軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第338話 癒やしVリューちゃん

どうにかしたいのにどうにも出来なくて路地裏で寝ていたのだけど、日常に変化が起きた。

どこからか、リューちゃんが来た。

「クルルル」

「……私がわかるんですか?」

無言で頭を擦り付けてくるリューちゃん。

嬉しくて撫でまくって、目を細めているリューちゃんがこれまた嬉しくて、立てかけていた板が大きな音を立てて落ちるまで撫で回した。

この子は元々竜王の子供だし、スーリに気が付いたのかもしれない。

「発情期は大丈夫なんですか?」

「キュクー」

何だそれと首をコテンと傾けたリューちゃん。

「とにかく、また会えて嬉しいです!」

撫で回していると顔をベロベロ舐め回されてしまった。……ういやつういやつ!

いやー、癒やされた。荒んだ心が急激に癒やされた!

リューちゃんはお腹が空いてるかもしれないし、市場に連れて行ってお肉を買ってあげた。水を売って稼いだお金は伊達じゃないのだよ!

「あれ、領主様のとこの竜じゃねえか?」

「盗んだんじゃねぇか?」

「ひっ捕らえられるんじゃねぇか?」

あ、やばい。

「リューちゃん、そっと離れて……路地裏で合流」

「キュクルルル」

リューちゃんは賢いし、人の話す言葉を理解している。

小さく声を上げて、私になんて興味がないと言わんばかりに周りの人に愛想を振りまき始めた。

「おっと……なんだ出くわしただけか」

ちゃんとリューちゃんとは路地裏で合流できた。偉い子だ。

お皿はないので手で渡して食べさせて上げる。お水もたくさん飲んだ。ご飯を貰えていなかったのか……とても嬉しそうにしている。

荒んでいた心が洗われた。

私を私とわかってくれる存在が居て、安心した。

しかしリューちゃんは目立つ。なにせ希少なドラゴンである。

このままの姿だといずれ誰かにバレる可能性もある。

どうしたものかと悩んでいるとリューちゃんは何かを察したようで……板にかけていた布を咥えて――――壊した。

「せっかくのマイハウスが…………なにを――――あ、なるほど」

「ルルルル」

リューちゃんもそれなりに成長してきた。もう手乗りトカゲサイズではなく中型犬サイズである。

そんなリューちゃんが布を被って、二足歩行となった。

これならペットのリューちゃんではなく、子供の竜人っぽく見えなくもない。

アモスも二足歩行の竜だし……布は鱗で他人に傷をつけるのを防ぐために着ているようにも見える。

うむ、可愛い!

じゃなくて、ありと言えばありだ!

ちょっと服にするにはボロすぎる布と尻尾の水色でバレそうな気もするが。

「歩ける?」

「……」

少しぎこちなく、前傾姿勢でペタペタと歩くリューちゃん。うちのこ!かぁいいい!!

翼も動かしてないし、膨らみがあるけど荷物を背負っているようにも見えなくもない。

だけどまだ目立つな。尻尾の色が綺麗すぎる。

リューちゃんは私の考えていることが理解できているようで、自分で泥に入って顔や足、尻尾を泥で汚し、いつもの色ではなくなった。

「こっちにも!」

「はーい!」

「お、坊主も水を出せるのか!うちの船に乗らねぇか?」

「……」

「そりゃ残念!」

そして水だ。

リューちゃんも水を出せることもあって、喋ることは出来ないが水売りを手伝ってくれるようになった。

たまに兵士の視線から逃亡し、お金を稼ぎ……たまにジュリオンや他の人の様子を遠くから見た。

とりあえずいつも通りのようだ。

「お菓子にこちらは如何ですか?」

「お、いくらだい?」

「一つ銅貨四枚!日持ちするものだけ集めました!」

「おぉ、たけぇと思ったがそれなら納得だな。全部くれ」

「ありがとうございます!」

外国から来ている船乗りさんや商人さん。彼らはリヴァイアスの食品をあまり理解していない。

知っている食品をまとめ買いもするが、それだけでは飽きるし、航海が長引いたり難破すればこの日持ちするお菓子が命をつなぐこともある。

だからか水と一緒に勧めれば結構売れる。また仕入れねば。

リューちゃんは二足歩行でやっとなので荷物を手で掴んで運ぶとかは出来ない。これは私の仕事だ。

「土産になりそうな店を教えてくれねーか?」

「銅貨二枚!」

「良いぜ!なんならこの菓子も付けてやる!賭けに大勝ちしたんでな!」

「わー、お兄さん太っ腹ー!」

観察すればわかるが船乗りの中でも良さげな船乗りとめんどくさそうな船乗りがいる。

人を侮って、後で金は出さないと言ってくるような輩は賭場時代に見ていたし、そういう目の人は避けて、それなりに裕福そうな……余裕のありそうな人を相手にする。

「いや腹は出てないが?」

比喩表現が通じなかったか。

「裕福って意味です!」

「なるほどな」

「どんな品をお探しですか?」

「あー、国に嫁と娘が居てな。なにか良いものはないかと」

妻子持ちだったか。

土産物、それもこの人の服装の格にあった家族へのお土産……。

「そうですか……お時間はありますか?」

「あぁ、明日出港でな。水の確保が終われば今日は夜に飲むだけだ」

「少し歩くことになりますが螺鈿細工なんて如何でしょうか?」

「ラデン……あれは大商人が金貨で買うものだろう?賭けに勝ったって言ってもそこまでじゃないぞ?」

「いえいえ、競売にかけられるほどの品は確かに金貨が飛び交いますが、そこまでじゃない商品なら売られていますよ。ただ、目利きも必要ですし、良いものも悪いものも混ざっていますが」

