軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第340話 パキスAフリム

「あの……」

「…………」

困った…………。

フリムを見つけたのは良いが――――どうすれば良い?

計画とはまるで違うし、黒髪女に引き合わせようとすりゃあこいつはきっと警戒する。

フリムは黒髪女と仲良くしてるような気もするが、俺はまだあいつを信用していない。……だから引き合わせない方が良いはず。

肉団子なら……だめだな。あいつは着飾って目立つし、フリムを保護するなら静かな方が良い。

「とりあえず入ってろ」

「え、なに??」

「静かにな」

樽にフリムを詰め込んで人気のない場所に運ぶ。

周囲を確認して、樽から出してみる。

顔はどう見ても無表情のスーリ、だけど不安げにこちらの様子をうかがっているのが伝わってくる。

「私のことがわかるんですか?」

「まぁな。なんでこんな事になってんだ?」

「私にもわからないです」

「そぉか」

どうするべきだ?

こういう時は頭に近い腹心に声をかけるべきだ。

だがエールもジュリオンも……親父も、全員がスーリをフリムと認識できなかった以上、操られているか裏切っている可能性もある。

あらゆる可能性を考えて動くべきだとクラルスも言っていた。貴族社会であれば「笑顔でもローブの中では杖を突きつけあっている」こともあるとか。

フリムに忠誠を誓っている連中でもスーリの道具だか術でどうなってるかわかんねぇ。

……頭がいてぇな。

「あの、パキスはなんで私を避けていたんですか?」

考えているとスーリの姿のフリムに声をかけられた。

「避けてねぇ」

「え?いやだって」

まぁ避けていたが。

「それより今のお前はスーリに見える。どこか頼れるところはねぇのか?」

「ゴーガッシュのところに行ってみようかなと」

「そうか……とりあえずこれ食ってろ」

食い物を渡しておき、周囲の警戒に出る。

国によって魔法や魔術は異なる。

使い方も様々で「闇夜に祈るような術」もあれば、「髪や血液を精霊のような上位存在に捧げる」ような場合もある。

だからスーリが、いや、スーリの協力者がいるとして、何らかの術をかけ続けているのなら近くでフリムを探している可能性もある。

建物の上から様子を見て回るがそういう奴はいなかった。

しかし、フリムのドラゴンがフリムの元に行くのが見れた。

あれは……多分術をかけてるとかじゃなく、俺より先にフリムに気がついたようだな。とりあえず監視者も術者もいなさそうだしフリムの元に戻る。

「どうにかするあてはあるのか?」

座っているフリムに抱かれたドラゴン。

リューチャーレだったか?フリムに甘えたまま俺に目を向けて警戒している。

ただ、騒いだりなにかしてくるとかはないようだ。

「待ってください。それよりもパキスには話してもらうことがあります」

「…………なんだ?」

フリムからすりゃ俺だって怪しい存在だろう。

「どうしてこれまで私から姿を隠していたんですか?」

「……………」

「ずっと話していませんでしたし、以前の関係は良くはなかったと思います。なのにどうして私を気にかけているのか……答えてください」

こいつ、答えたくねぇことを聞いてきやがる。

「…………後でな」

こういう時は、先送りにするか無言を貫くのが良いとクラルスに習った。

「いいえ、今答えてください」

はぐらされなかったか。

「…………」

無表情のままに見えるが、きっと不安なのだろうな。

フリムの顔が透けて見えそうだ。

「…………あれだ。クソダセェからだな」

「え?」

――――答えねぇのもダセェよな。

「俺は母親のためにお前を利用してきた。それはクソダセェし、フリムには恨まれて当然だ。殴られればいてぇし、腹が減ればつれぇ。わかっていたが俺はそう教育されて、お前にもそうした」

「まぁ、そうですね」

「なのに、お前は俺を恨んでもおかしくなかったのに、俺にも母さんに報復することもなく母さんを治した。母さんにも良くしてくれた」

貴族なら立場の弱いやつを狙ったっておかしくねぇ。

あれだけのことをしたってのに、俺にも母さんにもフリムは何もしなかった。親父みてぇに役に立つってわけじゃねぇのにだ。

「はい」

「だからだ」

これだけ言えばわかるだろ。

「え、だからダサいって何がです?」

「………………俺はフリムに恩を感じてる。なのに、何も返せねぇとかダセェってことだ」

「なるほど……パキスパキス」

怒っていたりとかはなく、こちらに来いと手招きするフリム。

「なんだ?」

「私の前で膝をついてください」

「……おう」

「目をつぶってください」

「…………」

フリムの言うことを聞く。

刺されるか、殴られるか。それとも魔法で潰されるか。

それぐらいされてもおかしくねぇことを俺はやった。

「――――パキスも色々考えてたんですね」

「――――えっ」

いくら優しいフリムでも一発ぐらいぶん殴ってきてもおかしくはないと思った。

だって俺がやったことは取り返しがつかねぇことだ。

俺の力は昔から強くて、他の勢力のおっさんぐらいなら倒せるぐらいだった。兄貴たち相手だと動きが知られてたからボコボコにされていたが学園の騎士を相手にしたって勝てるぐらいだ。

その力で、フリムを殴っていた。

兄貴が俺にしたように、機嫌が悪ければ殴って、小突いて、蹴っていた。

成長したからお腹が空いたというフリムを暴力で言う事を聞かせていた。刺そうともした。

野犬や不審なクソからフリムを守ってはいたが、それは稼ぎのためでフリムのことなんか気にもしなかった。

そのフリムが上司になって、俺に報復することもなく、母親を治してもらった。

一言礼が言いたかった。

だが、考えてみりゃフリムにとって俺の礼になんの価値がある?

俺がフリムなら死ぬまでどつき回す。……それだけのことをしたのに、一言礼を言っておしまいか?そんなんじゃ俺はいつまで経ってもクソダセェままだ。

貴族なら金や珍品を贈ることもあるらしいが、フリムに物を贈っても意味がねぇ気がする。

ダワシじじーは『芯のある人間は行動で示すものだ』と教えてくれた。

騎士は主を守るために行動する。結果主を守れるかどうかは別としても守るための行動を続けるのが大切だと……勿論守れねぇのはクソダセェがその行動にこそ意味がある。

親父だって何も言わなかったが母さんの病気を治すだけの金を用意していた。

フリムだってそうだ。あれだけの力があれば好き放題したって良いのに、自分が危なくなっても誰かを助けようとして、貴族や立場にも配慮して誰かのために行動している。俺がフリムなら敵対したやつに闇討ちぐらい指示するはずなのにだ。

結果が出るかどうかはわかんねぇが、俺はフリムに恩を感じた。だから礼を一言言うだけじゃなく、なにか行動で示したかった。

フリムの敵がいるのなら刺し殺し、フリムが危険なら守ってやりたかった。

そのためにこれまで行動してきた。

色黒やクラルスには戦闘法や礼節、勉学を学んだ。勉強でもなんでも、フリムが困れば助けてやろうとしていた。周りに危なそうなやつがいれば誰かに伝えていたし、裏からフリムの敵は邪魔してきた。それに後ろから様子を見て、何か落とさないかと、落としたのならエールにでも渡してやろうとしていた。

まぁ俺の知らない、俺が手が出せないところでこいつはすぐに危ない目にあっていたが……それでもこうして俺が役に立てそうな場に居合わせたのなら、俺がどうにかしてやる。

それが『行動で示す』ってことだと思う。

「よしよし」

「や、やめろよっ!?」

「あ、恥ずかしかったですか?」

「そんなことねぇよっ?!!」

頭に手を載せられ――――何故かそのまま撫でられた。