキキシカ、よーく見とけよ」

「うっス」

「これ、沈まないか?めちゃくちゃ揺れてるんだが!!?」

大きな船に乗ったことはあったが、小舟ってこんなに揺れるもんなのか!!?

すぐに気分が悪くなって、船の縁に寄りかかった。

気分が悪くなっていたらフレーミスが杖を持って、海の上を滑るように駆けて行った。ちゃんと杖を持っているし、大精霊つき。

やはり俺にはいつものフレーミスにしか見えなかった。

「……そんな」

「どうだ?何が見えた!!?」

「あれは……エルフっす」

「やっぱフリムじゃねぇってことだな!!」

「うっス……ってことは――――「じゃあ、フレーミスは今どこにいる?」

…………やべーな。確証になっちまった。

「あんまり船を傾け……うわっちゃぁ!!?」

「だ、誰かー!!?」

フレーミスが遠くを通った後、そこそこ大きな波が来て、小舟がくるっと回った。

服を着たまま流れのある水の中なんぞ泳いだことなんてなくて、かなり焦った。水の中って動きにくいのな。

パキスが……こいつも、土属性で沈みそうだってのに、すぐに泳げるようになって一人で海門に向かって泳いでる途中に沈みそうな俺に気が付いて戻ってきた。

溺れつつも少し冷静だったのは下に居た人魚が助けようとしてくれてたのに気がついたからだが……それにパキスは気が付かず、浜辺まで必死に連れて行ってくれた。

俺より背は低いのに、力はつえーのな。しかし、マジ死ぬかと思った。

ミキキシカは自分で泳げたようだが途中で人魚に助けられて後ろから浜辺に送ってもらって……全員浜辺で打ち上がることとなった。

本物のフレーミスを探す前に、俺らが死にそうになった。