螺鈿細工は貝殻の虹色に光っている内側を切り取って削って家具や装飾品に貼り付けたりする。

土の魔法で固められたものは後で修正がしにくい。隷属兵の中でも技術者だった人にもこの職についてもらっているが……当然イマイチなものもある。なにせ私が言い出した螺鈿細工はこの世界では新技術であり、職人の技術や工作機械が追いついていない。

それらはリヴァイアスの民が買って売ったりしている。

作品の中で一級品ではないとはいっても小物入れは小物入れとして使えるし机や台だってそのまま使用はできる。小物や工芸品、装飾品も、それなりに売れるものもあるはずだ。

きっと職人の練習になっただろう。それらが売れれば作った職人は収入になるしモチベーションが上がる。競争心も生まれるだろう。

少し前に売買の許可を出したし、水売りで通りがかって見たが結構盛況だった。

「そりゃ良いな!見に行こう!」

「はいなー!」

少し明るめに声を出す。大きな声を上げて注目を集めておけば万が一にでもこの男が悪さをしようとしてもやりにくくなるはずだ。

他国で販売されていないものであれば、それは財産になりうる。

まぁ工作機械や貝殻が危ないこともあって離れた場所で作って、完成品は別の場所に運ばれてで販売している。そのため少し歩く必要がある。

ついて行って螺鈿細工を見るとそれなりの値段ではあったが……玉石混交で、これはと思える物も多くあった。

後ろで静かにして目を輝かせているリューちゃんにも買ってあげたいが今は食べ物が優先なので、買ってあげられない。

船乗りさんも小さなブローチをじっと見ていて……何かを感じ取ったのかそれを買い取っていた。

来てすぐは「嫁と娘へのプレゼント」のはずが、熱心に大きな机を見ていて笑ってしまった。買うとしても人を呼ばないと運べないでしょうに。

「ありがとう!これで嫁と娘に怒られずにすむよ!」

「こちらこそ水を買っていただきありがとうございました!」

満足いただけたようで、お礼を言われて別れて……また水売りに戻った。

こうやって、お金を稼いで――――改めて私がするべきことを考えた。

私がしなきゃいけないことは二つ。

一つは「なんとしても生きる」こと、次に「みんなを助ける」ことだ。

私のことをみんなが忘れたとしても、私にとってみんなが大切という事実は変わらない。とはいえ下手に動いて犬死にはしたくはない。

――――今ならスーリもいないし、彼らを説得できるんじゃないか?

でも、今の自分にそれが出来るのか?それにそれを行った場合の自分の安全を考えてしまって嫌になる。

一人で誰もいない公園にでも来てくれれば、フレンドリーに食べ物の串でも渡しながら話したりして……出来ないか。

「おい、スーリがいるぞ」

その一言で逃げる。

「リューちゃん」

「キュクルル」

そもそも、みんな城の近くで活動していることもあって兵も多く居る。

フレンドリーな接触が出来ないなら誰か知り合い一人ぐらい拐って説得すれば…………いや、だめだな。なんか路地裏生活で発想が物騒になっていると自覚する。

すぐに考えていた逃走ルートを走って、樽と木箱の積まれた奥に隠れる。

船からの荷物だが容器の破損はかなり多い。そういう物は乗組員が直したり、バラして薪になったりする。

そして出港の日程などで港に下ろして忘れられたままになっている物もある。

これらは普通にゴミで捨てられたものだとは思うが……もしかしたらどこかの商人が仕方無く置いているかもしれない。今度こういう廃棄物の清掃も指示しなければ。

しかし今はそれに助かっている。大きく割れた樽と中身がない木箱の間に入ってボロ布で覆えばそうそう見つかることはないはずだ。

リューちゃんが見つかれば私は「領主様のペットに怪しい術でもかけてさらおうとしていた危険人物」となってしまう。そのため一旦別行動で合流予定だ。

鼻の効く亜人でもスーリの術のせいか私を見つけられた人はこれまでにいなかった。

いつもなら逃げられたのだけど……足音が近い。

一度通り過ぎたようにも思えたが、また探しに来たのか、それとも別の人なのか……足音が聞こえる。いずれにせよこんな場所を探す人はいないだろうし、やり過ごそう。

そう思っていたのに、ボロ布はひょいと持ち上げられ、――――目があってしまった。

「――――え、パキス?」

「よう、フリム。探したぞ」

思いもかけない人物が、そこにいた。