軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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◆九白真緒

というわけで、受験の日を迎えた。

試験会場に到着すると、私立の学校のせいか、対応が変則的で驚かされた。

それが顕著に表れたのは、レイちゃんだ。

受付に着くや否や、超VIP待遇。

なぜか、筆記試験が免除になるという話まで出始めた。

あとからレイちゃんに聞いた話では、付き添いを買って出た教師がことあるごとに学校への寄付の方法を話してきたらしい。

……それって、裏口入学と変わらないじゃん、と思ったり。

レイちゃんはそういった話を軽くかわしつつ、普通に試験を受けるという方向に持っていった。

その一連の流れは、非常に手慣れた感じを受けた。彼女にそのことを聞くと、苦笑が返ってきた。どうやら、稀によくある、というやつみたいだ。

私の方はというと、こちらのプロフィールを見た途端、態度が豹変。

「こんなところに何しに来たんだ」やら「一般人が来るような場所ではない」と、教師に言われる始末。

まあ、一属性だから色々言われると想定していたので、大して気にならない。

むしろ、私の待遇を見てレイちゃんの方がイライラし始めてしまった。

このままでは激怒しかねないと思った私は、レイちゃんの背を押してその場を退散。

試験会場へと逃げ込んだ。

まずは筆記試験。

試験の内容は普通校と変わらないので、問題なく終了。

回答欄をズレて記入したみたいなミスがない限り、良い点が取れていると思う。

そして次の日に実技試験が行われた。試験場所は体育館だった。

入場手続きをしていると、中からひと際大きな歓声が聞こえた。

何かあったのかな?

中へ入って聞き耳を立てると、どうやら凄い実技を示した受験者がいたようだ。

私たちのグループとは入れ替わりのタイミングだったらしく、件の人物を確認することは叶わなかった。

改めて体育館内を見渡す。

館内には、様々な障害物が置かれていた。

事前に調べたところ、実技の試験は障害物走と霊気放出で障害物を倒すものが行われるらしい。

そんな感じでキョロキョロとしている間に、自分の番が回ってくる。

「次、九白真緒。前に出ろ」

体育教師っぽいガッチリした体つきの試験官が私を呼ぶ。

「はい」と、短く返事をした私は、受験者が立つポイントへ小走りで向かった。

◆とある試験官

こいつが、九白真緒か。

俺は、呼ばれて列から走ってくる少女を、上から下までじっくりと観察した。

こいつと雲上院礼香という二人が、一属性にも関わらず我が校を受験した。

事前にその話を聞いた時、俺は猛反発した。

万が一にも一属性の人間が合格などすれば、他校から嘲笑の的となる。

いや、受験したという事実が知れ渡るだけでも問題だ。

一属性の人間が受かると勘違いして受験してしまうほど程度が低いと思われてしまう。

もしくは、経営難でなりふり構わなくなった、と言われかねない。

だから、受験資格なし、と願書を突っ返すべきだと主張した。

が、聞き入れられなかった。

理由は、二人が事前に成人の儀を受けて合格しているから。

つまり、すでに霊術師の資格を所持していることになる。

とても信じられない話だったが、事実確認を行ったところ間違いなかった。

確かにそれでは、受験させないわけにはいかない。

しかし、その話が本当なら問題だ。

成人の儀を突破できるだけの実力を有しているというのなら、受験で行われる実技試験など児戯に等しい。たやすく合格基準に達してしまうだろう。

筆記試験の合格ラインは、平均より少し上程度。障害とはなり得ない。

つまり、何事もなければ合格してしまう。一属性の人間が二人もだ。

一属性の人間が我が校に通うなど、開校以来初めてのこと。恥辱に等しいことだ。

他校に知られれば、永遠に話の種にされる。

なんとしても阻止するべきだ。

俺は、独断で実技試験に手を加えることを決めた。

とはいえ、障害物走は他の受験生も同じ資材を流用するため無理だ。

狙えるのは、もう一つの試験。霊気放出試験だ。

この試験は、霊気を放出し障害物を倒すというもの。

この障害物、本来使用されている物は非常にもろい構造をしている。

そのため受験者毎に障害物を交換する。

それを利用し、件の二人が受験する時だけ、別の物に入れ替えてしまえばいい。

例えば、フォーゲートのボールにも使用される非常に強固な素材を使用したものに替えてしまえば、小さな傷一つつけることすら叶わない。

俺は着服していた金を使い、専用の障害物を発注。

受験者順に資材が保管されている倉庫に忍び込み、整理している風を装って特別製に入れ替えた。

見た目は同じだが、中身は真逆。これなら絶対に合格不可能だ。

目視でしっかりとした証拠が残るので、再試験の余地を与えてしまうこともない。

俺は、ほくそ笑みながら、九白が障害物走を走破するのを流し見た。

ククッ、せいぜい頑張るがいい。いくら好タイムを出そうとも、無駄だ。

そう思いながら、記録が表示された大型表示板を見る。

記録は、暫定一位。というか、タイムが短すぎる。他を引き離して、ぶっちぎりで一位だ。

スタートの合図から走り出すまでに一切ラグを感じなかったが、いつ霊気を使ったのだろうか。

……まさか、身体強化を行わずに、あの記録を?

