軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

53

◆九白真緒

イベントも問題なく進行し、とうとう試合も最後になった。

ラストの出場者は、レイちゃんだ。その後にデモンストレーションがあるらしい。

観客席に上がった私は、両親とともにVIPルームで観戦。

雲上院家、九白家でそれぞれ接待中のため、レイちゃんのお父さんとは別室になる。

私は一緒に観戦しているお得意さんにご挨拶。

「いやあ、良かったよ。頑張ったね」などと健闘をたたえられ、私は「どうも」と、愛想笑いで返す。

すると母が耳打ちしてきた。

「目立たないようにするんじゃなかったのか?」

「え、無駄撃ちした挙げ句、ビビッて転んだし、下手くそアピールはバッチリだったと思うけど?」

私の返答を聞き、母が額に手を当ててため息を吐いた。

「で、その無駄撃ちは何発撃ったんだ?」

「そりゃあ、出来るだけ駄目っぷりをアピールしたいから、ここぞとばかりに百発ほど」

「あんな数秒の間にどんだけ連射してるんだ。そもそも、百発も撃ったら霊気の総量が多いと思われるぞ。無駄打ちした霊気も壁を削りまくっていたぞ?」

「あ……」

やっちゃった。ついノリノリでやったら、やり過ぎてしまった。

ま、まあギャラリーは気付いてなかったみたいだし、大丈夫だよね?

「まあ、それ以前に隠しようが無いほどヤバイ部分があったけどな」

「え、まだ他にも?」

「私は初戦から観ていたが、真緒の霊気だけ異常だったな。なんというか、濃度が濃いというか密度が高い? 妖怪に当たったときも綺麗な穴があいていたしな」

「……それはどうしようもないよ」

滅茶苦茶手加減して、限界まで威力は弱めた。

それで強いって言われても、弱めようがない。

霊装だって小さくしていたし、あれ以上は無理だよ。

霊核を大きくした弊害がこんなところで出てくるとは……。

「まあ、素人にはバレていないから、いいんじゃないか」

「だ、だよね。あ、そろそろ始まるみたい」

大丈夫という事で納得したところで、丁度レイちゃんの試合が始まった。

私のときと同様に、選手紹介の後に、鉄格子が開く。

「ん? 今までのと雰囲気が違うような……」

暗闇から現れた妖怪は、私や他の出場者が戦ったものと何かが違うように感じられた。

そもそも大きさも一回りは違うんだけど。

「ああ、あれは強い個体だな。さっきまでのと比べると数倍は違うだろ」

「まさか、嫌がらせ!?」

驚いた私は、母の方を見る。

なんで、レイちゃんだけ強い個体が割り当てられるの!?

「さあな。……始まったぞ」

慌てて視線を闘技場へ戻せば、妖怪がレイちゃん目掛けて飛び掛るところだった。

「危ない!」

レイちゃんは、ギリギリのところで妖怪の攻撃をかわした。

それでも、妖怪の爪が服に触れたせいか、破けている。

今回の試合、辛勝を演出するという話だったが、今のレイちゃんの動きは全力だった。

逆に、妖怪の方は全力を出していない。様子見というか、相手を弄ぶ気配を感じる。

あの巨体であの速さ。危険だ。

「止めに行って来る!」

私が動こうとした瞬間、母が肩を掴んで止めてきた。

なぜ? と視線で問う。

「今から行っても間に合わない。それに大丈夫だ。あれなら礼香ちゃんが勝つ」

そこからは母の言葉通りの試合展開となった。

レイちゃんは、妖怪の攻撃を寸前でかわし、カウンターで霊気を当てていく。

妖怪は攻撃を繰り出すたびに、カウンターを受けて疲弊。

最後は大きな隙をさらし、レイちゃんにとどめの一撃を受けて消滅した。

妖怪からの攻撃は全てかわしきっていたが、見ていて非常にハラハラする試合内容だった。

一度でも攻撃を受けたら駄目だと思うと、ドキドキしっぱなしだったよ。

「……良かった」

妖怪を倒したレイちゃんに余裕は無く、満身創痍の様子で荒い息を繰り返している。

ギャラリーの様子も目に入っていないようだ。

「迎えに行ってきたらどうだ」

「そうする!」

母の言葉を聞き、ハッとなった私は部屋を飛び出していた。

といっても控え室には入れないので、観客席に行く通路で出待ちするしかない。

私はソワソワしながら、レイちゃんが出てくるのを待った。

すると――。

「マオちゃん! わたくし、勝ちましたわ!」

試合を終えたレイちゃんが現れ、満面の笑顔でこちらへ駆けて来た。

「怪我は無い!? 大丈夫?」

私はレイちゃんの肩を抱き、怪我がないか見て回る。

ああ! 傷がある! は、早く治療しないと。

「ええ、かすり傷程度ですわ。そもそも本当は実力を隠す為にわざと苦戦するはずだったのに、普通に苦戦してしまいましたわ。自分の実力不足を実感してしまいますの……」

と、しょんぼりと反省してしまうレイちゃん。

「いや、あれは……」

明らかに対決した妖怪の強さがおかしかった。

「わたくしも、マオちゃんのようにしっかりと演技したかったですわ……。ただ苦戦しただけだと、やり遂げた感じがしませんの」

ふぅ、とため息を吐き、残念がるレイちゃん。

「いやいや、レイちゃんは私より凄いことをやったんだけどね」

「?」

私の言葉にレイちゃんが小首を傾げる。

彼女からすれば、自分の実力が低くて妖怪が強く感じたと誤解しているのだから、そういう反応になってしまうのも仕方がない。

後でゆっくり説明して、どれだけ凄い事をしたのか褒めちぎらねば。

「とにかく皆と合流しよう。おじさんも心配してると思うよ」

そう言った瞬間、お父さんの昭一郎さんがこちらへ駆けて来るのが見えた。

「礼香! レーイーカー!」

真っ青な顔で両手を振りながら叫んでいる。

あれは娘の勝利を祝うというより、心配で仕方が無かったという感じかな。

「もう、恥ずかしいですわ……」

そういって俯くレイちゃんの顔は真っ赤になっていたが、満更でもなさそうな表情に見えた。

そんな感じで成人の儀は無事終了。

私とレイちゃんは、特に望んだわけでもないのに霊術師の資格をゲットすることとなった。