一属性だから、霊気を温存した?

霊気放出試験のために、障害物走では霊気を使わなかったという線も考えられる。

それならそれで、タイムが早すぎるんだが……。

「次は、障害物を倒すんですよね?」

俺が、大型表示板を凝視していると、九白から確認の質問が来た。

「そうだ、霊気を放出して倒せばいい。なんなら破壊しても構わん。ただし、その場合は破壊箇所が小さいと加点されないので気を付けるように」

俺は顔がニヤけるのを堪えながら、スラスラと答えた。

障害物には強力なウエイトを仕込んでいるので、倒すことは不可能だ。

そして、素材も強固な物にしてあるので、破壊することももちろん不可能。

一ミリも動かない仕様にしてある。

他の奴に運ばせるとバレるので、俺自身が苦労して運んだが、その甲斐はある自信作である。

ククッ、これで不合格確定だ。

「破壊する場合は、どの位の大きさから加点されるのでしょうか? この位ですか?」

と、九白が両手を使って大きさを示して尋ねてくる。

「まあ、その位あれば問題ないだろう。といっても、軽くキズが付いた程度では駄目だぞ? 誰がどう見ても『破壊』された、と判断されるようなものでないと駄目だからな」

「分かりました。それじゃあ、念のために今の倍以上の大きさを狙ってみます」

軽く礼をした九白は、そういって試験開始位置へ向かっていった。

プッ、何も知らないとはいえ、滑稽だ。

今の俺との質疑応答は他の受験生も聞いていた。

周囲から見れば、大見得を切ったように見えただろう。

順番待ちで試験を見ている生徒からすれば、今の発言は破壊予告に等しい宣言だ。

せいぜい恥をかくといい。

俺は絶対の確信からくる安心感の元、事の成り行きを見守った。

すると、準備の出来た九白が挙手し、丸椅子のような霊装を取り出した、

それを肩に担いで片膝をつく。

そして「いきます」という合図の後、霊気を放出した。

途端、ボウッと強烈な音が鳴った。

次いで、軽い衝撃波が発生し、九白を中心にして円状に強風が舞う。

俺は両手で目元をかばいながら、放出された霊気の行方を追った。

霊装から発射された霊気は強烈な光を放っており、それが障害物を素通りしていく。

まるで、照明でも当てたかのように、抵抗がない。

少し上へ傾斜した軌道を取った光線は、五枚の障害物を貫通し、壁も素通りして上空の遥か遠くへ消えた。

……なんだ、あれは。

霊術ならまだしも、ただの霊気放出であんな威力が出るのはおかしい。

それはこの光景を目撃した全員が同感らしく、一帯に無言の静寂が訪れていた。

肝心の九白は、試験を終えてスッキリ顔で辞去していった。

これで九白の受験は終了。許容できないが、実技試験は文句なく合格だろう。

あれだけの準備をしたのに、なぜこんなことに……。

俺は、心の整理がつかないまま、次の受験者の試験を始めた。

その後、流れ作業で数十件ほど試験を進め、ようやく落ち着きを取り戻す。

想定外のことが起きて取り乱したが、もう大丈夫だ。

落胆を禁じ得ないが、九白は合格してしまうだろう。

こうなったら、もう一人の受験者は絶対に不合格にしてみせる。

といっても、やることは同じだ。

まさか、雲上院も同じようなことができる、……なんてことはないよな。

いや、大丈夫だ。九白は例外だ。あんなことが二回もあってたまるか。

雲上院家といえば、金持ちで有名な家。

金の力を使って、一属性で力不足な部分を補っているに違いない。

つまりは、不正だ。だが一属性なら、それが普通の姿だ。

本来なら、不正でも行わない限り、合格などできはしないのだ。

今回の受験に際し校長や教頭は、こちらから不正をしてでも雲上院は合格させろと巻き舌でまくし立てていたが、知ったことではない。

いくら高額の寄付が見込めるからといって、一属性の人間を入学させるなど、あってはならないのだ。

俺が、黙考にふけり、決意を新たにしている間に試験は進み、気が付けば雲上院が障害物走を終え、霊気放出試験へと向かうところだった。

そして、俺が見守る中、試験開始位置についた雲上院が、丸椅子のような霊装を取り出して、片膝をつき………………。